「不当判決」猪瀬直樹氏、朝日新聞へのセクハラ報道の名誉毀損訴訟で一審敗訴
東京地裁「論評の域 逸脱せず」作家で参院議員の猪瀬直樹氏が、昨年の参院選直前に起きた「セクハラ騒動」を報じた朝日新聞と、有識者としてのコメントした政治学者の三浦まり氏(上智大教授)に対し、名誉を毀損されたとして、1100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が15日、東京地裁であり、中島崇裁判長は猪瀬氏の請求を棄却した。
訴状によると、参院選公示10日前の6月12日、JR吉祥寺駅前の公道で維新が街頭演説会を開催した際に起きた。全国比例で立候補予定だった猪瀬氏は、東京選挙区の候補予定者だった海老澤由紀氏らと登壇。猪瀬氏が海老澤氏を紹介する際に五輪選手の名前と間違えてしまい、猪瀬氏が海老澤氏の名前を言い直し、海老澤氏も自身の名前を示そうとタスキの上部付近を触れ、猪瀬氏もこれに続いて触れたが、一連の動作が「セクハラ騒動」となった。
朝日新聞はその5日後、「『たとえ本人がよくても…』演説中に女性触った猪瀬氏、その問題点」と題した記事で、騒動を取り上げ、三浦氏は「映像では、胸に触れていたように見えました。間違いなくセクハラではないでしょうか」「その場では女性本人も拒絶することができない、そういう瞬間だったと思います」などとコメントした。
朝日の記事について、猪瀬氏は「衆人環視の場で、演説中にセクハラを行うなど、常識で考えても全くもってあり得ない話だ」などとして名誉毀損を主張した。
これに対し、朝日と三浦氏は「『映像では、胸に触れていたように見えた』との事実を摘示し、事実に基づき『セクハラではないでしょうか』と論評したものだ」と反論。猪瀬氏らが公職の候補者であったことから記事には「公益を図る目的があった」などと強調していた。
判決では、「原告が女性の胸を触ったという行為が客観的にみて性的な意味を持っているかどうかは、評価であってそれ自体事実ではない」「記事が、原告が『性的な意味をもって』女性の胸に触れたとの事実を摘示するものではない」などと述べ、朝日側の主張を支持。記事の公益目的を認め、「論評が、意見ないし論評としての域を逸脱したものでもない」とした。
判決後、猪瀬氏は事務所を通じ「不当な判決であり、到底承服できない」とのコメントを発表。直ちに控訴する意向を示した。一方、朝日新聞広報部はSAKISIRU編集部の取材に対し、「判決を受けてのコメントを出す予定はない」とした。
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