信託型ストックオプション問題、衆院経産委で国税側「訴訟は一般論としてあり得る」

維新・足立氏「微調整は自民党的手法」

信託型ストックオプション(SO、株式購入権)売却時の税率が、国税当局と企業側の認識に35%ものズレがあった問題で、5月31日の衆院経産委員会では訴訟の可能性が取り沙汰された。

この日の質問者は維新の足立康史氏。今年2月の自民議員の質問を機にスタートアップ業界の関係者の間では騒ぎになっていたが、日本経済新聞が一面トップで報道して騒動が拡大。衆院解散を意識する野党側の関心が強まっている。

維新・足立氏(衆院ネット中継)

足立氏が序盤、事の経緯について説明を求めると、国税庁の植松利夫官房審議官は「一部の信託会社等においてSOの行使時に給与課税されないとの見解があることは承知しているが、国税当局としては役員等へのSOの付与を目的としたものであることから、給与課税されるという取扱いを行っている」と改めて見解を示した。

また、すでに組成済みのSOについての取り扱いについて植松氏は「どのような内容であれば税制適格の要件を満たすことができるのかについて現在関係業界と協議中であり、柔軟に対応してまいりたい」と述べるにとどめた。

混乱の元凶と言えるのが信託型SOの普及から9年経って唐突に見解が示されたことだ。国税庁の担当者が出席した29日のスタートアップ業界への説明会では、企業側から国税側への疑念が相次いで噴出した(関連記事)。

答弁する国税の植松官房審議官(衆院ネット中継)

足立氏が認識の違いが生まれた経緯をただすと、植松氏は「課税関係について問い合わせがあった場合には従来からSOの更新時に給与課税される旨解答を行っている」などと従前の回答を繰り返すばかり。足立氏が「何か国税庁としてアクション取ることはないのか」と畳みかけたが、植松氏は「事実関係がわからない中で、個別の取引についてこちらから見解を示すことはなかなか難しい」と釈明するのにとどめた。

ここで足立氏は訴訟の可能性にも言及。信託型SOを導入した企業と推進した企業との民間同士の訴訟(民民訴訟)に加え、「国税庁だって訴えられるかもしれない」と水を向けると、植松氏は「民民、あるいは国政当局との間で訴訟等が起こることは一般論としてあり得る」と、紛争が法廷に持ち込まれることを視野に入れていることを窺わせた。

足立氏は今回の国税側の対応について「給与所得と金融所得の間にあるこの断絶を、所得という小手先で修正してでその修正の仕方については毎年微調整していくことが私は自民党的だと思う」と皮肉り、「税体系をもうちょっとフラットに」と要求した。これに対し、西村経産相は「自民党的と言われるかもしれないが」と前置きした上で、税制について「様々な観点から不断の見直しをしていくべきで、スタートアップ、成長する企業をしっかりと応援していく」と述べた。

信託型SOの税率問題を巡っては、維新の音喜多政調会長や国民民主の玉木代表もツイッターですでに言及している。衆院選に向けた企業関係者や投資家へのアピールも視野に、政府与党側に対する新たな追及材料になりつつある。

(関連記事)ストックオプション“大増税”騒ぎ、スタートアップ側の「記者顔負け」国税への“追及”シーン再録

 

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