100億円単位で続々!ソフトバンクが世界のブロックチェーン投資に注力する背景
NFTゲーム会社買収で注目世界的人気のNFTゲーム会社「ザ・サンドボックス(The Sandbox)」がこのほど約100億円(9300ドル)の資金調達をしたことが明らかになり、その主な調達先としてソフトバンク傘下のビジョン・ファンド2が名前が上がったことが注目を集めている。ソフトバンクグループは、今年に入って、世界のブロックチェーン関連企業への投資を積極的に行っているのだ。
注目の「メタバース」ゲーム
この「ザ・サンドボックス」とは、メタバース上の仮想空間内でキャラクターを操作しながら遊ぶゲームで、世界ですでに4000万回もダウンロードされている。人気ゲーム「マインクラフト」にも似ているが、このゲームが特徴的なのはゲーム内で“商売”をすることができる点だ。
キャラクターやアイテムを自作し、NFTマーケットプレイスで販売することなどができる。LANDというゲーム内の土地も販売されており、土地を購入すれば貸し出して不動産収入を得ることも出来る。土地は売り出されるたびに大人気ですでに半分近くが完売し、多くの“地主達”が存在しているという。
この仮想世界で使われる仮想通貨「SAND」(国内では未上場)は、先日のフェイスブック社のメタ社への社名変更で“メタバース”への注力が注目を浴び、価格が2倍以上の盛り上がりをみせるなどしている。
ブロックチェーン投資が一転して加速
今年に入ってからブロックチェーン関連企業への投資に攻勢をかけているソフトバンクグループだが、実は昨年までは、グループ会長兼社長の孫正義氏はブロックチェーン分野には消極的だった。孫氏には過去に個人資産の1%をビットコインに投資し、値下がり時に慌てて売却してしまった経験があったからだ。当時も「過去の”投資の失敗”もあるため、今後投資する予定はない」などと話しており、傘下のヤフージャパンが所有していた暗号取引所TAOTAOも売却。暗号資産関連事業からは距離を置き始めているようにも思われていた。
ところが、今年になってその方針は、大きく舵取りを変えた。今春以降、ブロックチェーン関連企業に連続的に投資するようになったのだ。以前のブロックチェーン関連企業への出資は1社だけ(2018年にAtlas Procotol)だったのが、今年になってブロックチェーンへ多数投資。そのペースも日を追うごとに加速を始めているのだ。
動きは今年春から始まっている。傘下のコワーキングスペースのWeWorkは、4月に仮想通貨決済サービスのBitpayと提携。ビットコインなど仮想通貨による支払いと仮想通貨のバランスシート受け入れを発表した。このことが契機となったのか、翌月から世界中のブロックチェーン関連企業への出資がラッシュのように始まっている。
5月には、メキシコの仮想通貨取引所「Bitso」に出資。ブラジルの資産運用ファンド「Hashde」、Difiプロコトルの「O3 Swap」やデジタルマーケットプラットフォーム「Epik Prime」のエンジェル投資ラウンドに参加。
今年7月には、世界一のNFTマーケットプレイスで知られる「オープンシー(OpenSea)」に出資。さらにブラジル最大の仮想通貨交換業「メルカド・ビットコイン(Mercado Bitcoin)」への出資のほか、仮想通貨関連企業「ブロックワン(Block.One)」傘下の「Bullish」の株を7500億円(82億円)購入。英デジタル銀行「Revolut」の株を約82億円分購入。20日には、大手グローバル仮想通貨取引所「FTX」を運営する企業に他の企業とともに計880億ドルを出資している。
8月には、米ブロックチェーン開発企業「TBCASoft」には、ネイバーファイナンシャルとともに27.5億円を出資。
9月、世界140以上のサッカークラブと契約を結ぶNFTサッカーゲームの「Sorare」に、750億円を投資。さらに機関投資家向けにブロックチェーンのインフラを提供する米「Blockdaemon」への計170億円への調達を主導した。
10月には、MLBと提携して選手NFTを発行する「キャンディデジタル」に投資。仮想通貨の取引データを解析する英「エリプティック」に70億円(6000万ドル)の出資をした。
そして11月1日は、米最大手仮想通貨投資企業「DCG」の800億円相当分の株を購入。そして翌日の2日、「ザ・サンドボックス」の調達ラウンドの主導ときている。
これらの資金調達は、他のファンドと連動しての動きも多いが、ソフトバンクが主導しているものもかなり多い。いずれの投資も、数百億単位の投資額で、改めてソフトバンクGがグローバルな投資ファンドとして世界で大胆に活動していることを改めて見せつけるものである。
ブロックチェーン成長率、驚愕の年51%
ブロックチェーン分野への巨額の投資に背景には何があるのか気になるところだが、今後の急速な成長が見込まれるからだ。
ブロックチェーン技術の市場規模は、2021年から2027年の間のCAGR(年平均成長率)は、市場調査会社のグローバルインフォメーションはなんと51.8%のペースで成長すると予測している。つまり、超巨額の投資に見合う見返りも期待できるというわけだ。
日本の政府系ファンドが利回り1%を目標にして超巨額、かつ緩い投資をしているのと比べてしまうと、大きな開きを感じてしまう。日本の成長率が2%の目標さえ達せられないのは、ブロックチェーンのような世の中を一気に変えてしまうほどの大胆な技術変革を社会が積極的に受け入れないからなのだろう。
海外では想像を上回るスピード感で大胆なイノベーションを実施し、次の超成長分野を育てるため投資を呼び込んでいる。ソフトバンクGのような企業は、海外のスピード感のほうがビジネスをしやすい。日本を拠点にしたソフトバンクGのような投資ファンドですらも、投資しやすい環境を探すために、海外にでなければならないというのは、日本が大きなチャンスを日々逃している。ソフトバンクのような企業が日本にもっと巨額の投資をしたくなるような環境整備を求められる。
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