塗って乾かすだけ!日本発「夢の太陽電池」ペロブスカイトって何?
坂田薫『コテコテ文系も楽しく学ぼう!化学教室』第12回- 世界的に話題の「塗って乾かす」ペロブスカイト太陽電池は日本発!
- 従来の太陽電池に使われていたシリコンは壊れにくいが重いなどの欠点
- ペロブスカイトは安くて性能がよく、しかも畳んで収納することも可能
先日「ポーランドのスタートアップが、とある電池の世界初の量産を始める」というニュースが流れました。来年からはイギリスや中国でも量産が始まるのだとか。その電池の名は「ペロブスカイト太陽電池」。名前は難しいですが、作るのは簡単!なんと、塗って乾かすだけ。
この「簡単に作ることができて軽くて安い」夢のような太陽電池。先日のニュースを聞くと海外発の技術かと思われたかもしれませんが、じつは日本発の技術なのです。今回は前編として「ペロブスカイト太陽電池とは何か?」をお伝えします。
太陽エネルギーのポテンシャル
2020年10月。菅首相が「2050年に温室効果ガス排出を『実質ゼロ』にする目標」を表明しました。これから自動車が電気で走る時代になり、2050年の電力需要は今の2倍ともいわれています。その中で二酸化炭素(以下、CO2)の排出は『実質ゼロ』にしなくてはいけません。
そこで今、もっとも期待されているものの1つが太陽エネルギーの利用です。というのも、地上に降り注ぐ太陽エネルギーは全世界の電力需要の4700倍以上!実際に収集できるのはそのうちの180分の1くらいですが、それでも、人類が消費するエネルギーの55倍以上もあり、「ゴビ砂漠の半分を市販の太陽電池で埋めれば、全世界のエネルギーをまかなえる」ともいわれています。しかも、太陽の寿命は残り約50億年だとか。太陽光は、事実上無限のエネルギーなのです。
よって、太陽光エネルギーを地球上でうまく回収、利用することができれば、増え続けるエネルギー需要を満たすと同時に、CO2排出『実質ゼロ』だってかなえることが可能です。しかし、太陽光エネルギーの利用は、いくつかの課題を抱えていました。
太陽光発電を妨げていたもの
太陽光エネルギーを電気エネルギーに変える装置が「太陽電池」です。そして、太陽電池には「半導体」が使われています。
半導体とは「金属のように電気を流すもの(導体)と、ゴムみたいに電気を通さないもの(絶縁体)の中間の性質をもち、光や熱、不純物の添加といった条件で電気を通すもの」で、太陽電池は半導体に太陽光が当たることで発電します。
そして、半導体の代表例は「シリコン」です。アメリカ合衆国カリフォルニア州北部のサンフランシスコ・ベイエリア地域南部が「シリコンバレー」とよばれるのは、もともと、この地域に半導体メーカーやコンピューター産業が集中していたことがはじまり、というのは有名な話ですよね。
従来の太陽電池の多くは、このシリコンが使われており「壊れにくい」「交換効率(太陽光エネルギーから取り出せる電気エネルギーの割合)が高い」というメリットがあります。それと同時に「材料や製造コストが比較的高い」「製造過程で多くのエネルギーを必要とする」「重く、厚いため曲げることができず設置場所が制限される」などのデメリットを抱えており、普及を妨げる原因となっていたのです。
みなさんも、お家の屋根や広い土地に設置された太陽光パネルを一度は見たことがありますよね。「気軽に手を出せるものではないな」というのが正直な印象でしょうか。では、安くて性能がよく、しかも畳んで収納することも可能なフィルム状の太陽電池だったらどうですか?使いたくなりますよね。そんな、「本当に?」と疑ってしまうような太陽電池が「ペロブスカイト太陽電池」なのです。
ペロブスカイト太陽電池とは
まず「ペロブスカイト」とは、灰チタン石ともよばれる鉱物の一つで、3種類の粒子でできた結晶です。結晶とは、「粒子が規則正しく配列している固体」のこと。3種類のゴルフボールが規則正しく並んでいる空間をイメージしてみましょう。ゴルフボールが粒子、空間全体が結晶です(第1回でも登場しましたね)。
そして、ペロブスカイトと同じ配列をもつ結晶は「ペロブスカイト構造」や「ペロブスカイト型(構造)」とよびます。このペロブスカイト構造の物質の中に、光に対して優れた応答性をもつ物質があり、これを半導体として使用した太陽電池を「ペロブスカイト太陽電池」といいます。この、ちょっと難しい名前は「ペロブスカイト構造の物質を半導体に利用した太陽電池」という意味だったのですね。
次回は後編として「ペロブスカイト太陽電池の特徴」と「日本の技術が抱える問題点」をお伝えします(記事はこちら)。
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