原英史氏が敗訴、判決で毎日新聞の「名誉毀損による不法行為」認めず

立憲議員への勝訴と判断わかれる

政府の規制改革推進会議の国家戦略特区ワーキンググループ(WG)で座長代理だった原英史氏が、毎日新聞の記事で名誉を傷つけられたとして毎日新聞社を相手取り、1100万円の賠償を求めた訴訟の判決が21日、東京地裁であった。筒井健夫裁判長は記事の一部について名誉毀損を認めたものの、毎日新聞の目的が「専ら公益を図ることにあったものと認められ、名誉毀損による不法行為は成立しない」として原氏の主張を退けた。原氏は近く控訴する方針。

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毎日新聞は2019年6月11日付の朝刊一面トップで「特区提案者から指導料」との主見出し、「WG委員支援会社 200万円、会食も」との袖見出しをつけた記事を掲載した。福岡市の美容系学校法人が、日本の美容師資格を持ちながら国内で就労できない外国人を特区内で働けるようにする規制改革を希望し、原氏と協力関係にあるコンサルタント会社に対し、コンサル料として200万円の支払いをしたと報じた。

記事では「原氏ら民間委員に提案者との利害関係を規制するルールはなく、特区制度自体の公平性・中立性が改めて問われそうだ」などと追及。また、行政法が専門の大学教授による「公平性・中立性の確保が重要な国家戦略特区の趣旨を逸脱し、原英史氏が公務員なら収賄罪に問われる可能性もある」との踏み込んだコメントまで掲載した。

これに対し、原氏はブログやニュースサイトで「会社やその顧客から、1円ももらったことがない」「おそらく毎日新聞の記者は、規制改革プロセスと、補助金申請や許認可などのプロセスの区別がついていない」「私が『収賄罪』相当のことをしたとのコメントまで記載された。あまりに悪質な記事であり、怒りを禁じえない」などと反論。毎日新聞が続報を書いても原氏が即座にネットで反論する応酬が続いた末に、原氏が同年6月下旬に提訴していた。

訴訟では、①原氏が学校法人側から「指導料」を受け取ったような事実の提示の仕方や、②原氏が同法人が費用を負担して会食したとする書き方--が主な争点になった。毎日新聞側は①については「コンサル会社が指導料を受け取ったとの事実を報道するものであることが容易に理解できる」、②については料理屋での2度の会合のうち2度目については「会食ではなく懇談と書いた」「公共の利害に関する事実に係るもので、専ら公益を図る目的により掲載された」などと主張した。

判決では①について「原告(原氏)が直接又は関節にコンサルタント料を受領したとの事実提示がされているとは認められず、原告の社会的評価を低下させるという主張に理由がない」などと指摘。②については2度目の会合について「会食の具体的な日時・場所が明確に特定されていないとはいえ、新聞の一般読者に対し、原告が特区制度の公平性・中立性に反する行為を行なっていたとの印象を与え、社会的評価を低下させる」と名誉毀損を部分的に認めたものの、「被告が真実であると信ずるについて相当の理由があると認められる」「本件の報道は、公共の利害に関する事実に係り、公益を図る目的にあったものと認められる」などの理由から不法行為が成立しないと結論づけた。

閉廷後、原氏はSAKISIRU編集部の取材に対し、「びっくりした。新聞社と戦うのは大変だ」と困惑気味に語った。近く控訴する方針。

毎日新聞の記事を巡っては、立憲民主党の篠原孝衆議院議員が同年7月、記事に基づきブログで「原委員によるいかがわしい政策作りが行われていることを問題としてきた」などと主張。原氏はこれも提訴し、東京地裁は3月、別の裁判長が篠原議員の名誉毀損を認め、165万円の支払いを命じており(控訴中)、判断が割れたかたちだ。

 

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