自民・公明「亀裂」で注目度アップの都議補選、自民は“災い”転じて足腰を鍛え直せるか?
「公明票当てに甘えが出た」指摘も衆院の解散総選挙の行方を占う東京都議補選の大田区選挙区(欠員2、6月4日投開票)の戦いは、自民・公明の東京都内での選挙協力関係に大きな亀裂が入ったことが表面化し、さらに全国的な注目度が高まっている。当落の結果だけでなく、各党の票の動き、言わば「勝ちっぷり」「負けっぷり」によっては岸田首相の解散戦略を左右しかねない。

今回の選挙で一つの「指標」になるのが3年前に同じ大田区で行われた都議補選(欠員1)だ。この時は自民が約11万票を獲得。維新(約7万9000票)、立民(約6万9000票)に圧勝している。大田区にはもともと公明の現職が2人おり、補選は前回も今回も参戦していない。国政戦も含めた過去の選挙結果から大田区内には4〜5万程度の「公明票」があるが、3年前は相当数が自民に入れた可能性がある。
しかし今回の補選は告示前日(5月25日)、公明が自民と交渉していた衆院東京28区(練馬区東部)への候補者擁立を断念し、東京の選挙で自民の候補者に推薦を出さない方針を伝えるなど、自公の亀裂が深刻な状態が浮き彫りになった。表向きは自主投票のように見えるが、対立してきた経緯が経緯だけに自民に入れることは考えづらい。当然、大田区内で4万票余りが宙に浮く形となる。
これに目をギラつかせるのが都民ファーストの会だ。特別顧問の小池百合子都知事が、2年前の都議選で次点に終わった元区議の女性に出馬を働きかけて擁立した。小池都政が始まった最初の1年数か月は、公明が自民との関係を絶って都民ファとの協力関係に転向。小池氏が17年衆院選で希望の党を旗揚げしたことを機に関係を一度は解消したが、公明はその後「是々非々」と表向きには言いつつ、都議の1人がある新聞の取材に「小池知事と連携した方が話が早い」と本音を漏らすなど水面下で距離を縮めているのが実態だ。

国政と同様に都政でも自公をつなぐ「調整役」が世代交代とともにいなくなったことも自公の関係悪化を促した側面がある。「都議会のドン」で知られた内田茂元都議の引退と死去、さらには中堅のリーダー格だった山崎一輝氏が区長選に転出して落選。一方、Colabo問題の追及でも注目された都議会自民の現幹事長代行、川松真一朗氏と都議会公明で長年幹事長を務める東村邦浩氏は「目も合わさない関係」(都政関係者)とされる。3年前には東村氏が新聞の各会派幹事長インタビューで川松氏を公然と批判、都政関係者の間で緊張が走った(参照:アゴラ)。
自民内に広がる不安に追い打ちをかけたのが21日投開票の足立区議選。19人の公認候補のうち、7人が落選(現職5、新人2)して衝撃が広がった。大手メディアの世論調査で自民は政党別支持率で他を圧倒する数字が出ているものの、党勢の目安となる地方選では取りこぼしも増えているように見える。ある自民都連の関係者は「政党として基礎体力の問題だ」と指摘。「国会議員、都議、区議が日頃から密に連携を取って支援者と関係を構築しなければいけないのに、活動量が落ちている」と危機感を募らせる。
21年衆院選で東京都内の25の小選挙区のうち、公明の推薦を得て勝利した自民の候補者は14人。このうち公明の比例票分を引くと、数字上は野党候補に逆転されるのが7選挙区と半分にもなる。大田区の選挙の話に戻すと、21年都議選本選では自民3候補(当選1、落選2)の得票は7万票弱。この全てを今回、自民が集約できても公明票なしに前回の11万票にはとても届かない計算になる。
東京の対立劇は他県の自民衆院議員の動揺を誘っているとの見方もあるが、前出の都連関係者は「公明票を長年当てにして甘えが出てしまった。もう一度組織を一から立て直す良い機会にすべきだ」と指摘する。都市部では維新の台頭が予期される中、自民は危機を逆手に組織を鍛え直すことができるのだろうか。野党側の動向を含め、都議補選は「試金石」としての重みを増している。
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