これで文春砲も大丈夫 !? 政治家専門の「議員法務」サービスが誕生

「民主主義のインフラに」ベリーベスト法律事務所

弁護士事務所で最多の全国69拠点を擁するベリーベスト法律事務所(東京都港区、代表:酒井将弁護士)が9月から「議員法務」と銘打った新しい顧問サービスを始めた。政治家専門を打ち出す法務サービスは珍しく、関心を寄せる政界関係者が増えている。

kuppa_rock /iStock

政治活動は法的リスクと常に隣り合わせだ。厳しい選挙戦を勝ち抜き無事に当選した後も気は抜けない。本人に身に覚えがなくても、選挙中に適切に支払ったと認識していた報酬が、運動員の買収罪の疑いで捜査を受けるようなことはしばしばある。政治資金収支報告書に不適切な書き方があれば、新聞や週刊誌の追及を受けることも毎度のことだ。

政治の世界で弁護士が入るパターンは逮捕者が出てからなど問題が大きくなった後になりがち。もっと早い段階で入ることでうまく対処できるのにと思っていた」。

こう語るのは、「議員法務」を担当する15人の弁護士チームを統括する三葛敦志弁護士。弁護士としては昨年12月に司法修習を終えたばかりの新人だが、実は故郷の東京・国分寺市で市議を10年、国会議員秘書を10年と政界で計20年のキャリアを持つ。

ベリーベストは交通事故や債務整理など「定番」の案件以外にも、今年5月には、いじめなど学校トラブルを専門とするチームを発足するなど個性的な法務サービスを積極的に打ち出している。そうした中、三葛氏が政界時代の経験をもとに弁護士ニーズの可能性を事務所幹部に提案し、「議員法務」サービスの開設が決まった。

顧問料は国会議員から地方議員まで収入が多様なことを踏まえ、月額3,980円(税込)から同30万円(同)のプランまで用意。いずれも顧問契約をしていない場合よりも弁護士の時給が割安になったり、訴訟時などの代理人契約をした際の割引が適用されたりする。

選挙や政治資金を巡るリスクだけではなく、異性との過去のトラブルを蒸し返されて“文春砲”などの標的になれば、その問い合わせに対し、適切な対処を助言。SNSで虚偽の情報を流されれば、事務所内のネットトラブルの専門チームと連携するなど、全国各地に200人を超える弁護士を擁する大手事務所ならではの組織力を生かして対応する。

「思想信条から入らない」

インタビューに応じる三葛弁護士(編集部撮影)

反面、こうしたトラブルは民間と共通するが、政界案件ならではの難しさも。三葛氏が「時には法律論だけでは手に負えないことも出てくる」と指摘するように、法的措置が選挙民の心象を必ずしもよくすることにつながらないことがままある。

極端な場合、離党や議員辞職など、難しい意思決定が迫られるクライアントに対しては、「政治家としてこだわらなくてはいけないもの、守らなくてはいけないところを考え、本当にどうしようもない時にはご自身と家族を守るためにどうすればいいか、政治経験がある弁護士がアドバイスすることで説得力も出てくる」と語る。

その一方で「思想心情から入るとうまくいかない。ドライにきちんとお付き合いしていくことが重要」とも強調する。政界時代は旧民主党に籍を置いたが、弁護士に立場を変えた今は「全ての政党と等距離」(三葛氏)。党派性にとらわれることなく、弁護士としてあくまでビジネスライクに対処することが肝だと考えているからだ。

議員秘書時代は政策担当秘書を歴任。「議員法務」サービスでは地方議員の条例案づくりをサポートするなど、政策立案能力の向上にも寄与したい考えだ。「少し風呂敷を広げる言い方かもしれないが、民主主義のインフラの一つとしてお手伝いになれば」と三葛氏。

国会議員から地方議員まで“マーケット”はおよそ3万人。本格的な営業は始まったばかりだが、これまでにないサービスとあって、国会議員を含む政治関係者の反応はいいという。

 

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