粉飾決算で話題のグレイステクノロジー株、ノルウェー政府が持っていた!

昨年4月以降に取得。「日本市場」信頼失墜を憂う
ライター/SAKISIRU編集部

粉飾決算が明らかになってから、株価暴落が止まらないグレイステクノロジー株。2020年12月に1株4235円の値を付けたグレイステクノロジーの株価は、1年あまりが経った今、68円(1月21日始値)にまで落ち込んでいる。

そんな中、一部投資家の間でグレイステクノロジーの大株主に「ノルウェー政府」が名を連ねていることが話題になっている。四季報オンラインが提供する最新の株主情報(昨年9月時点)を見たところ、確かにノルウェー政府はグレイステクノロジーの大株主になっていた。その時点では、ノルウェー政府が保有するグレイステクノロジー株は45万株に上る。持ち株比率は1.5%だ。

Andrii Zorii /iStock

上場廃止なら回収不能

2021年3月31日までの2021年期末のIRレポートには、大株主にノルウェー政府の文字はない。そのため、グレイステクノロジー株をノルウェー政府が購入したのは昨年4月以降とみられる。

昨年4月のグレイステクノロジーの株価は3000円~3300円ほど。6月には1500円~1900円に下落している。仮に、1株2000円でノルウェー政府が購入していたとしたら、45万株を保有しているため9億円がかかっている計算になる。株価が1000円~1200円程度に落ち込んだ秋以降に買ったとしても、4億円から5億円が必要だ。株価が60円~70円台を行き来している現在、株を保有していれば含み損はかなりのものになるが、上場廃止になれば投資額は1円も回収できないことになる。

アメリカには粉飾決算や不正会計を防止する「SOX法」があり、違反した場合、最高500万ドル(約6億円)の罰金および最長20年の禁固刑が科される。ヨーロッパでも厳しく取り締まられており、ドイツのフィンテック企業大手「ワイヤーカード」が粉飾決算を起こした末、旧経営者らの逮捕、会社の破産に至った経緯は記憶に新しいところだ。韓国では、サムスングループの「サムスンバイオロジクス」が粉飾決算を起こした際には、グループの中核企業・サムスン電子の副社長を含め多数の逮捕者が出ている。

東京証券取引所(winhorse/iStock)

粉飾決算に甘い東証、日本社会

翻って日本はどうか。日本での粉飾決算と言えば2015年に発覚した「東芝事件」が有名だが、2000億円以上の粉飾決算を会社ぐるみで行っていたことが明らかになっているにも関わらず、関係者は誰も逮捕されていない。昨年には刑事事件としての公訴時効を迎えており、もう捜査も行われないだろう。東芝は事件を受けて、2017年8月には東証二部に降格したものの、3年半後の昨年1月には東証一部に復帰している。

コロナ禍に関わらず、昨年1月~3月期だけで約5兆円という破格の運用益を叩き出しているノルウェー政府だけに、グレイステクノロジー株による数億円の損失は痛くも痒くもないのかもしれない。

しかし、損失の原因が粉飾決算だったと知ったらどうか。さらに、遠因には企業の粉飾決算に甘い東証の体質、ひいては日本社会があるとなったらどう思うだろうか。

筆者の個人的な感想を言わせてもらえば、今後の継続的な投資先として日本市場を選ぶとはとても思えない。危なくて仕方がないからだ。

ちなみに、2021年期末には中国政府系ファンドと見られている「SSBTC CLIENT OMNIBUS ACCOUNT」が約94万株(持ち株比率6.6%)のグレイステクノロジー株を保有していることが報告されている。こちらは良いタイミングで売り抜けたとみられ、最新の大株主には記載がなかった。見事と言わざるを得ない。

 

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