東京・港区が全区立中学で海外修学旅行へ。都内初も賛否両論

【前編】日本一リッチな街の“陰影”

東京都港区が今月1日、次年度から区立中学3年生の全生徒を対象に海外での修学旅行を24年度に実施すると発表し、SNSでは「公立と私立」あるいは自治体間の格差論に火がつき、話題になった。

シンガポールの観光名所「マーライオン」(KAMINO123/PhotoAC)

港区によると、これまで中学校の行き先は京都・奈良だった。これを24年度は、特別支援学校の生徒を含む約760人が6月〜9月ごろ、3泊5日の日程で行き先はシンガポールに渡航する。都内の全ての公立中学で海外修学旅行を導入する自治体は、港区が初めて。全国的にも極めて異例の取り組みだ。

港区内はアメリカや韓国などおよそ80か国もの大使館があり、人口の約7%が外国籍と国際色の豊かな土地柄だ。2007年度から区立小中学校の児童・生徒80人が夏休みにオーストラリアで過ごす海外派遣事業を実施し、区立小が週2時間の「国際科」、区立中が週1時間の「英語科国際」を行うなど国際教育をアピールしてきた。

全員が渡航しての修学旅行は、これまでの英語や国際教育の「集大成の場」(武井雅昭区長)として位置付ける。シンガポールを行き先に選んだのは英語圏でありながら時差が少なく、治安が良好であることなどを理由に挙げた。現地の人々との交流を通じ、言語の重要性や異文化理解を深めることを意義として強調している。

総事業費は約5億1,200万円。単純計算で生徒1人あたり60万を超える計算になるが、生徒側の自己負担額は現行の京都・奈良行きと同じ1人7万円に収め、残りを区が補助するという。

「先進的」な取り組みとはいえ、富裕層が多く住み、タワーマンションが林立。住民の平均年収が全国の自治体でトップとされる街の“大盤振る舞い”には、当然のことながらSNSで賛否の声が噴出した。「生徒にはいい経験になる」「さすが港区」と評価する向きもあれば、「税金で行くんだから国内で消費して欲しい」「やりすぎ」など批判的な意見もあった。

このあたりまでは新聞やテレビでも取り上げられた話だ。この間、SNSと同様、報道直後から区内の保護者たちの間でも「海外への修学旅行はありがたいが、モヤモヤする」との声が尽きないようだ。

さらに政策形成のプロセスからある区議は「議会軽視だ」と立腹する。なぜなのか。(続きはこちら

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