「共同親権」報道訴訟、SAKISIRU・西牟田氏が一審勝訴

2つの争点とも原告の訴え棄却

ニュースサイト「SAKISIRU」で掲載した共同親権の関連記事で名誉を傷つけられたとして、フランス人男性と親権を争った妻の日本人女性が、運営会社のソーシャルラボ(新田哲史代表)と執筆者のノンフィクションライター西牟田靖氏を相手取り、330万円の損害賠償や記事の削除を求めた訴訟で、東京地裁(中井彩子裁判官)は8日、原告の訴えを全て棄却し、SAKISIRU側が完全勝訴した。

イラスト:くりまん(イラストAC)

原告の女性は、SAKISIRUが昨年7月、女性と夫のフランス人男性が親権を争った離婚訴訟の判決について取り上げた記事(リンクはこちら)の中で女性について「国際指名手配していたのだ」と書いたことについて「国際刑事警察機構(インターポール)を通じて各国に手配された事実はない」などと述べ、名誉毀損を主張。

さらに女性側は、SAKISIRUが記事の中で離婚協議や子どもを連れ去ったことを報じたことについて、親権制度の問題点を読者に伝える意図があったとしても、プライバシーの侵害にあたると主張し、昨年4月7日付で提訴していた。

SAKISIRU側はこれに対し、フランスの裁判所が「ディフュージョン」と呼ばれる制度を使い、国際手配の令状(原文:MANDAT A DIFFUSION INTERNATIONALE)を手配していたことなどを示し、「名誉毀損となる余地はない」と反論。プライバシー侵害については、パリの裁判所で逮捕状が出されたことなど記事内容の公共性を踏まえ、「プライバシー権の侵害となる余地はない」と主張した。

このように訴訟では、①名誉毀損と②プライバシー侵害の2つが争点となったが、判決では①について、フランスの裁判所が「ディフュージョン」の手続きをとったことで「本件摘示事実の重要な部分が真実であることの証明があったと認めるのが相当」と指摘し、真実性を認めた。

そして②については、女性に対しフランス当局の逮捕状が発行されていたことや親権に関する裁判所の判断を記事が取り上げたことについて公共性を認めた上で、女性についても匿名にとどめるなど「必要以上に原告の個人的な事情を公表したものではない」と評価。プライバシーを主張する女性の法的利益が、記事で取り上げる公共性を「上回るものとは言えないというべきであり、記事がプライバシーを侵害し、違法であるとは認められない」と判断した。

ソーシャルラボ代表 新田哲史のコメント

「SAKISIRUの報道に正当性が認められ、公正な判決を下された裁判所に感謝を申し上げます。しかも完全勝訴とあって安堵しております。この1年近く、本当に苦しい思いをしましたが、訴訟費用のカンパをしてくださった皆様、献身的に支えてくださった代理人弁護士の先生方、証拠提出に協力してくださった関係者の皆様に心より厚く御礼申し上げます。皆様のお力なくしてこの日の勝訴はありませんでした。

奇しくも判決当日は、共同親権を導入する民法の改正案が閣議決定されるという歴史的な日に相成りました。法案の問題点は推進派の間でも懸念されるものの、日本の親権制度が大きく変わろうとする節目の日に勝訴できたことは望外の喜びです。

ただ、一審で完勝したものの、原告、特に弁護団の対応は不透明で長期戦も予想されます。親権問題の公益性を無視し、無理矢理な主張で報道の自由を制限しようとした『リーガルハラスメント』に改めて抗議するとともに判決を受け入れることを求めます。」

▪️

判決内容の詳細な分析を踏まえた続報は後日掲載します。

 

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