櫻井よしこ氏「本当の意味での共同親権実現を」
「日本の家族制度を考える」詳報①11日に開かれたシンポジウム「日本の家族制度を考える」に登壇したジャーナリスト櫻井よしこ氏の講演内容は次のとおり。
(※本記事はAIによる文字起こしをベースに編集部で整文しました)

お父さんたちからの悲鳴
皆様こんにちは。私の前にお話ししなさった(参院議員の)片山(さつき)先生がかなり具体的な論点についてお話しくださいましたので、重複しないように私は全体像から入ってみたいと思います。
この連れ去り問題、多くの場合、お母さんが連れ去るわけですが、私のところにこの問題を取り上げ始めてから、本当に予想を超える数のお父さん方から「どうか助けてほしい」と。「もう5年10年、子どもに会っていません」「もう15年会っていません」「本当に自分はお金を渡しているんだけれども、全く会えていません。もうどうか助けてください」という。本当に悲鳴のようなメールが入るんです。
私はそのたびにそれを上野(晃)さん(シンポジウム事務局・弁護士)たちのほうに転送してきたんですけれども、その数の多さと訴えの中身の深刻さにやはり胸を打たれるものがあるんですね。そのようなことが起きている日本社会ってやっぱりおかしいんじゃないか、というのが私のそもそもの出発点でございます。
子どもにとって、親が離婚しようがしまいが親は親なんですよね。実は私自身は母親に育てられまして父がいたんですけれども、別に離婚とかDVとか全く関係なしに距離的にすごく離れて暮らすことになりました。
私の母は明治の人でしたので、父の悪口一度も言ったことないんです。私は小さい頃からお父さんが家にいないのは当たり前だけども、立派なお父さんだと思って育ちましたけれども、寂しかったということは否定できないんですね。
だから、どんな子どもにとっても、その状況が仲が悪いとか良いとかということにかかわらず両親がかかわっていくというのはとても大事だなということを自分自身の体験からも感じています。
“偏った”法務省たたき台
今回、法務省のただき台というのが問題になっているわけですけれども、これを見たときに、いくつかの心配事が私の胸に迫ってきます。
その一つの理由は、法務省の家族制度審議会のこのような案を作った方々のメンバーを見ると立派な方々ばかりなんですけれども、少し偏っているのではないかということが第一印象です。
例えばシングルマザーの会の代表の方とかシェルターの組織の代表の方とか、そういった感じの方々がいて、「子どもは両親揃って育てましょう」という普通のという言い方をすると語弊がありますので、ちょっと誤解してほしくないんですけれども、圧倒的多数のご夫婦、圧倒的多数の家庭の在り方を代表する人が入っていても1人か2人とかすごくバランスが欠けているわけなんですね。
このようなところで私はシングルマザーを応援することも大事だ、と思いますし、シェルターに逃げていく人たちのことを保護してあげることも大事だ、と思いますけれども、その前にそのような方々は圧倒的少数である、もしくは少数であるという意識を私たちが持てるかどうかが大事なんですね。法律というのは、できるだけ多くの国民を幸せにして安定にするためにあるわけです。
例えばLGBTのことがあります。私は岸田(文雄)さん(首相)に昨日対談を申し込んで対談をさせていただいたんですけれども、その対談の中で、一番最後に岸田総理がいろいろと功績を挙げておられるのは十分に理解しているけれども、やはりLGBT法案のことについては、どうして日本があれをやらなきゃいけなかったのかということについて、「今だに納得がいかないから、私が納得いくようにお話ししてください」というふうに申し上げたら、「多様性が大事だ」とおっしゃった。
確かに多様性が大事なんです。本当に大事。私たちは多様性を過小評価することはないと思いますけれども、多様性の中に圧倒的数の日本人の女性はどう考えるか。だから、新宿にできたジェンダーレストイレに対する一般の女性たちの反応というものを見れば、やはりジェンダーレスのことをやるのも大事だけれども、そうでない世界をちゃんと見なきゃいけない。これは法律のあり方であるべきですし、政治の役割だとも思うんですね。
そういう意味においてこの家族法制審議会のメンバーの中にあまりにも偏りがあるというところから、今回の法制審の叩き台なども生まれてきたのではないかと。これはそう考えざるを得ないわけですね。
法務省案は制約あり共同親権
この法制審のたたき台の中に共同親権という言葉が入りました。これはもうとても大事なことで、共同親権、とうとう法務省が入れてくださったかと思いましたけれども、よくよく見ると、この共同親権はいろんな制約があるわけですね。
例えば大事な子どものことについて共同でお話ししなさいと。その大事なことというのはどういうことかというと、どの学校に行くかを決めるとかですね、どの宗教に宗教問題で親が子どもの宗教をこれであるべきだとかということが話し合われるのかどうか、そもそも分かりませんけれども、そういったことを書いてあって、
例えば子どもが小学校に上がるというのは、転校でも繰り返さない限り6年間に1回ですよね。中学は3年間に1回ですよね。本当に何年に1回の、このようなチャンスを母親と父親で共同で決めなさい、というようなことは、それ以外のときはどうしてるんですかという問題があるかと思います。
先ほど片山さんが監護者の問題を言いましたので、それには触れませんけれども、本当の共同親権というような日常茶飯の中で母親と父親ができる限り同じように子どもに接したり、子どもの相談相手になったり、子どものこととしていろんな心遣いをし、子どももその愛情とか配慮というものをいつもいつも受け取ることができるような環境を作らなければならないんだろう、というふうに私は思います。
その意味で、片山さんはこれからが本番なんだということをおっしゃいました。実は言論テレビでもこのことを取り上げたりして、片山さんは「これからが本番なのよ」と、「法務省も全く譲らない気ではないと思いますよ」というふうにおっしゃいましたけれども、でも皆さん、私はですね、多くの薬害関係の取材をしてきました。
その他のお役所の取材もしてきましたけれども、お役所言葉って本当に上手に書いてあるんですよね。一文字入れるかこの文字を削るかで法案の意味が全く違ってくるというようなこともありますので、私はここで民間の法制審議会の方々がですね、それらのことを注意しながら、きちっと本当の意味での共同親権が実現されるようにしてほしいな、というふうに思っております。
「特殊な国」日本
今世界でですね、日本はやっぱり特殊な国に見られているんですよね。フランスのケースもありますけれども、フランスだけではなくて他のどの国でもどんなにいがみ合った夫婦でも離婚するときは、子どもに対する愛情と責任これを共有しましょうということで、子どもに対する愛は親として変わらないわけですね。
こういうと「いやいや、そうではなくてとんでもない、親がいてDVを働くお父さんがいて、さっき片山先生もちょっと言ってましたけれども、母親をまずDVで心理的に支配してその延長線上で子どもも言えなくなるというようなケースがあることはあるんです。
でもここはですね。やっぱり警察権の導入ということをしなければいけないと思うんですね。DVが行われたときに私たちの国では警察を呼ぶということはあまりしません。けれども私はアメリカに長く住んでいましたから、多少の知識はあるんです。
けれどもアメリカなどではDVが行われたらすぐに警察沙汰になるんですね。警察が来て、その現場を見てDVが本当に行われたな。旦那が悪いなと旦那を家から追い出すんですね。日本ではDVをされたお母さんが逃げちゃうんですけれども、アメリカではDVを働いた人が悪いんだからこの人を追い出しますよ、ということで、そこで旦那を家に近づけないようにする。そこによって、お母さんと子どもの生活を守っていくというところから始まるんです。
このDVの認定がもし必要であるならば、ここは警察との連携というものをもっと前に進めていけばいいわけです。その後にいろんな脅しをする人たちがいると言いますけれども、それはもう犯罪でありますから話し合うということではなくて、きちんとした犯罪者としての取り扱いをすることによって解決できるのではないかと思います。
立法府が本末転倒している
それから、森(雅子)さん(元法相)の時から養育費のことに重点を置いてその後の歴代の方たちが重視したというお話がありました。
養育費もとても大事な問題ですけれどもこの養育費も今真面目に払っているお父さん方は、お給料まで全部把握されて公務員の方なんかは全部ガチガチに捉えていて、私はこの養育費の問題もどのようにあるのかということは行政的に対処できることだろうと思います。
一番大事なのは、男親も女親も子どもにとって大事だということを抑えておくことだと思うんですね。法務省の議論では、今この法務省案の叩き台をブラッシュアップすることでしか道はないんだ、と、狭い狭い狩りの穴を通すような感じで、この法案を通さなければ民間法制審の考え方なんかはとても自民党に受け入れられなくて廃案になってしまうから一歩も進まないという議論があるんですけれども、
私は立法(府)の皆さん方に本当にお願いしたいのは、今この法制審法務省のたたき台があるから、これでなければ通らない、その通らないような客観的状況の後ろには特定の議員の方たちがいて、
どうしても共同親権に反対するご自分の体験からもすごく苦いものがあって、どうしても反対するというような強硬な意見があるから、自民党はこの法制審の法務省の案でなければダメだという説明が私のところにも来るんですけれども、でも、そうではないんですよね。
立法府の人というのは自分たちが考える考え方、理想で、この国の家族の問題をどういう方向に持っていくのが良いのか、法務省のたたき台がこういうふうに今できてしまっているから、これに従うことが現実の政治なんだというような姿勢は、私はちょっと弱気すぎるのではないかというふうに思います。
そのようにおっしゃる方々の中には、片山さんが安倍総理のことを何回も言及なさいました。私も、安倍総理とはこのことについてかなりいろんな情報交換をして、安倍総理からもご指導をいただいたんですけれども、その中で安倍総理から呼ばれて「君はどうなんだ」と言われて共同親権ですと言った人たちもたくさんいるんですよね。
でも、その人たちが本当に共同親権のためにやっているかどうかということについては疑問を持たざるを得ないところもなきにしもあらずです。一生懸命やっているのはわかるんですけれども、これは法務省の枠の中でやろうとするとどうしても針の穴になっちゃって、ここで民間法制審がいろいろ言うのはよろしくないから、そこはちょっとセーブしてくださいよ、ということになってしまいがちなんですけれども、これは本末転倒なんだと私は思います。
子どものために譲るな
本当にどのような家庭というものを日本国が維持するのか、家庭をどのような方向に導いていくのか。結婚を何十年もしていれば別れたくなることもいっぱいあると思いますよ、でもやっぱり子どもがいるからお互いに協調しましょうとか。ここを妥協しましょうとか、これがもう大人の判断だと思うんですね。
そういうようなことで、とにかく子どものためになること、法務省のために法務省のためになるのではなくて何々先生の経験のためにではなくて、あくまでも子どものためにこの精神の考え方を見れば本当に多くの問題があります。
ですから、私は民間(法制審)の方々にそこのところをきちんと抑えて絶対に子どものために譲ることなくやってほしいというふうに思います。
ひいては、国際社会の中で日本だけでなくして子どもの連れ去りが許されるのと、この子どもの連れ去り拉致ですよね。私たちはよく横田めぐみさんが北朝鮮に拉致されていることを非常に強く怒って、ここにいらっしゃる政治家の皆さんも一緒に拉致問題解決のためにいろいろやってきましたけれども、
国内で子どもが拉致されているということを認識して、このような異常な状況を1日も早くなくしていって、父親も母親も本当に共同して子どもの養育にあたることができるように、子どもの成長を見守ってお互いに愛情を注ぐことができるようにしてあげたいというふうに私は思います。
そのように、ぜひ皆様方のご検討を祈りたいと思います。ありがとうございました。
(民間法制審を批判した柴山昌彦氏の発言はこちら)
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