食べチョクとSBI FXトレードが「異色コラボ」した背景にある経済変動とは?

「SDGs」で生産者支援

産地直送の通販サイト「食べチョク」の運営会社ビビッドガーデン(東京・港区)と、SBIグループのSBI FXトレード(同)が「SDGs」をテーマに農家や漁師などの1次産業の生産者を支援するプロジェクトで協力することになった。両社が18日、東京都内で記者会見を行って発表した。

食と金融による「異色コラボ」の背景には食品ロスや世界的なインフレなどの経済変動があるようだ。

記者会見したSBI FXトレードの藤田行生社長と、ビビッドガーデン秋元里奈社長

「食べチョク」は、元DeNAの秋元里奈氏が創業翌年の2017年に開設。祖父の代まで実家が農家を営んでいた経験から、中小規模の農家が既存の流通路で低収益に悩む実情を熟知しており、「食べチョク」を通じて生産者と消費者を直接結び、生産者の収益性を高めるように取り組んできた。

農業や漁業が持続可能になるためには「生産者さんが価格を決めて、価値をしっかり説明していけるようにしなければ」と秋元氏。「食べチョク」経由で販売する農作物や水産物の収益率は、伝統的な販路の倍以上となって評判を呼び、1月現在、8000を超える生産者が登録。消費者側のユーザー数も80万人へと成長している。

近年、秋元氏のメディア露出が増えて知名度がアップ。生産者の持続可能性を追求してきた同社だったが、一昨年の世界的な原油高が始まった頃から、燃料代や肥料などの高騰に悩む声が寄せられるようになったという。

同社が昨年6月、生産者に尋ねた調査でも生産者の約3人に1人が20%以上のコスト増に苦しんでいることが表面化。「食べチョク」に出品中の商品についても約25%が「値上げをしたいが上げにくい」と悩んでいることが浮き彫りになった。同時期、ロシアのウクライナ侵攻後に加速した世界的なインフレも生産者をさらに苦しめた。

食産業では、コロナ禍前から問われていたもう一つの持続可能性の問題がある。2019年10月、食品ロス削減推進法が成立し、事業者にも消費者にも食品ロス削減が求められてきた。「食べチョク」でも、大きさの不揃いで破棄していた果物を飲料に加工して販売する農園を紹介するなど、SDGsに貢献する生産者を後押ししてきた。

規格外の果物や野菜を菓子やソーダに加工

ただ、「1社だけでの取り組みには限界もあった」(秋元氏)ことから、販促などに協力する企業を探していたところ、SBI FXトレードが趣旨に賛同した。同社は今年3月、荒廃する田んぼの復元を通じた環境保全の取り組みを開始するといい、藤田社長は「お客さんの間でSDGsに貢献しているという実感を持ちたいというニーズが強くなっている」と説明する。今回のコラボは、昨年からの急激な為替変動で打撃を受けた生産者を支援する意味もあるようだ。

両社は今後、販促キャンペーンや、お中元・お歳暮などの顧客向けギフトの提供、自然災害で被災した生産者からの食材購入などの支援といった取り組みを開始する。「食べチョク」側は今後も協力先の企業を増やしたい意向だ。

 
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