もはや「明らかな有事」、日本の総人口前年比67万人減の衝撃

楽観派も悲観派も実は「大差ない」?
住宅・不動産ライター/宅地建物取引士
  • 総務省の人口統計で、日本の総人口が前年比67万人の大幅減
  • 人口減少問題に「悲観派」「楽観派」それぞれの主張を改めて解説
  • 実は両者に大差はない?政府与党の政策は楽観的なようだが…

もはや有事に匹敵するほどの人口の減り方だ。総務省の人口統計(4月20日公表)によれば、2022年4月1日現在の日本の総人口は1億2519万人(概算値)で、前年同月に比べると67万人の大幅減となる。

総務省統計局より

人口減少は、どうしても日常生活での実感に乏しい。単に67万人減ったと言われてもピンとこない方も少なくないだろう。だが、この数字は、東京都江戸川区の人口(約67万人)や千葉県船橋市の人口(約62万人)とほぼ同数である。つまり、たった1年間でひとつの街の人口が丸ごと消滅したことになる。

これまで、人口減少は「静かなる有事」などと言われてきた。しかし、年間で67万人も人口が減る現状を踏まえれば、今や「静かなる」などという枕詞は外すべきだろう。

人口減少問題の「悲観派」「楽観派」

日本の総人口が本格的に減少を始めたのは2011年頃からだが、当時の減少数は前年比マイナス22万人程度で、増減率(増減数を前年人口で除したもの)はわずかマイナス0.17%に留まっていた。

だが、昨年の増減率はマイナス0.53%で、2011年の約3倍となった。諸外国でも人口減少を迎えている国はあるが、ここまで急激な人口減少は他に類を見ない。

2017年にベストセラーとなった『未来の年表 人口減少日本でこれから起こること』(河合雅司:講談社)では、人口減少がもたらすさまざまな問題を「人口減少カレンダー」という形で示した。このなかには、「一人暮らしが本格化する」、「3人に1人が65歳以上の超高齢者大国へ」、「ついに東京都も人口減少へ」など、すでに実現してしまったものや、すぐに実現しそうなものも多い。

他にも、「全国の住宅の3戸に1戸が空き家になる」、「未婚大国が誕生する」、「自治体の半数が消滅の危機に」など、現在の認識でいえば予想というより、今後の日本にほぼ確実に当てはまりそうな未来像が描かれている。急激な人口減少社会では、孤独死の日常化やマンションのスラム化など、実際にはもっと悲惨な事態が蔓延するかもしれない。

だが一方で、専門家、評論家、学者のなかには、人口減少など何の問題もないとする意見もある。

経済学者で菅義偉内閣の内閣官房参与も務めた高橋洋一氏は、人口減少など何の問題もないと断言する。出演した某ネット配信番組では「少子化問題はまやかし」とまで述べている。

高橋氏を含め、人口減少について問題ないとする人たちの主張は主に以下のようなものだ。

  • 人口増減率と1人当たりGDP成長率とは相関関係がない。※国のGDP成長率が低くても1人当たりGDP成長率は高くなるので問題ない
  • 人口減少危機を煽っているのは、人口減少によっておこる市町村合併が嫌な地方公共団体の関係者。
  • 人口動態は容易に予測できる。それに合わせた社会問題の対策をとればいい。
  • 英国、フランスなどは人口6,000万人程度で豊かに暮らしている。日本は人口1億人も必要ない。
  • 労働力が不足したらAIやロボットに置き換えるなどイノベーションで対応可能。
  • 日本は資源が無い国。エネルギー需要は人口に比例するので人口は少ない方がいい。
  • 年金制度は破たんしない。働く人が減ったら給付も減らせばいい。

このように、人口減少問題には悲観派と楽観派がいる。興味深いのは、どちらも別に正反対の主張をしている訳ではないという点だ。先に紹介した「未来の年表」でも、人口減少社会は受け入れるしかないので、将来を予測しながら「戦略的に縮む」べきとしている。

つまり両者は、人口減少は防ぎようがないので、泣きながら計画的に縮むか、笑いながら計画的に縮むかという「対応に差」があるだけなのだ。

コロナ禍も人口減少に大きく拍車…(mina you /iStock)

政府与党は楽観的だが…

悲観派、楽観派、どちらの考え方・取り組み方が正しいかは今のところ結果は出ていない。楽観派が言うように、日本は思いのほか容易に人口減少社会への対応が進むかもしれないし、その逆になるかもしれない。

ただ仮に、運よく日本のさまざまなシステムが人口減少社会にスムーズに対応できたとしても、人口減少問題が解消されるわけではない。厚生労働省の人口動態統計によると、2020年の日本の合計特殊出生率は1.33で、前年比5年連続の低下となった。この出生率が2を切り続ける限り、社会増(入国者)が毎年大幅に増加し続けなければ人口減少に歯止めはかからない。

そしてそのまま日本の人口が半分になったとしても、その時点ではまだ人口減少は続く。楽観派がよく引き合いに出す英国やフランスの人口は日本の半分程度だが、今のところ両国の人口は減少しておらず、わずかだが未だに増加傾向にあることを忘れてはならない。

政権与党である自民党のホームページ上にある政策キャッチフレーズの一文を見ると、少子高齢化や人口減少に対して明らかに楽観的なのが分かる。

AI、IoT、ビッグデータで少子高齢化・人口減少を強みに転換し、しなやかで強い経済をつくります。
(出典:自民党 重点政策「強い経済で所得を増やす」)

少子高齢化や人口減少を楽観的に捉えてもいいし、それを強みに転換できるなら是非そうして欲しい。だが、少子高齢化や人口減少に「対応できる」ことと、「解決できる」ことが同義ではないことを、為政者にはもう一度しっかり考えてほしい。

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