横浜市・山中竹春市長の経歴詐称問題について記者会見で直撃

本当に「NIHリサーチ・フェロー」だったのか?
ライター
  • NIHは山中氏について「visiting fellow」と回答。真相を聞いた。
  • 「研究員」を意味する言葉として「リサーチ・フェロー」を使ったと回答
  • 実際の役職名については「研究員に相当する言葉」と繰り返すのみ

横浜市の山中竹春市長が17日、定例記者会見で記者の質問に答えた。冒頭はコロナ対策について説明と質疑応答が行われ、その後、一般質問を受け付けた。非加盟社やフリーランスはなかなか指されなかったが、終盤近く司会者の女性(横浜市役所の職員)が「1時間を超えており、次のスケジュールもございますので、あと1社1問でお願いします」と発言したところで、ようやく私(筆者)が指された。

山中市長は青地のシャツに金ボタンのブレザーを着用していた/筆者撮影

経歴詐称について、真偽を尋ねた。

――NIHに取材したところ、山中さんの在籍期間は2003年11月から2004年6月の8カ月間で、肩書きはビジティング・フェローだった。自身の経歴でウソをついていたということでしょうか?

まず事実として、2002年の7月から2004年の6月までNIHで研究者として在職しており、その事実に違いはございません。私が2002年の7月からNIHに研究していたんですが、2002年の7月から九州大学教員の身分を保持したまま、九大からの在外研究員という形で、NIHの研究者として赴任しておりました。

その際には、アメリカで働くということなので、アメリカでの就労ビザ、J1ビザを取り、NIHに在職しておりました。2002年の初頭に手続きしたのですが、当時は同時多発テロのあとだったので、ビザの取得がそれはそれは、相当大変でした。私だけでなくその頃にアメリカに行こうと思った方はみんなそうだったようですが、大変でしたね。それが期間に関してですね。

呼称に関しては、講演や研究発表などで、日本語で研究員としたり、あるいは研究員を示す英語としてリサーチ・フェローといった用語を使っておりました。あるいは、リサーチャーなどと言っていたこともあります(筆者注:この部分で山中市長はにわかに声を張り、大きな声で主張した)。現時点でそういったご回答になります。

「ではなぜNIHには2003年以降の…」と問いかけたところ、司会者が「残り一問でお願いします」と割って入ってきた。フリージャーナリストの畠山理仁さんが「これ大事だと思いますよ」とフォローしてくれた。

――大事なところなので、きちんと説明されたほうが良いと思います。NIHのリサーチ・フェローはビジティング・フェローとまったく別の役職なので、詐称していたと疑われても仕方がないのでは?

呼称に関しては、講演や研究発表などで研究員と表記していたこともありますし、研究をしているフェローということで、リサーチ・フェローっていう言葉を使っていたこともありますし。いろいろとそういった言葉をですね、適切な用語だと思われるものを使ってまいりました。

いわゆる研究員としてですね、赴任していおりましたので、研究員に相当する日本語や、あるいは英語ですね。そういったものを使ってまいりました。それが呼称に関するご回答になります。

期間に関しては、2002年の7月から在外研究の形で。そのあと九州大学を休職し、在外研究という形で行っておりまして、そのことが関係しているのかどうか分からないですが。サキシルさんのほうで、どういったお尋ねのされ方をして、どういった回答がNIHからあったのか存じ上げないですが、2002年7月から赴任をしておりました。

“三密状態”の記者会見場/筆者撮影

執拗に割って入る司会者

「その時は現地ではどういう役職だったんですか?」と問うと、再び司会者が「すみません!最後にしてください!」と割って入った。大事なところなので、質問を続行した。

――肩書きだけ教えてください。

肩書きに関しては、私自身は研究員に相当する言葉だったと思います。

――英語で何という肩書きでしたか?

研究員に相当する言葉だったと思います。

――何という? 英語で具体的に何という?

そちらに関しては、研究員に相当する言葉だったと思います。さまざま、機関ごとに定義が異なる、同じ用語であっても機関ごとに定義異なる場合もありますので、そちらに関しては、研究員を表す用語だったと思います。

「すみません!」と再び司会者が割って入った。

――NIHのリサーチフェローと答えたのは不適切だったとは考えない?

考えておりません。研究員を表す用語として研究員、リサーチ・フェロー、リサーチャー等を使っていましたし、2002年の7月から2004年の6月の時点で研究者として在職していたことは事実です。

司会が再び「すみません! 以上で終わらせて頂きます!」「じゃああと一問!」と鋭い口調で割って入ると、山中市長も「すみません、この後の予定があるので」と強制終了しようとした。私は「ごめんなさい! ごめんなさい!」と食い下がり、質問を続けた。

――ビジティングフェローであったことは事実?

ビジティングフェローであったことについては、確認を致します。NIHからのご回答っていうのが、ビジティングフェローという回答だったんですか。NIHからの回答については、その通りだろうと思います。

山中市長が言い終わるのと同時に、司会者が「はい! 以上で定例会見を終了致しまーす!」と宣言し、私の質問時間は終了した。

「次の予定」のため足早に立ち去る山中市長/筆者撮影

「研究員に相当する言葉」とは?

こうして振り返ると、司会者は私の質問を5回も“妨害”していたことが分かる。記者会見を打ち切ってまで優先しなくてはならない“次の予定”とは、いったい何だったのだろうか。また、市長の定例記者会見は、記者クラブと市役所の“共同開催”である。市役所が一方的に終了を宣言する権限など、あるのだろうか。

山中市長に肩書きについてしつこく聞いたが、「研究員に相当する言葉」と5回も繰り返すばかりで、最後まで具体的な名称を答えなかった。

だが、NIHのホームページを見れば分かるように、「リサーチ・フェロー」は研究員を表す一般名詞ではなく、「卓越した学術成果」を有する常勤の職員に与えられる具体的なポジション名である。

「研究員を意味する言葉として、リサーチ・フェローと名乗った」という山中市長の主張は、“詭弁”としか言いようがない。詭弁を聞き続け、私(筆者)は頭の中がクラクラした。会見場は前回同様、コロナ対策ほぼゼロの“三密状態”。頭が朦朧となった。コロナに感染しないと良いが。

山中市長の詭弁は、例えていうならプロフィール欄に“弁護士”と書いておいて、ウソを付くなとツッコまれたら「弁護士資格は持っていないが、友人のトラブルを弁護することがあるので、弁護士と名乗った」とベロを出して言っているようなものだ。

山中市長が「NIH リサーチ・フェロー」と名乗っていたことは、本当に問題がないのか。引き続き、取材を続けたい。

 

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