小池知事“国家老”高野前区長炎上の跡…豊島区長選で再注目「西武池袋ヨドバシ出店問題」
“文化の街”の行政、問われる新たな舵取り- 統一地方選の後半戦、豊島区長選が新たに注目されるワケ
- 高野前区長が亡くなる前に炎上、西武池袋へのヨドバシカメラ出店計画
- 高野区政が批判されても突き進んだ背景、「ポスト高野」区政は?
16日に告示を迎える統一地方選後半戦では、東京の江東区や世田谷区、北区など複数の区長選が他県からも注目を集める異例の展開になっているが、新たに加わりそうなのが豊島区長選だ。同区は小池知事のお膝元であり、自民都連と激しい保守分裂選挙を戦ってきた小池氏の“国家老”だった高野之夫前区長が2月に新型コロナウイルスによる肺炎で急死。その後継が誰になるのかは小池氏や都民ファーストの会の先行きを占う意味でも興味深い。
選挙戦は、高野氏が亡くなる直前に後継指名したとされる前副区長が優勢とみられる一方、晩年の高野区政を騒がせた「西武池袋本店へのヨドバシカメラ出店計画」への影響が注視される。

低層階へのヨドバシ入居に猛反対
西武池袋本店へのヨドバシカメラ出店が騒ぎになったのは昨年12月のことだ。セブン&アイ・ホールディングス(HD)傘下のデパート「そごう・西武」を買収した米投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」が、ヨドバシカメラの運営会社をパートナーに選定。これにより、旗艦店の西武池袋本店にヨドバシが出店することになった。
ところが、これに「待った」をかけたのが当時区長だった高野氏だ。ヨドバシカメラの出店そのものに反対しているわけではないとは明言したものの、「街の顔」(高野前区長)として目立つ低層階への入居を強く問題視した。

高野前区長は、地元の商店連合会や町会連合会などと西武HDへの嘆願書をまとめた上で「ヨドバシカメラの参入は池袋のさらなる家電量販店の激化につながり、西武池袋本店が展開する海外ブランドショップの撤退をもたらし、長年育ててきた顧客や富裕層も離れ、今まで築き上げた“文化の街”の土壌が喪失してしまうのではないかと思う」と、記者会見で読み上げた。
「区長が口を出すことではない」批判噴出
しかし、法的根拠がないにも関わらず、地元自治体トップが特定の民間事業の出店計画に異論を唱える事態にネットでは批判が噴出。ツイッターでは
区長が口を出すことではないと思うが。
そもそも嘆願書ってなんだよ?法的根拠のない圧力かけるなよ。
などの意見が書き込まれたほか、経済やビジネスの専門家から苦言も。経済学者の池田信夫氏はツイッターで「そんなお涙ちょうだいの話をしてもしょうがない。これから国内に残るのは流通と外食だが、外資で生きていくしかない。たぶん決定的な曲がり角は、もう曲がってしまった」と厳しく論評した。
また、街づくりの専門家、木下斉氏もプレジデントオンラインへの寄稿で、JR湘南新宿ラインや副都心線などの直通運転で交通の利便性が上がって新宿、渋谷などに人が流れる構造に変わったことなどを指摘、「豊島区が本気でスーパーブランドを維持したいのであれば、法的な位置づけのない『区長による嘆願書』ではなく、条例、予算と向き合うべき」と提言した。
「消滅可能都市」から始まった高野氏の思い
もちろん、高野区長なりに文化の街にこだわる理由があった。振り返れば2014年、豊島区は東京23区で唯一「消滅可能性都市」に挙げられた。当時は大都市でまさかの名指しをされたことで全国的な話題になったが、“不名誉な称号”が付いた背景には、20~39歳の女性が2010年から2040年にかけて50%以上減少すると推計され、区内の人口が一見多くても、少子高齢化や若年人口の区外への転出が多い構造が浮き彫りになったことがある。
高野区政はそうした「消滅可能性都市」への危機感をバネに「子どもと女性にやさしいまちづくり」などを掲げ、「国際アート・カルチャー都市構想」を発表した。もともと豊島区のアート・カルチャーの伝統は名高い。大正期から戦前まで要町や長崎などに芸術家たちのアトリエ村が存在し、「池袋モンパルナス」と呼ばれた。戦後には漫画文化の隆盛と共に、南長崎のアパート「トキワ荘」に若き才能たちが集結。手塚治虫や藤子不二雄、石ノ森章太郎などのちの国民的な漫画家たちを輩出した。

「国際アート・カルチャー都市構想」の下、建て替えた区役所の旧庁舎跡地の再開発で「ハレザ(Hareza)池袋」が誕生。これは「ミュージカルや伝統芸能を公演するホールや、アニメ、サブカルチャーを楽しめる空間など個性の異なる8つの劇場を備える新複合商業施設」(公式サイト)で、豊島区のアートとカルチャーの街としてのシンボルになっている。
行政の文化政策で「官製」の色が強すぎると失敗することが多いが、その点、豊島区では「民」主導のにぎわいも創出。世界最大級のアニメショップ「アニメイト」が店を構え、この3月には40周年記念で一大リニューアルオープン。ヤマダデンキも、三越池袋店の跡地に旗艦店舗を構え、人気アニメ「ガンダム」シリーズのプラモデル「ガンプラ」の巨大売り場を設けるなど、秋葉原に負けないサブカルチャーの聖地としての地位を確立してきた。こうした街の特色としても、ヨドバシの出店には親和性を見込んでいそうだ。

「ポスト高野」区政ではどうなる?
「そごう・西武」の側からすると、ビッグカメラやヤマダデンキのライバルでもあるヨドバシカメラの出店により、斜陽産業の趣が強かった百貨店のイメージを覆し、新しい客層を増やしていく狙いは妥当に見えるが、区長選後の「ポスト高野」区政ではどのような展開になるのだろうか。
高野氏に後継指名された前副区長で、無所属の高際みゆき氏(自民、公明、都ファ推薦)は出馬表明した記者会見で、「高野区長はそこにヨドバシ(カメラ)が入ることを反対しているわけではなくて、今まで町の方々と一緒に作ってきた豊島区との整合性なり、連携した形での加わっていただき方などをご心配されていた」と“真意”を補足説明。「私が区長になった際には、まずは(そごう・西武側の)具体的なプランを伺いながら、また豊島区側からもどんな風に街づくりを皆さんと一緒に進めてきたのかをお話しさせていただきながら、まずは協議の場をしっかり持ちたい」と述べた。
区議会副議長で無所属の永野裕子氏はSAKISIRU編集部の取材に対し「基本的には民間のことだ」として事業者への介入に慎重な姿勢を示した。ヨドバシ出店の報道があった直後、問題視していた生前の高野前区長に対し、「池袋の街は家電で栄えた部分もある。(区がまちづくり協定を結ぶ)ビックカメラが良くてヨドバシカメラがいい、というように見られるようなことにならない方がいい」と注文したと振り返る。その上で自身が当選した場合は「まちづくりの考え方について事業者側にはご理解いただくようにしたい」と述べた。
元朝日新聞記者で無所属の神沢和敬(かずたか)氏(立憲民主、共産支援)の陣営には取材申込中で返答があり次第、追記する。
現時点でそもそもの反対派はいない状況とみられ、区長選後にはなんらかの進展が見られそうだ。
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