ロシアが日本のEEZ内にミサイル訓練。岸田新政権は断固とした姿勢を!

国際的に宣布すべき、ロシア3つの「悪行」
2021年10月07日 06:00
元航空自衛隊情報幹部
  • ロシアが日本海でミサイル射撃を伴う軍事演習を計画。海保が航行警報を発表
  • 軍事力による「ミリハラ」。背景に、日本と南北朝鮮との「大和堆」での摩擦
  • ロシアや中国は修羅場に介入する狡猾さ。新政権に断固とした姿勢を望む

ロシアは、今月初め、4日から9日にかけてミサイル射撃を行うとして、わが国EEZ(排他的経済水域)内の好漁場である「大和堆」を含む日本海の北西部に広範囲な訓練海域(エリア)を設定した。太平洋艦隊のHPによると、5日には日本海で太平洋艦隊の艦艇が巡航ミサイルを迎撃する対空ミサイル(SAM)などの発射を行った模様であるが、細部の海域は不明である。この後、5日夜9時になってロシアはこのエリアをクローズし、新たに7日から9日の日程で、わが国EEZを外す形で隣接した広範囲なエリアに再びミサイル射撃エリアを設定した(下記図面参照)。

出所:海上保安庁サイト「水路通報・航行警報位置図

ロシアによる「ミリハラ」

ロシアが、この「大和堆」を含むわが国EEZ内にこのような訓練海域を設定したのは、これが初めてではない。本年7月7日から9日にかけても、同様のエリアを設定したことがある。それまでロシアは、日本海のわが国EEZを演習海域などに含めることはなかった。

このことからも分かるように、今になってわが国の「大和堆」にまでロシアがエリアを拡大しなければならない必要性は全くないはずだ。今年から同エリアを含めるようになったのは、わが国に対する明白なミリタリーハラスメント(ミリハラ:軍事的な嫌がらせ)である。なぜ、ロシアはこのエリアでこのような行動をとるようになったのだろう。そのヒントを探るには、2018年にまで遡らなければならない。

発射訓練の模様(ロシア軍太平洋艦隊HPより)

発端は北朝鮮の「漁獲戦闘」

北朝鮮の金正恩委員長は、2011年の就任当初より、畜産・農業と並んで漁業を重視していたが、2014年の新年共同社説で、金正恩最高司令官が「漁獲戦闘を力強く展開せよ」という主旨の命令を発出したことが掲載されたことで、「漁業は戦闘であり軍事行動に等しい」という位置づけとなった。

これ以来、北朝鮮は軍部隊も投入し、わが国のEEZである「大和堆」周辺海域にまで北朝鮮の漁船が押し寄せるようになり、毎年漁期になると北朝鮮の不法操業を排除しようとする海上保安庁や日本漁船との間で小競り合いが頻発するようになっていった。そして、2018年10月と11月には、海上保安庁の巡視船が北朝鮮漁業船団の大型鋼船に体当たりされて破損するという事案が連続して発生した。

大和堆海域で北朝鮮漁船を放水で退去させる海保巡視船(2017年12月、海保撮影)

ちょうどこの頃、このようなわが国海上保安庁と北朝鮮漁船との激しいやり取りを察知したのか、北朝鮮との関係改善に執念を燃やす文在寅(ムン・ジェイン)政権下の韓国海洋警察庁の警備艦がこの海域に現れるようになり、11月20日には、根室漁協のいか釣り漁船「第85若潮丸(184トン)」が、韓国の警備艦から「操業を止めて海域を移動せよ」との無線交信を受けた。この無線を確認した日本の海上保安庁は、韓国の警備艦に対してEEZ内でのこうした要求は認められないと通告し、この警備艦は立ち去ったが、この1か月後の12月20日、同海域で韓国海軍駆逐艦による海上自衛隊哨戒機への「火器管制レーダー照射事案」が発生したのである。

この事案は、北朝鮮の漁船を救助している(この意図は不明)韓国警備艦とこれを護衛していると見られる韓国海軍艦艇が、これらの動きを確認しようと近づいた海上自衛隊に火器管制レーダーを照射したものであり、防衛省が公表した当時の海自哨戒機内の映像から、韓国海軍の駆逐艦は海自哨戒機を排除する目的でこれを使用したものと筆者は確信している。

この日韓の軍事的摩擦事案によって、この「大和堆」は、中ロを含む関係国の軍事的重要関心地域となるに至ったのである。

修羅場に介入する狡猾なロシア・中国

このように「大和堆」周辺の好漁場は、竹島を不法占拠する韓国もEEZと主張するなど、文在寅政権の反日政策の影響もあって、北朝鮮と韓国がこの海域におけるわが国の権益を脅かす状態となっている。挙句の果てに、日韓の間で軍事的な摩擦まで起きるような事態となってしまった。ここに、ロシアは目を付けたのである。

日本と韓国がレーダー照射事案で「やった、やらない」と批難合戦がヒートアップしていた2019年1月17日、ロシア海軍の哨戒機(Il-38)がこの「大和堆」周辺を哨戒飛行していた(防衛省HP報道資料31.1.17)。また、この1か月後には、ロシア空軍の戦闘機を随伴した爆撃機(Tu-95)がこの海域周辺から日本へ接近し、日本側の領空沿いに北上する示威行動を行った(防衛省HP報道資料31.2.15)。

Tu-95爆撃機(統合幕僚監部 報道発表資料より)

ロシアは、この海域の日韓の揉め事に介入することで、わが国に対しては「ロシアを敵に回すとこの海域で北朝鮮と韓国に味方に付く」と威嚇し、韓国に対しては「わが国と組むならば、日本海における韓国の権益を後押しする」と誘惑しているのである。つまり、日韓の関係悪化に付け込んで、韓国を日米から引き離し、日本を北東アジアで孤立させようという狙いだ。そしてこれは、中国との利益とも合致する。

2019年7月以降、日本海で中ロ爆撃機が共同で哨戒飛行するようになったのも、このような動きに中国も加わり始めたことを示している。

ちなみに、新型コロナの発生以降、「大和堆」における北朝鮮の漁船は激減(新型コロナの影響と推定)し、代わりに中国の漁船が急増している状況にある。これも、中国の国策の一環である可能性があり、今後注意深く見守る必要があろう。

岸田新政権に断固とした姿勢を望む

わが国の政府もメディアも、北朝鮮がミサイルを発射すれば直ちにこれが、「EEZ内に落下した」とか、していないとかで(臨時ニュースを流したりして)大騒ぎをするが、EEZ内におけるミサイル射撃演習というのは、単にミサイル弾頭が1~2発落下するのとは比較ならない桁違いの暴挙である。

公海上とはいえ、「大和堆」が好漁場でこの漁期を考えると、実際にこのエリアでミサイルを発射するかしないかに拘らず、海上保安庁がここを「航行警報」エリアに指定した時点で、わが国の漁業従事者に与える被害ははるかに深刻である。なのに、どうして各メディアはこれをトップニュースで報じないのだろう。政府も、北朝鮮のミサイル発射時のように、総理が記者会見で「このような海域でミサイル射撃演習を行うなど言語道断である」と言ってロシアを非難しないのだろう。

岸田首相は毅然とした外交姿勢ができるか(官邸サイトより)

このような、ダブルスタンダードは周辺国に誤解を与えるとともに、相手国になめられて軍事挑発をさらにエスカレートさせ、この地域を不安定化させることに繋がる。

最近の度重なる北方四島での軍事演習や、日本海や太平洋における爆撃機や戦闘機の領空接近などのミリハラにも鑑みると、状況に応じて駐ロ日本大使を召還するなども考慮すべきではないか。今後のさらなる挑発に備えて、経済的な報復も検討しておいた方が良いだろう。そして何よりも、今こそ、

  1. わが国がポツダム宣言を受諾する直前に(これを見越して)相互不可侵を定めた日ソ中立条約を破ってわが国に侵攻し領土を略奪したこと
  2. この戦闘などで捕虜となった日本軍の兵士らを57万人以上も抑留し、極寒のシベリアで強制労働に就かせ、この一割強となる5万8000人もの捕虜を死に至らしめたこと
  3. 略奪し不法占拠を続けている北方四島を、最近になって合法的に占領したものだと(旧ソ連の明らかな交際法上の不法行為を)正当化するデマゴーグを繰り広げていること

などを国際的に宣布する好機である。

ここで毅然とした対応をしないと、中国も同様の行為に出る可能性がある。南西域でもEEZ内で中国がミサイル演習を行うようになれば、わが国はもう北朝鮮に対してEEZ内にミサイルが着弾しても何も文句は言えなくなるだろう。これで抗議をしても、「中ロには何も言えないくせに」と、馬鹿にされるだけだ。

岸田新政権は、発足したばかりではあるが、国内の事情にかかわらず国際情勢は一刻も予断を許さない。緊張感をもって、しかるべき対応をして頂くことを強く望む。

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