暗号資産?言葉からダサい規制ニッポン
真田哲弥の未来対談『サナダマル!』第1回 #2- 真田哲弥氏と國光宏尚氏の未来対談。第2回は仮想通貨の規制とNFTの今後
- 投資の民主化と投資家保護の両立も、日本の規制は厳しく買えない通貨も
- NFTの課題はガス代の高騰。これを乗り越えようとする國光氏の見立ては?
今年に入り、デジタル経済の世界で、注目度が上昇した「NFT」(Non-Fungible Token:非代替性トークン)。前回(#1)は、真田哲弥さん(KLab創業者)が、NFTに精通する國光宏尚さん(gumi創業者)と、ここまでの盛り上がりを振り返りました。議論は途中から法規制の話題へ。暗号資産(仮想通貨)をはじめとするイノベーションに対し、市場の成長と投資家保護が両立するように、日本の政治・行政は適切なアプローチができているのでしょうか。

規制だらけで投資機会を逃す日本
【真田】仮想通貨で資金調達するICO(イニシャル・コイン・オファリング)はお互いに“僕調べ”95%が詐欺が残念なプロダクトが実態でした(笑)しかし5%は新しいイノベーションが出てきた。そんなICOに続いて日本の法律に準拠する形ででてきたSTO(セキュリティ・トークン・オファリング)は、規制と技術がうまく融合していますか。
【國光】役所のトップダウンで既存の枠組みの中でやろうとしたので、うまく機能してません。しかしボトムアップで動きが出ています。情報開示が不十分なまま一般の人たちにトークンを売り出そうとするのは問題なわけですが、その解決策も出てきています。

【真田】といいますと?
【國光】資金調達する際、最初からトークンを不特定多数に売り出さずに、資金が必要なところまでは特定の適格投資家に売ります。その後、プロダクトが完成する際、トークンは一般ユーザーに販売するのではなく、マイニングやファーシングでコミュニティに貢献することでトークンを附与するというやり方があります。それがいま主流ですね。投資家保護の規制と投資の民主化のバランスをそういう形でとるわけです。
【真田】なるほど。仮想通貨やトークンで面白いのは、応援しているプロジェクトにトークンを購入するかたちで参加できることですね。
【國光】イーサリアムのようなプロジェクトがあったときに「世の中を変えるんだ」と思った人がそれを買って、ブログを書いて応援したり、プログラム書ける人はコードを書いたりして盛り上げます。盛り上がると価格も上がってみんなハッピーになる(笑)ビットコインは去年1年で6倍、イーサは10倍くらい価格が上がったんですが、日本の規制はキツい。この2つよりはるかに上がった仮想通貨が50個以上はあるんですよ。しかし日本ではそれらを買うことができないわけなんですね。

【真田】日本の取引所で扱ってるものがそれぐらいしかないのですね。日本の取引所は、その仮想通貨を扱うためには金融庁と打ち合わせしてコンセンサスを得てからしか扱えません。日本の取引所に出ているコインはほんのわずか。これは投資家保護とイノベーションのバランスの問題ですね。
【國光】日本は、新しいテクノロジーが出てよく分かってない段階のところで、すぐに枠にはめて規制!規制!規制!となります。一番不細工な話で言うと、名称が仮想通貨から“暗号資産”に変更されましたが、あれは規制をつくったときの使い方がビットコインのような資産を保全するものという前提だったから「通貨ではなく資産」になってしまったわけです。
しかし先ほどの話のように、NFTでは、アフリカのアーティストの作品を南米の人が買って、ウクライナの人が二次流通で買って、アフリカのアーティストに収益が還元されるという、グローバルな取引で使われ始めてるんです。結局これって仮想通貨じゃん、と。
そうそう。イーサリアムのガス代高騰を解決しようとしている新しいチェーンがあるという話もしましたが、そのプレイヤーであるバイナンススマートチェーンや、ポルカドットなど、すべて日本で買うことができません。
【真田】そう、買えないんですよね。このままだと何が起きますか?

【國光】そういう新しいチェーンでNFTが作られても、日本ではひたすら規制されているので、NFTを買いたくてもそれを買うのに必要なトークンすら買うことができなくなるわけですね。
ICOで資金調達の民主化が進めば、個人の投資家でも世界中の将来性のあるプロジェクトに参加することができます。世界中の投資家からお金を集めることって悪くない未来じゃないですか。投資家保護は必要であることには違いありませんが、日本の法規制は、何か問題があったらその悪い面ばかりをみて、すぐ規制をしようとします。でも、ほかの国だと、自由にやってみて問題が起きたところを対処しながらルールを整備していくやり方ですね。
結局、日本はすっかり下火になった一方で、グローバルで見ると実はしっかりお金が動いているのです。ビットコインの時価総額だけを振り返っても、規制がはじまった2017年4月時点で約13万円だったのが、いまや450万円近く。35倍です。仮想通貨ブームで盛り上がった2018年のピーク時が約200万円。その時点と比べても2倍を超えています。
NFT普及のカギは?
【真田】さて日本国内でもNFTを発行していろいろなサービスが出てきています。中には、仮想通貨で買っている人よりもクレジットカードや円、ないしはドルで買ってる人が多くなっているみたいですね。しかも過去に仮想通貨を買ったことがない人が、NFTがブロックチェーンであることを意識せずに買う人が増えてきているように思います。
そういう人が増えないとNFT市場が拡大しない、逆にそういう人によってNFTが市場拡大していく。そこがICOの失敗に対するある種の教訓ではないでしょうかね。
【國光】実際のところ、今のNFTの一つの課題がガス代の高さです。NFTを売るのに1〜3万円ぐらいかかるんですが、つまり1〜3万円以下のNFTであれば売れば売るほど赤字になってしまいます。だから、NFTがまさかの在庫になるという本当にジョークみたいなことが起こっているんです。
でも、ここのガス代の部分をすごく単純化するとトラフィックが多くなって結局高くなります。ここからさらにNFTの人気が出てくれば、当面はやはり高くなることはあっても安くなることはないでしょうね。

【真田】今後の見通しは?
【國光】ガス代に対する解決策は必要ですが、これがビジネスチャンスです。僕は1年内には解決すると見ています。今のNFTはガス代が高くて1〜3万円以上で、一点ものとかの高額アートだけが取引されていますが、いずれはガス代が本当に気にしなくていい数円のレベルまで落ちてくるはず。
そうなってくるといろいろなかたちでのNFTの使い方は結構出てくると思っていて、イノベーションが一気に進むと思います。
【真田】ガス代が高い問題の解決策として、國光さんの仰るように、バイナンスチェーンやポルカドットのような新しいチェーンがでてきそうですね。技術的にはブロックチェーンだけれども独自のものを使うとガス代が不要とか、どういうやり方になりそうですか?

【國光】大きく3つあって、またどれが勝つか全く分からないんですけど、1つ目がイーサリアムの進化。「イーサ2.0」ですね。PoSへの変更です。ただ順調に言っているとは言い難く、既存のマイナー(マイニングをする人)は新しいのが使えなくてこれまでの投資が全部無駄になってしまうので、既得権から反対していたりもします。
【真田】2つ目は?
【國光】だったら既存の「イーサ1.0」を使いましょうという考えです。その上で取引をセカンドレイヤーで処理したら速いのではないかという動きがあります。そして3つ目は、よくテクノロジー業界で言うように「グーグルが一番最初の検索じゃなかった」というもの。つまり、最初のプレイヤーが勝つとは限らない中で、新しいプレーヤーもいっぱい出てきてるんです。
前まではダントツで「イーサ2.0」だったんです。ただ、これがあんまりにも決まらないって感じになってきていて、今どこが勝つかは本当によく分からなくて。夏に向けてイーサのライバルが出てきますが、面白いのは、名前が挙がっているのは3年前にICOでお金を集めたプレイヤーばかりなんですよ。
【真田】詐欺じゃなくて本物の5%の中にいたんですね。
(#3に続く)
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