創刊SP対談 猪瀬直樹さん #2 テスラを買えばわかる

アラフォー世代へ。「時代の当事者」になるには
2021年04月27日 06:01
  • 猪瀬さん対談#2は、エネルギーの地殻変動と世代論がテーマ
  • 気候変動を引き合いに、世界情勢に疎い日本人の問題を考える
  • 新しい一歩を歩むには?アラフォー世代に猪瀬さんが説く心掛け

SAKISIRU創刊スペシャル対談第1回のゲストは、猪瀬直樹さん(作家、元東京都知事)。「#1」では、猪瀬さんが学生運動を体験した時代の話を引き合いに、コロナ禍で日常が失われた「時間」を個人がどう活かしていくべきかを語られました。「#2」では、ポストコロナを模索する私たちを取り巻くエネルギーの世界的な地殻変動について語った上で、SAKISIRUの主要読者であるアラフォー世代に向けて、リスクを取って新たな一歩を踏む意義などを新田編集長と議論します。

創刊SP対談 猪瀬直樹さん#2 テスラを買えばわかる

#1 「コロナで“止まった時間”を生かそう」はこちら

エネルギーシフトに見る世界の構造改革

【新田】日本がここから立て直すにはどうすればいいのでしょうか。それなりに尖ってる人がリスクを取ってリーダーシップを取っていくしかないと思うんですが…。

【猪瀬】産業側も受益者側も、既得権に安住している「構造」を変えていかないといけないのです。その一例が電力の構造。発送電を分離する自由化はある程度進みましたが、送電網はいまなお既存の電力会社が握ったままです。これでは競争原理が働きません。

イギリス洋上風力発電
Kapook2981/iStock

ヨーロッパは再生可能エネルギーに一気にシフトしています。イギリスは2030年までに全電力の30%を洋上風力発電にすると言い始めました。三菱重工は風力から撤退しましたが、(ヨーロッパの風力事業は)ドイツのシーメンスなど3社で寡占状態。イギリスの風力発電施設を訪れ、スケールの違いを感じるはずですが、高さが200㍍と、東京都庁クラスの巨大なものがブンブン羽を回しているのです。イギリスは再生可能エネルギー分野で、これから30年で100万人規模の雇用も作ろうとしています。

いちばん問題なのは、日本人が、気候変動でそうしたダイナミックな変化が起きているという意識がないことだと思いますよ。

【新田】ただ、イギリスの風力発電が成り立つのは強い偏西風という気象条件があるからとは言われています。日本の再生可能エネルギーへの投資が不十分だったのは事実なのでしょうが、「脱炭素」を進めるには、僕は原発をある程度残してベストミックスでやっていくしかないと思うのですが。また、原発は小型化に活路を見出そうとしています。

猪瀬直樹(いのせなおき)作家、元東京都知事。 1946年、長野県生まれ。1987年『ミカドの肖像』で第18回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。『日本国の研究』で1996年度文藝春秋読者賞受賞。2002年6月末、小泉首相より道路関係四公団民営化推進委員会委員に任命される。2006年、東京工業大学特任教授、2007年、東京都副知事を経て、2012年〜2013年東京都知事。2015年12月、大阪府・市特別顧問就任。主な著書に『天皇の影法師』『昭和16年夏の敗戦』『ペルソナ 三島由紀夫伝』など。近著に『公〈おおやけ〉 日本国・意思決定のマネジメントを問う』、『救出 3.11気仙沼公民館に取り残された446人』。

【猪瀬】小型原発がいま目の前にありませんし、今あるものはといえば柏崎がテロ対策不備で停止処分となったように、改めて動かせないことがわかりました。核燃料サイクルは破綻しています。別に原発を全部なくせとは言っていないのですよ。細々と技術を残して廃炉を進めていくしかないのでは。

原発も火力も残る。でもその比重が高すぎる、という話をしているのです。いまや火力ですら中国の高効率石炭火力が日本より安く作れるんですよ。ベトナムの「ブンアン2」は、お金を出しているのは日本なのに、建設される火力発電は中国になってしまいました。

要するに日本人は世の中が動いているのを自覚していない。「原発に反対する左翼はバカだ」という価値観はもう昔のものですよ。

【新田】そんなものですかね…。脱炭素への急な流れとか、欧米にルールづくりの主導権をとられて日本がそこに載せられただけのようにも思えて、「2050年CO2ゼロ」とか本当にできるのか、僕はまだ腹落ちできてないんですが…。ただ、好むと好まざるとに関わらず、世界のエネルギー動向をもっと巨視的に見ていなければとは思いました。

日本復活の鍵を握る!?「松坂世代」

【新田】僕は、2025年に団塊世代の方々が後期高齢者になってくると日本の中でも“世代交代感”が強まってくると予想しています。今回、SAKISIRUの読者層で想定している主要世代がアラフォー。いわゆる(プロ野球の松坂大輔投手など)「松坂世代」の1980年生まれがそうですね。

彼らは社会に出て一定の経験も積んで役職もつき始めてきた。一方で、学生時代にはインターネットが普及しはじめた時期の世代なのでデジタルへの感覚はネイティブ的にある。日本が復活していくかどうか、「世代交代後」の鍵を握るような気がしています。猪瀬さんは、これまで作家としてその時代、その時代に、いろいろな世代を見てこられていると思いますが、ロスジェネや今のアラフォーをどう見てますか。

サンサン/写真AC

【猪瀬】その前に、ロスジェネや松坂世代は、今年いくつになりますか?

【新田】「松坂世代」は今年41歳です。ロスジェネは、就職氷河期にあったいまの40代。今年46歳になる僕(1975年生)もそうですが、起業家でいえば、少し先輩が堀江(貴文)さん(72年生)、年下が家入(一真)さん(78年生)。

家入さんから数年下になる「松坂世代」もロスジェネの最後のほうです。一方、「松坂世代」より下の世代は、大学卒業時が小泉政権後期の景気がよかった頃なので就職は比較的スムーズでした。

【猪瀬】30代は40代ほどには苦労してないかもしれませんね。

「嫁ブロック」に負けていいのか

【新田】僕自身は同世代ということもあって、ロスジェネを応援したいという思い入れもあったのですが、社会に出てからの時代の変化の荒波に翻弄されすぎたため、巻き返しへのパワーが薄れ、起業などで「道なき道を切り開いていく」元気はなくなってきたと感じています。

ちょっと卑近な話で恐縮ですが、SAKISIRUの創刊にあたり資金調達しましたが、カネよりヒト集めに苦労しました。当初は大手メディアのアラフォーの記者、編集者に何人も接触して、乗り気だった方も複数いたのですが、「嫁ブロック」「親ブロック」で断念する人が相次いでしまって(苦笑)。

対談する新田編集長

もちろん僕自身の経営者としての力不足も大きいのですが、実際にスタートアップ経営をやってみると、人集めひとつとっても、やる気のある本人を家族が全力で止めにくるという、リスクを取って挑戦することのマインドにいかになっていないのか実感しました。結果的にはフリーランスの優秀な人材が集まってはくれたのですが。

【猪瀬】僕は学生時代、全共闘をやっていたから在学中は就職試験が受けられませんでした。卒業後に新聞社でも受けようと思ったら、当時は学生しか採用していなかったのです。大手は無理で、小さい会社に入れるかどうか。だから、フリーランスにならざるを得ませんでした。これもこれで結果オーライではあったのですが…。

【新田】あらためて、アラフォー世代に何か贈る言葉があるとしたら…。

【猪瀬】やっぱりお金も要りますが、人生は一回しかないのでチャレンジしないといけませんね。単純に言えば「テスラ買えよ。買えば分かるよ」、時代の当事者になれ、ということです。

【新田】ここでテスラですか(笑)。

【猪瀬】要は時代の変化を肌身に感じること。ガラケーからスマホに変わった時のショックと同じことが今、訪れてることに気づかないと新しい一歩は始まらないのです。

【新田】EVや脱炭素の是非は読者によってあると思いますが、少なくともデジタルシフトの世界的な加速や、そこから周回遅れになった日本が先進国の序列から転落しつつある現実を、そもそも認識してない人がまだ多いですよね。

最後に、そんなご時世にSAKISIRUが歩み出すにあたって、これからのメディアのあり方について話したいと思います。

撮影:武藤裕也

※#3(最終回)に続く。

 

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