バイデン大統領の顔に泥を塗った文在寅大統領
重村智計「朝鮮半島コンフィデンシャル」#2- 重村智計氏の解説2回目。文在寅氏とバイデン氏の「因縁」を語る
- バイデン氏が副大統領時代、慰安婦問題の日韓合意に関与。文氏がメンツを潰す
- バイデン外交の対中強行に韓国は距離。米側は北朝鮮問題でも文氏に不信
(#1はこちら)

バイデンの肝煎りだった「日韓合意」
――文在寅が必死になって「なかったこと」にしようとしてきた「慰安婦日韓合意」の立役者だったバイデンが、米大統領に就任した。それが文在寅を慌てさせたということですか。
【重村】はい。韓国外務省は、バイデンの大統領当選が確実になると、韓国とバイデンの間の外交関係を再調査しています。その際、オバマ政権の時代に成立した「慰安婦日韓合意」が、実はオバマ政権の副大統領だったバイデンの仲介によって成立したことを知ったのです。

安倍・朴槿恵両政権の関係も途中までは非常に冷え込んでおり、オバマ大統領が間に立って3者会談を行うなど、日米韓安保体制の強化のために、アメリカは骨を折ってきました。
当時のバイデン副大統領も、2013年から日韓にコミットし、副大統領として日本、韓国、中国を歴訪。当時の安倍首相に「歴史問題で韓国を刺激しないように」と申し伝え、朴槿恵大統領にも「日韓首脳会談を行うように」と圧力をかけていました。
その直後の2013年12月26日に靖国神社に参拝した安倍首相に、バイデンが激怒して出したのが、例の「失望した」というコメントでした。自分が駆けずり回って関係修復を訴えているのに、水の泡じゃないかというわけです。
それでもバイデンはあきらめず、オバマ大統領を挟んでの日米韓首脳会談の実現にこぎつけ、2015年12月の「日韓慰安婦合意」への道筋をつけたのです。ただアメリカは、この合意にアメリカ・バイデンが関与していたことを知れば両国の国民感情を刺激すると見て、公表を控えていました。
そのバイデンが大統領となったのですから、文在寅としては大慌てです。知らなかったとはいえ、大統領就任以来、何とかなきものにしようと無効化・形骸化を図ってきた「日韓慰安婦合意」が、当のバイデンの肝煎りだったのですから。

アメリカが文在寅の韓国を信用できない2つの理由
――まさに顔に泥を塗るというか、バイデンとしては「余計なことをしやがって」と思っていたでしょうね。
【重村】文在寅がいまさら判決に対する態度を180度変えたところで、「時すでに遅し」です。
それ以外にも、バイデンのアメリカは文在寅の韓国の姿勢に疑問を持っています。バイデンは人権問題や言論の自由といった自由民主主義的価値を外交政策の柱に据え、中国への対決姿勢を強めています。当初は「親中派か」と言われたバイデンですが、香港やウイグル、あるいは台湾政策などにおける米議会内の中国への厳しい空気と、中国批判の世論に配慮したのか、厳しい対中姿勢を取ることを示唆しています。
しかし文在寅の韓国は、対中包囲網には参加できない。事実、日米豪印戦略対話(QUAD)にも入っていません。それは力量不足というだけではなく、韓国が経済的なつながりをはじめ、中国への配慮を行わないわけにはいかないという理由があります。

さらには文在寅の北朝鮮に対する姿勢についても、アメリカはトランプ政権時代から疑問を持っており、その疑問はバイデン政権になっても払拭されてはいません。バイデン大統領がリベラルな価値観を自らの政権の軸に据えるとすれば、北朝鮮の人権問題、言論の自由、政治犯収容所なども問題視されてしかるべきですが、文在寅がこうした北朝鮮の問題に言及したことはほぼないのです。「文在寅は北朝鮮を抑える気があるのか」「むしろシンパシーを感じているのではないか」とアメリカの当局者もとっくに気づいている。
「韓国は中朝には阿るような態度をとるが、本来、アメリカと3国で安保体制を構築しなければならない日本に対しては、外交的努力を怠っている。一体、どういうつもりなのか」――。アメリカはそう見ているのです。米韓の不信は埋めがたいものがあります。
文在寅と金正恩は「絶交」状態
――同盟国であるアメリカと、隣国日本との関係が悪化しているとなれば、文在寅の韓国は前にもまして中朝に傾倒していくのでしょうか。
【重村】ところがここが面白いところで、中国はともかく北朝鮮、つまり金正恩総書記は文在寅との対話を拒絶しています。その理由や経緯については6月9日に発売される『絶望の文在寅、孤独の金正恩――「バイデン・ショック」で自壊する朝鮮半島』(ワニブックスプラス新書)で詳しく解説していますが、金正恩は2019年の米朝会談後、文在寅が何を言っても取り合わない。「絶交」を宣言しています。
(#3に続く)
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