「トヨタ社長、ワクチン打たず」とデマ拡散、有識者に聞くフェイクニュースの「手口」

ニュースになることで愉快犯が喜ぶ可能性も
ライター
  • 「トヨタ社長豊田章男氏、ワクチン打たず」というデマが流れた
  • 山口真一氏は「ニュース記事の体裁だと信じやすい可能性」と説明
  • 読者は「拡散には責任が伴う」ことに留意、リツイートには一呼吸を

2日、ネット上で『トヨタ社長豊田章男氏、ワクチン打たず「DSが人口削減のために用意した遅効性の毒」株価は3%下落』とのフェイクニュースが流れた。Yahoo!ニュースに精巧に似せたツイッターアカウントでも拡散、一時トレンドワードに入るなどネット上は一時騒然となった。

Velishchuk /iStock

記事の内容については、ITジャーナリストの篠原修司氏が、下記記事で詳しく説明している。

「トヨタ社長豊田章男氏がワクチンは人口削減のための遅効性の毒と発言した」との個人ブログのデマが広がる

手口が年々巧妙になるフェイクニュース。ネットに流れる虚偽や誤情報には、どう対処したら良いか。ネット上の誹謗中傷やフェイクニュースの問題について詳しい国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)准教授の山口真一氏に話を聞いた。

「ニュース記事の体裁をしていると…」

山口氏は、今回のフェイクニュースをリアルタイムで見たという。

たまたまツイッターを見ていたら、トレンド入りしていました。「そんな訳がない」と思いながら見てみると、ニュースサイトの体裁をしていた点が興味深かったです。リプライ欄を見てみると、反ワクチンではない人でも信じかかっているような人がいるようでした。

ブログ記事には見出しや写真が付いており、一見するとニュースサイトのようだった。

現在、日本のネット上で流れるフェイクニュースの多くは、通常の投稿やツイートの形です。そのため、ニュース記事の体裁をしていると、信じやすい傾向があるかもしれません。今回のように著名人の名前を使うのはよくある手口です。

法的な問題が生じる可能性もある。

私は法律の専門家ではありませんが、偽サイトによって侮辱したり名誉を傷つけられたりしたと認められれば、侮辱罪や名誉毀損罪に問われる可能性が考えられます。今回、Yahoo!ニュースを模している偽アカウントも同内容をツイートしていましたが、名称やロゴを無断使用しているので著作法違反と言えそうです。この偽アカウントはフォロワー数も少なくアフィリエイトなどもしていないようなので、社会が混乱するのを見て楽しむという愉快犯の可能性が高そうです。

山口真一氏(オンライン取材)

偽サイトの動機は?読者の注意点は?

ただ、フェイクニュースを作る動機は、愉快犯に限らないという。

お金のためということも考えられます。拡散してPVを稼ぐことで、広告費を得る。話題にしてPVを稼ぐわけです。2016年の米大統領選のときにフェイクニュースを作っていたマケドニアの学生たちは「トランプ氏を支持する保守層はフェイクニュースを積極的に拡散してくれるので、彼らに向けたフェイクニュースをたくさん作った」と語っています。今回のケースでは、「反ワクチンの人はこういうニュースに飛びついて拡散してくれるだろう」という考えがあったのかもしれません。

フェイクニュース対策としては、しばしば「一呼吸を置きましょう」と言われるが、情報過多の現代では難しい面もある。

すべての情報に一呼吸置くことは難しくても、せめてリツイートボタンを押して拡散する時だけでも、一呼吸を置きたいものです。少しでも良いので、落ち着いて他の情報源を確認するなどしてほしいです。拡散には責任を伴いますし、実際に拡散に対して名誉棄損が成立した判例もあります。「よく分からなかったら拡散しない」という癖を付けて欲しいと思います。

弊サイトがこうしてニュースとして取り上げること自体、愉快犯の思うツボということも十分あり得る。

デマを打ち消すニュースであっても、ニュースに取り上げられることで愉快犯が喜んでしまう可能性は否めません。ただ、注意喚起をするのもメディアの役割なので、バランスの問題だと思います。メディアで取り上げる際には、誤情報がさらに広まることのないよう、十分注意が必要です

なお、トヨタ広報は4日、SAKISIRU編集部の取材に対し「状況は把握している」とコメントした。ネット上の“オオカミ少年”の取り扱いは、なかなか厄介なものである。

 

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