中国のTPP加盟正式申請は「想定外」ではない

中川コージ氏「党として規定路線」

中国政府が16日夜、環太平洋経済パートナーシップ協定(TPP)への加盟を正式に申請したことを明らかにした。ツイッター上では、一般のネット民だけでなく、海外の政治に詳しい大学教授でも「想定外の申請」などと驚いた様子だったが、本当にそうなのだろうか?

bushton3/iStock

TPPはアメリカのオバマ政権時代に「対中包囲網」の思惑から推進されてきた経緯があることから、今回の中国政府の動きを唐突に思う人が少なくないようだ。アメリカ政治を専門とする有名な大学教授ですら「想定外の申請」とツイート。政治ではない分野を専門とする別の大学教授も「中国は面白い手を打ってきた」と投稿していたが、中国の政治経済事情に詳しい中川コージ氏はツイッターで「チャイナのTPP参加なんて去年から党(編集部注・中国共産党)として是認してて規定路線」と指摘するように、習近平国家主席は昨年11月のAPEC首脳会議で「積極的に検討する」と述べていた。毎日新聞は2月の時点で「中国のTPP参加「ハードル高いがかなり本気」の理由」と題した分析記事を掲載している。

この記事でも言及されているが、中国のTPP加盟が「本気」になっている背景として中川氏は先述のツイートの中で

指導部が望む果実は短中期で高いTPP基準を外圧利用して国有企業改革、 長期でTPP参加達成の後に商圏拡大→人民元利用拡大→通貨覇権の野心

と国内外の経済事情を紹介していた。

それでも、このタイミングで中国がTPP加盟の正式申請に踏み切ったのは、直前にアメリカがイギリス、オーストラリアと新しい軍事協力の枠組み「AUKUS」創設を表明したこととの関連も取り沙汰されているが、今のところ不明だ。一方で、アメリカがトランプ政権時代にTPPから離脱した間隙を突いたのも事実で、AUKUS創設と今回の加盟申請が直接の因果関係があるかまでは不明だが、米中冷戦の激しい駆け引きの一環にあるのは確かだ。

しかし、アメリカ不在とはいえ、中国のTPP加盟が実現できるのかハードルは高いのも事実だ。弁護士の野村修也氏はツイッターで、「中国が、国有企業の優遇廃止、データ流通の自由、知的財産の保護強化などのルールを受け入れるなら大歓迎だが、経済力を背景にこうした自由主義経済の基本原則を切り崩そうと試みる場合には拒否すべきだ」との持論を示した。

 
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