元国会議員のエンジニアらが開発、被災者支援のAIチャットボット

内閣府100種類の制度を使いやすく

1日に最大震度7を観測した能登地方地震の死者は9日、200人を超えた。NHKニュースによると、この日昼過ぎの時点で、石川県内404か所の避難所では2万6158人が過ごしている。

村井宗明さん

震災発生から10日が過ぎ、生活再建への不安が強まりつつある中、富山出身の元国会議員で、現在はAI技術者として活動する村井宗明さんが、富山市にも拠点を持つIT関連企業Nan Naru(ナンナル  本社:東京都文京区)と、国の被災支援制度を紹介するAIチャットポッドをリリースした。

村井さんは同志社大学卒業後、民主党職員を経て2003年衆院選で初当選。12年まで3期務めた。政界を離れてからは、少年時代からコードを書くなどIT好きだった知見を生かしヤフーやLINEなどで勤務。現在は鉄道系旅行会社にデジタル業務の責任者として所属しながらAIエンジニアとして活動していたが、1日の発生時は富山に帰省中だったという。

「神社に初詣中に大きく揺れ、建物がミシミシという音がしていました」と村井さん。故郷を含む北陸地方一帯が震災に直面し、何か貢献しなければと考えるうち、衆院で災害対策特別委員長だった時の記憶が蘇った。

この国は被災者支援制度が薄いのではない。約100種類の被災者支援制度があるのに、政治家も被災者もすべてを暗記していないので、申請しない人が多い。大事なのは、制度をこれ以上増やすことではなく、被災者それぞれにあった約100種類の制度を伝えることだ

折りしも、同郷で仕事で付き合いのあるNan Naruの坪坂有純社長と同社のエンジニアで実弟のさんも富山に帰省中。3人は翌日早速会うなり、被災者支援のAIサービスを作ることで話をまとめ、もう1人のメンバーも加わって開発に着手。突貫作業でその日のうちに完成させた。

無償で公開したチャットポッド(Nan Naruサイトより)

無償で公開したサービスは、AIが人間からの質問に応答するチャットボットで、内閣府の支援制度をもとに「住宅支援や生活支援、医療支援など、被災者が必要とするさまざまな支援を提案する」(村井さん)。実際、サイトにアクセスして「家が壊れました。被害の程度がわかりません」と書き込むと、AIが「被害の程度がわからない場合は、まずは自治体に連絡して被害状況を報告し、被害認定基準に基づいて被害の程度を確認してもらうことが重要です」などと被害認定基準を解説、自治体への問い合わせを推奨する。

昨年は米オープンAI社のChatGPTに代表される生成AIが大きく注目されたが、今回は同社の検索AIを活用して開発した。村井さんは「技術的には、生成AIの方が読みやすい文章ができるが、いまの技術レベルではハルシネーション(幻覚:事実に基づかない情報による回答)が起きてたまに間違えてしまう」と指摘。震災対応のように公共性や正確性がより求められるケースとあって、今回は検索AIを使ったという。

 

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