10万円給付、こんどは所得制限撤廃容認へ 〜 「司令塔」不在も理由?

「自治体で勝手に出すなら知らねー」ってこと?
ライター/SAKISIRU編集部

山際大志郎経済再生担当相は、14日に行われた閣議後記者会見で、いま揺れに揺れているいわゆる「10万円相当の給付問題」について、所得制限の撤廃を容認する考えを示した。苦し紛れの軌道修正に「自治体への責任転嫁」だと厳しく指摘する声も出始めている。

「10万円給付」について答弁する山際経済再生担当相(衆院ネット中継)

山際担当相はこの日の会見で「960万円の所得制限はどうするのか」という毎日新聞記者の質問に対し、「地方自治体の工夫の一つだが、政府としては独自で財源を確保して所得制限を撤廃する自治体を止めるわけではない。そういう自治体が出てきても良いのではと思う。ただ、あくまで政府としてはその基準(年収960万円未満の世帯)に従って補助金を支給したいと思っている」と述べた。

要するに「地方自治体が年収960万円以上の世帯にも支給したいのであれば勝手にどうぞ」ということ。政府として支給するのは、あくまで年収960万円未満の世帯数で計算した金額。自治体が年収960万円以上の家庭に給付金を出したいのであれば、財源はその自治体が独自に用意せよということだ。

社会起業家で内閣官房地域活性化伝道師の木下斉氏はツイッターで、「自治体負担で勝手に出すなら知らねーという意味で容認なのね」と指摘。そのうえで「まさに地方判断といえばいいけど、もうまとまらねーから責任転嫁路線ではある」と政府の方針を批判している。

マクロ経済研究センター・所長の石川智久氏はヤフーニュースに次のようにコメントした(太字は筆者)。

「だんだん政策の趣旨が分からなくなってきたように思えます。そもそもとしては子育て世帯をサポートし、給付金が貯蓄に回って景気が良くならないという問題を解決したいのであれば、難しいことは考えず、学費や給食費の無償化・一部サポートや、奨学金の割増などの方が納税者の理解を得られたかもしれません。なにはともあれ、もう一度方向性を整理した方が良いかと思います」

ツイッターの匿名ユーザーからは、「また、地方に丸投げした。こんなこと大臣が言ったら支給しなかった自治体のトップが市民からたたかれるじゃないか。岸田内閣は自治体をいじめてるの?」との批判が寄せられた。

「地方に丸投げ」批判は、岸田内閣以前からよく見られたものだ。最近では、春先から夏にかけての新型コロナワクチン接種の初期。このときも「自治体に丸投げ」「政府の二転三転する方針に自治体が混乱」といった批判が数多く寄せられた。

しかし、時を経るごとにこうした類の批判は少なくなっていった印象だ。当時の河野太郎ワクチン担当相が毎日のように情報発信。強烈なリーダーシップで、ワクチン確保と自治体への配布に奔走。さらに、自治体の要望にもきめ細かく対応していったからではないだろうか。

ひるがえって今回の「10万円相当の給付問題」。まず誰が担当大臣なのか、自治体は誰に要望を伝えればいいのか、「司令塔」の存在が国民にはまったく見えてこない。この問題には、ここ数日だけでも岸田文雄首相、山際経済再生担当大臣、鈴木俊一財務大臣、松野博一官房長官が発言しており、その内容はそれぞれ微妙に違う。こんな調子で、実際に業務を担う自治体が混乱をきたさずに給付できるのだろうか。まずは、ワクチンのように一人、責任者を任命するところからはじめてみてはどうか。

 

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