「実子誘拐ビジネス」とは?共同親権問題、マスコミが報じない弁護士業界のリアル

民間法制審・上野弁護士「今こそ議員立法を」
ノンフィクション作家/フリーライター
  • 共同親権の法制度議論の実相とは?民間案に携わる弁護士に聞く
  • 「ビジネス」とまで言われる親子の引き離しの実態とは?
  • 法務省案と民間案を検討する自民党にいま求められていること

法務省法制審で提起している“共同親権”が「骨抜き」「名ばかり」だとして、民間法制審を立ち上げて自民党が2つの案を俎上に載せる異例の展開となっている。これはどういうことなのか。法務省案の問題点、そして親子の離別を「ビジネス化」してきた一部弁護士の実態など、共同親権問題をとりまく様々な問題について、民間案の作成に協力した上野晃弁護士にインタビューした。

AndreyPopov /iStock

法務省案は「実質的な現状維持」

――法務省案のどこが問題なんでしょうか?

「双方の合意があった場合、共同親権にも単独親権にもできる」――そう読み取れる項目があります。双方の合意でもって単独親権を選べるわけですから、その場合、片方の親が子どもを捨てたということが明確になってしまいます。今でも、交渉の場で、父母双方がエゴむき出しになり、親権が交渉のカードに使われると言うことが珍しくないわけです。法改正後に悲惨なケースを繰り返さないために、この部分はカットするべきです。

上野晃(うえの・あきら)早稲田大学卒業後、2007年弁護士登録。都内法律事務所勤務等を経て現在、弁護士法人日本橋さくら法律事務所代表。著書に、「弁護士からの提言 債権法改正を考える」(第一法規。共著)

――監護権、監護者についてはいかがでしょうか。

そもそも親権には監護権が含まれており、「監護者」の指定は必要ありません。法務省案に「監護者」が記されているのは、実質的な現状維持を志向しているからでしょう。

「実子誘拐」ビジネスの実情

――某法律事務所が行った「実子誘拐指南」が明るみに出て、当事者の間で話題になっています。

「了解を得ようとしたら絶対離婚なんてできない。(子どもを連れて)黙って家を出るんだよ」 「養育費よりも婚姻費用のほうが高いから。『急いで別居、でも離婚まではちょっと長く』っていうのが、一番いい作戦」 「(離婚原因を)わざと作る女の人は結構いるよ。喧嘩をふっかけて、彼を怒らせる。それを録音しておくとか。彼に手をあげさせるくらいなシチュエーションに持っていたとこで、警察に通報してみるとか。そうやって彼を暴力夫に仕立て上げて離婚する」--こんな風に具体的な指南をおこなっているのは、子供の連れ去り(誘拐)という違法行為を勧めているということですよね。なんでこんなことを平然と行えるんでしょうか?

私の印象では、この法律事務所はビジネスとして離婚案件をこなしていると見えます。そうしたいわゆるビジネス系弁護士は、合法か違法かについては気にしますが、倫理的な問題については全く無頓着なことが多いです。彼らとしては、「クライアントの利益のために最善のアドバイスをしているだけ」といったところでしょう。

法や裁判所が、こうしたアドバイスを法的にセーフであるとしているどころか、有益なアドバイスとなるように運用している以上、こうしたアドバイスが後を絶たないのは当然です。

――この事務所はどんな目的でこんな人でなしの行為を行っているんでしょうか?

先ほどもお話したとおり、ビジネス系弁護士は倫理に関心はありません。最優先はあくまでビジネスなんです。定型化させてポンポンと機械的に処理できる案件は優良案件。過払と同じです。

――実子誘拐を下支えする弁護士たちにはどのような人たちがいるのですか?

まず左翼、フェミニスト系の弁護士がいます。彼女たちは、流行を追わず、ある意味で採算度外視で一生懸命に戦い続けています。ただし、その戦いは、これまでの左翼の戦いの歴史が示す通り、偏ったものだったりするのですが。いずれにしても、その結果、シングルマザーに優位な判決を勝ち取り、この問題に風穴を開けてきたのです。

一方、ビジネスとしてこの問題を扱っている弁護士がたくさんいます。連れ去って財産分与も半分、養育費は算定表で計算という流れが出来ていますからサクサクこなせます。割合でいうと前者はごく少数で、後者が大半です。 今回、共同親権法制化が盛り上がりを見せてからというもの、某法律事務所をはじめとするビジネス系の弁護士たちは、サーッと手を引いたという印象です。解決するまで待つというスタンスをとるでしょう。

――まるでイワシの群れですね。であれば、今後、共同親権制度が法制化され、面会交流監視ビジネスみたいなものが立ち上がってきたら、今度はそっちの方に参入していこうという動きが見られるでしょうか?

サクサクこなせるぐらい手法が確立すれば、たくさんの弁護士が参入するに違いありません。

法務省の本音はどこに?

――法務省の思惑はどうでしょうか?

実質的に現状維持しながら、監視付きの面会交流を原則とすることは、実は法務省としても美味しいんです。FPICをはじめとした第三者機関がどんどん拡充していけば、退職後の天下り先を確保できますから。

東京・霞が関の弁護士会館(PhotoAC)

――家事司法に関わっている先生は?

共同親権に前向きなようでいて、本当の意味で前向きではない人がほとんどです。彼らは法務省と足並みを揃えて形だけの共同親権制度を推し進めようとしています。監視付き面会交流の拡充、そうした監視機関を認証する制度の創設などに非常に熱心ですが、一体離婚後の親子の関係をどのようにしたいのでしょうか。彼らの動きに大局観はありません。むしろ拡充された監視機関や認証機関のポストの方に興味があるんじゃないかと勘繰りたくなってしまいます

――ビジネス系弁護士たちと同様に私益を重視するんですね。ではDVを理由に共同親権に慎重なフェミニストの人たちは?

単独親権制度の維持が理想ですが、歩み寄りを見せるようになりました。 「安全安心な面会交流」という名の下に、狭い部屋の中で監視し た状態で別居親と子供を会わせようという考えに足並みを揃えつつあります。要するにFPICなどの監視付き面会交流ですね。

腹を括って議員立法を

――ここでも大局観が全くないですね。呆れました。では最後の質問です。自民党の法務部会の体制が変わったり、8月末に出る予定だった中間試案が延期になったり。情勢は流動的です。今後どうなっていくんでしょうか?

「そんなに反対するんだったら(共同親権)、やめてしまおうかな」と言って法務省の役人がサボタージュをチラつかせています。9月20日の法制審は延期され、その後の日取りは未定です。 先述したA議員(故・安倍元首相に呼び出された人物)らは、「ほら、法務省も困っちゃって動かないじゃないですか」とけしかけて、自民党が法制審にすり寄っていくように仕向けるのではないでしょうか。実際、自民党の保守の人たちや、我々を支援してくれている先生方も「法務省にサボタージュされては困るな」と言って動揺している様子です。

――議員立法はどうなんですか?

「議員立法は共産党以外の全党が一致するという法案でないと出せないという慣習がある」と某先生が教えて下さいました。でもそれっておかしいじゃないですか。そんなのがまかり通るならば、重要な法案であればあるほど、意見が対立し、議員立法を出せなくなりますからね。そりゃ霞ヶ関は偉そうにしますよ。通したくなければ、サボってしまえばいいわけですから。

――なるほど。霞が関の役人に牛耳られている構造なんですね。

法務省が「だったらやめる」という不誠実な対応をするんだったら、議員の先生方には腹をくくっていただきたい。「法務省が省益のために国民を蔑ろにするんだったら、我々は国民の代表として毅然と議員立法をするぞ」と。

腹をくくることができるかどうかは民主主義の生命線です。今、我々は我が国において民主主義が健全に機能しているのか試されています。自民党法務部会の先生方には、自らが国民から選ばれしローメーカーであるという原理原則に立ち返っていただきたいと心から願っています。

取材後期

譲歩に譲歩を重ねて中間試案までこぎ着けたA議員ら、皆さんの努力は認めたい。しかしだ。このまま法務省案が成立し施行されてしまったら、不幸の連鎖が続いてしまうのではないか…そう思えてならないのだ。 だからこそ、自民党の先生たちは今こそ気概を持って、ここは勝負に出て欲しいと切に願う。

 
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