イギリス議会で中国人工作員が暗躍、日本より厳しいのに突破された政治献金規制
日本では過去にも外国人からの違法献金事例も- イギリスで中国人女性が中国共産党と連携して政治的な干渉活動の疑い
- 外国人による政治献金は日英ともに禁止されているが、イギリスは規制がより厳格
- 今回のケースは「違法性」が問われていない。スパイの取締法もない日本は…
イギリス情報局保安部(MI5)は13日、中国人とみられる人物が政治献金を通じてイギリス政治に介入していると警告を発した。14日、CNNが報じた。MI5は、クリスティン・チン・クイ・リーという名前の中国人女性が、中国共産党と連携して政治的な干渉活動に関与したと判断されると主張している。
報道によるとリー氏は、中国人や香港に住む非イギリス人から得た資金を、イギリスの政治家たちに政治献金として渡していたという。MI5はリー氏が「中国共産党の政策を推進するために、超党派議連の設立を目指している可能性がある」としている。
与党・保守党元党首のイアン・ダンカン・スミス下院議員は「この議会でそうしたことが起きたという事実に、政府は危機感を持たなければならない」と警鐘を鳴らしている。ダンカン・スミス議員は、リー氏の国外追放を求めていくという。
外国人による政治献金は日本でも禁止されているが、もちろん、イギリスでも禁止されている。国立国会図書館調査及び立法考査局が発行する月刊誌「レファレンス」に掲載された論文「英国の政治資金制度」(著:木村志穂)によると、イギリスで政治献金をすることが認められている個人は、「選挙人名簿に登録された個人」に限られる。
選挙人名簿へ登録できるのは、「16 歳以上の英国民(投票は18 歳以上)、アイルランド共和国市民(国及び地方選挙)、一定の条件を満たした英連邦市民(国及び地方選挙)及び欧州連合市民(地方選挙)も英国に居住していれば可能である」。
さらに、献金をした人の身元や資金源を確認するのは献金を受けた政党や議員側の義務だとされている。献金を受けてから30日の調査期間が設けられ、その献金が適切かどうかの調査が行われる。不適切なものと判断された場合、その献金は返還される仕組みだ。
「違法性が問えないケース」
今回、リー氏は法的に問題があって摘発されたわけではない。リー氏は政治献金を行うための何らかの手段を有していたものとみられる。国際インテリジェンス専門誌「ワールド・インテリジェンス」の元編集長で、国際関係や安全保障の分野で多くの著作があるフリーライターの黒井文太郎氏もツイッターで「これも違法性が問えないケース。こうした工作にどう対処するかは各国とも苦慮しています」と指摘している。
翻って、日本の献金制度はどうか。外国人からの政治献金は禁止されてはいるが、そのルールはイギリスほど厳格に運用されているわけではない。政治献金をした側が偽名を使っていても、受けた側は調べるすべもない。政治資金規正法に年齢制限はないため、1歳児でも5歳児でも政治献金をすることは可能だ。イギリスのように、「選挙人名簿に登録された個人」という規制はない。
さらに、5万円以下の政治献金の場合、収支報告書に氏名や住所などを記載しなくても良いとされている。たとえば、外国人が複数の名前を使い分けることで、書類上は匿名で多額の政治献金をすることも可能になる。過去に、外国人に献金を受けていたことが明らかになった議員がいて国会などで追及されたことがあるが、こういった「テクニック」を使えばチェックが難しくなる。
厳格なルールの元、不適切な献金を厳しく取り締まっているイギリスですら、プリティ・パテル内相が「深く懸念する」と述べたような出来事が起こっている。イギリスほど厳格なルールがなく、世界でも非常に珍しいスパイを取り締まる法律すらない日本。このままでは、外国勢力のやりたいようにやられてしまうのでは、と考えてしまうのは考えすぎだろうか。
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