創刊SP対談 猪瀬直樹さん #2 テスラを買えばわかる
アラフォー世代へ。「時代の当事者」になるには- 猪瀬さん対談#2は、エネルギーの地殻変動と世代論がテーマ
- 気候変動を引き合いに、世界情勢に疎い日本人の問題を考える
- 新しい一歩を歩むには?アラフォー世代に猪瀬さんが説く心掛け
SAKISIRU創刊スペシャル対談第1回のゲストは、猪瀬直樹さん(作家、元東京都知事)。「#1」では、猪瀬さんが学生運動を体験した時代の話を引き合いに、コロナ禍で日常が失われた「時間」を個人がどう活かしていくべきかを語られました。「#2」では、ポストコロナを模索する私たちを取り巻くエネルギーの世界的な地殻変動について語った上で、SAKISIRUの主要読者であるアラフォー世代に向けて、リスクを取って新たな一歩を踏む意義などを新田編集長と議論します。
エネルギーシフトに見る世界の構造改革
【新田】日本がここから立て直すにはどうすればいいのでしょうか。それなりに尖ってる人がリスクを取ってリーダーシップを取っていくしかないと思うんですが…。
【猪瀬】産業側も受益者側も、既得権に安住している「構造」を変えていかないといけないのです。その一例が電力の構造。発送電を分離する自由化はある程度進みましたが、送電網はいまなお既存の電力会社が握ったままです。これでは競争原理が働きません。

ヨーロッパは再生可能エネルギーに一気にシフトしています。イギリスは2030年までに全電力の30%を洋上風力発電にすると言い始めました。三菱重工は風力から撤退しましたが、(ヨーロッパの風力事業は)ドイツのシーメンスなど3社で寡占状態。イギリスの風力発電施設を訪れ、スケールの違いを感じるはずですが、高さが200㍍と、東京都庁クラスの巨大なものがブンブン羽を回しているのです。イギリスは再生可能エネルギー分野で、これから30年で100万人規模の雇用も作ろうとしています。
いちばん問題なのは、日本人が、気候変動でそうしたダイナミックな変化が起きているという意識がないことだと思いますよ。
【新田】ただ、イギリスの風力発電が成り立つのは強い偏西風という気象条件があるからとは言われています。日本の再生可能エネルギーへの投資が不十分だったのは事実なのでしょうが、「脱炭素」を進めるには、僕は原発をある程度残してベストミックスでやっていくしかないと思うのですが。また、原発は小型化に活路を見出そうとしています。

【猪瀬】小型原発がいま目の前にありませんし、今あるものはといえば柏崎がテロ対策不備で停止処分となったように、改めて動かせないことがわかりました。核燃料サイクルは破綻しています。別に原発を全部なくせとは言っていないのですよ。細々と技術を残して廃炉を進めていくしかないのでは。
原発も火力も残る。でもその比重が高すぎる、という話をしているのです。いまや火力ですら中国の高効率石炭火力が日本より安く作れるんですよ。ベトナムの「ブンアン2」は、お金を出しているのは日本なのに、建設される火力発電は中国になってしまいました。
要するに日本人は世の中が動いているのを自覚していない。「原発に反対する左翼はバカだ」という価値観はもう昔のものですよ。
【新田】そんなものですかね…。脱炭素への急な流れとか、欧米にルールづくりの主導権をとられて日本がそこに載せられただけのようにも思えて、「2050年CO2ゼロ」とか本当にできるのか、僕はまだ腹落ちできてないんですが…。ただ、好むと好まざるとに関わらず、世界のエネルギー動向をもっと巨視的に見ていなければとは思いました。
日本復活の鍵を握る!?「松坂世代」
【新田】僕は、2025年に団塊世代の方々が後期高齢者になってくると日本の中でも“世代交代感”が強まってくると予想しています。今回、SAKISIRUの読者層で想定している主要世代がアラフォー。いわゆる(プロ野球の松坂大輔投手など)「松坂世代」の1980年生まれがそうですね。
彼らは社会に出て一定の経験も積んで役職もつき始めてきた。一方で、学生時代にはインターネットが普及しはじめた時期の世代なのでデジタルへの感覚はネイティブ的にある。日本が復活していくかどうか、「世代交代後」の鍵を握るような気がしています。猪瀬さんは、これまで作家としてその時代、その時代に、いろいろな世代を見てこられていると思いますが、ロスジェネや今のアラフォーをどう見てますか。

【猪瀬】その前に、ロスジェネや松坂世代は、今年いくつになりますか?
【新田】「松坂世代」は今年41歳です。ロスジェネは、就職氷河期にあったいまの40代。今年46歳になる僕(1975年生)もそうですが、起業家でいえば、少し先輩が堀江(貴文)さん(72年生)、年下が家入(一真)さん(78年生)。
家入さんから数年下になる「松坂世代」もロスジェネの最後のほうです。一方、「松坂世代」より下の世代は、大学卒業時が小泉政権後期の景気がよかった頃なので就職は比較的スムーズでした。
【猪瀬】30代は40代ほどには苦労してないかもしれませんね。
「嫁ブロック」に負けていいのか
【新田】僕自身は同世代ということもあって、ロスジェネを応援したいという思い入れもあったのですが、社会に出てからの時代の変化の荒波に翻弄されすぎたため、巻き返しへのパワーが薄れ、起業などで「道なき道を切り開いていく」元気はなくなってきたと感じています。
ちょっと卑近な話で恐縮ですが、SAKISIRUの創刊にあたり資金調達しましたが、カネよりヒト集めに苦労しました。当初は大手メディアのアラフォーの記者、編集者に何人も接触して、乗り気だった方も複数いたのですが、「嫁ブロック」「親ブロック」で断念する人が相次いでしまって(苦笑)。

もちろん僕自身の経営者としての力不足も大きいのですが、実際にスタートアップ経営をやってみると、人集めひとつとっても、やる気のある本人を家族が全力で止めにくるという、リスクを取って挑戦することのマインドにいかになっていないのか実感しました。結果的にはフリーランスの優秀な人材が集まってはくれたのですが。
【猪瀬】僕は学生時代、全共闘をやっていたから在学中は就職試験が受けられませんでした。卒業後に新聞社でも受けようと思ったら、当時は学生しか採用していなかったのです。大手は無理で、小さい会社に入れるかどうか。だから、フリーランスにならざるを得ませんでした。これもこれで結果オーライではあったのですが…。
【新田】あらためて、アラフォー世代に何か贈る言葉があるとしたら…。
【猪瀬】やっぱりお金も要りますが、人生は一回しかないのでチャレンジしないといけませんね。単純に言えば「テスラ買えよ。買えば分かるよ」、時代の当事者になれ、ということです。
【新田】ここでテスラですか(笑)。
【猪瀬】要は時代の変化を肌身に感じること。ガラケーからスマホに変わった時のショックと同じことが今、訪れてることに気づかないと新しい一歩は始まらないのです。
【新田】EVや脱炭素の是非は読者によってあると思いますが、少なくともデジタルシフトの世界的な加速や、そこから周回遅れになった日本が先進国の序列から転落しつつある現実を、そもそも認識してない人がまだ多いですよね。
最後に、そんなご時世にSAKISIRUが歩み出すにあたって、これからのメディアのあり方について話したいと思います。

関連記事
編集部おすすめ
ランキング
- 24時間
- 週間
- 月間
革新的原子炉を日本に作ろう!新企業ブロッサムエナジーの挑戦
【参院選2022】泡沫のはずが大穴 !? 「参政党」議席獲得のサプライズあるか
報道されない“真実” !?「テレビを消す」が有効な節電法で再注目
「再エネの利用最大化を」小池知事の東電への要求にツッコミ殺到!
「AV新法」で業界は死活問題。それでもDMMがダンマリな背景
生稲晃子氏の政策アンケート「無回答」が炎上、川松都議「事務局責任者の処理ミス」
なぜ台湾TSMCは世界を席巻できたのか 〜「国策企業」成功の秘訣
上海電力で渦中の橋下氏、フジ『日曜報道』を「お休み」でSNS憶測
三菱UFJ、三井住友「ツートップ」絶好調の業績ににじませる危機感とは?
【緊急取材】今井絵理子議員“スピード落牛”のナゾ、主催者に話を聞いてみた
【参院選2022】泡沫のはずが大穴 !? 「参政党」議席獲得のサプライズあるか
革新的原子炉を日本に作ろう!新企業ブロッサムエナジーの挑戦
上海電力で渦中の橋下氏、フジ『日曜報道』を「お休み」でSNS憶測
「AV新法」で業界は死活問題。それでもDMMがダンマリな背景
“全裸監督” 村西とおる氏、AV許可制導入発言の立民・塩村議員に「やれるものならやってみろ」
報道されない“真実” !?「テレビを消す」が有効な節電法で再注目
マードックって何者?日本の新聞テレビ「25年前の岐路」
スルガ銀行に懲戒解雇訴訟で圧勝!代理人の倉持弁護士、第三者委員会のあり方に警鐘
UCC、セブンイレブン…コーヒー製品相次ぐ値上げの理由は「インフレ」だけではない
【緊急取材】今井絵理子議員“スピード落牛”のナゾ、主催者に話を聞いてみた
【参院選2022】泡沫のはずが大穴 !? 「参政党」議席獲得のサプライズあるか
「AV新法」で業界は死活問題。それでもDMMがダンマリな背景
明石市・泉市長のツイートが話題、NHK放送中止の不可解
上海電力で渦中の橋下氏、フジ『日曜報道』を「お休み」でSNS憶測
勇者か愚者か…“日銀潰し”に挑むヘッジファンドが話題、藤巻健史氏「ついに出てきた」
全国初「太陽光パネル税」に総務省から“待った”、太陽光発電のそもそもの問題点とは
重信房子元最高幹部の出所“歓迎”ムードに、駐日イスラエル大使「愕然としました」
安芸高田市長にヤッシーが喝!田中康夫氏「やり方が下手っぴ。頭でっかちな偏差値坊や」
NHKが映らない“テレビ”に続いて、今度はホームプロジェクターが人気!
革新的原子炉を日本に作ろう!新企業ブロッサムエナジーの挑戦