関西スーパー争奪戦「大どんでん返し」あるか、“空白の15分”に何が?

「棄権」が「賛成」に…舞台裏の謎、法廷で審理へ
  • 関西スーパーの経営権争いが異例の法廷バトルへ。H2Oとの統合が覆る可能性
  • 僅差での議決だったが、「棄権」が「賛成」に切り替わっていたことが判明
  • 株主が知らない舞台裏、議決がひっくり返った「空白の15分」に焦点

関西スーパー(本社・兵庫県伊丹市)を巡り、エイチ・ツー・オーリテイリング(H2O、同・大阪市)とオーケー(同・横浜市)が経営権を争ってきた問題は、10月29日の臨時株主総会でH2O傘下企業との統合を認め、H2O側に一度軍配が上がるも、よもやの「延長戦」に突入した。

Lowell Silverman /Wikimedia Public domain

オーケー側によると、延長戦のきっかけは総会の“行司”にあたる検査役を務めた弁護士が裁判所に提出した報告内容だった。通常、検査役から裁判所への報告は総会後40日ほどで「緊急的になされたこと自体が極めて異例」(オーケー)という。

これにより、僅差での議決の決め手となった一株主の投票が当初「棄権」とみなされたのが、投票締め切り後、統合案に「賛成」に取り扱いが変わっていたことが判明した。この1票の取り扱い変更前の時点では、検査役が「否決」で確認していたといい、オーケーは9日、「議決権行使に疑義がある」として、統合差し止めの仮処分を神戸地裁に申し立てた。仮に司法判断で票の取り扱いが覆れば、経営統合案は白紙に戻るという「大どんでん返し」になる前代未聞の事態になる。事の大きさに主要紙でも日本経済新聞が9日付の朝刊一面で掲載する力の入れようだった。

検査役が報告した異変

問題の投票は、総会当日の13時40分ごろから、議場を閉鎖してマークシート方式で実施。同55分ごろ、マークシートを回収し、集計作業は14時ごろから行われた。オーケー側が報告書に基づいて公表したリリースによると、集計作業はその約50分後に終え、検査役も14時57分ごろ、賛成比率が65.71%と、有効比率の約66%にわずかに達せず、「否決」と確認していたという。

これに対し、関西スーパーは9日、「実際には、15時の段階では当社による集計作業は完了していなかった」として検査役やオーケーに事実誤認があると反論した(指摘を受けて検査役は15時10分ごろに修正)。ただ、事実経過の相違として具体的に公表したのはこれのみで、検査役の報告では、15時ごろに議長から集計が間に合わず、非常に僅差で慎重を期すため16時まで休憩時間の延長をアナウンスした。

「異変」が起きたのは15時30分ごろ。一株主が賛成するつもりだったがマークシートを白紙で提出したためにその取り扱いを確認したいと受付に申し入れがあったという。その約15分後、議場に戻っていた検査役に関西スーパー側から「別室で話したいことがある」と要請があり、場所を変えて報告を受けると、その時点で関西スーパー側は、白紙(棄権)を賛成として取り扱うことにしたと事後報告したという。結局、16時10分ごろ総会は再開し、66.68%の僅差で議案が可決されたことを議長が報告した。

※画像はイメージです(mbbirdy /iStock)

株主が知らない舞台裏で…

関西スーパー側は9日、票の取り扱いを変えた理由について公表しているが、これによると問題の株主は

  1. 投票用紙に記入を行わなかったものの、投票用紙の回収の際に、議案全てで事前に行った賛成の意思表示のとおり議決権行使をする意思を回収担当者に対して述べていた
  2. 当日受付に提出した職務代行通知書に本議案に全て賛成の意思表示をする旨を記載していた
  3. 事前に提出していた委任状及び議決権行使書においても本議案について全て賛成の意思表示をしていた

といい、これらを総合的に考慮して「賛成」票と判断したという。

一方、オーケー側は外部の弁護士や専門家に聞き取りした上での見解として、「上場企業における公正な株主総会の運営の在り方として、投票を締め切った後に特定の株主の投票内容のみを自社に有利に変更させること自体決してあってはならない」などと主張。関西スーパーの反論に対しても「全ての株主からの投票を締め切った後に特定の株主の投票内容を議長自らの説明に反して取り扱いを変えたことにより、一旦確認された「否決」が「可決」に覆されたという事実は何ら変わらない」と譲らない。

事実経過を巡るわずかな差異はあるようだが、総会当日、集まっていた株主に対して関西スーパーが票の取り扱いを変更した経緯の説明はなかったことも確かだ。問題の株主が名乗り出てから、検査役に報告するまでの「舞台裏」の空白ともいえる約15分の間に、何があったのか--。

「投票を締め切った以上は、議長自身が議場で説明した通り「棄権」として取り扱われるべき」(オーケー)なのか、「取扱いの適法性に何らの疑義もない。むしろ、株主の投票に際しての意思表示の内容を無視して集計をすることが会社法に反する」(関西スーパー)のか、法廷の審理に委ねられることになる。

 

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