「バイデンは操り人形」イーロン・マスクが大統領をdisった背景

民主党政権、露骨な労組支援がもたらす複雑

テスラ株の売却が日本でも注目されているイーロン・マスクCEOだが、バイデン政権との緊張も強まっている。マスク氏は今月1日、ツイッターでバイデン大統領を名指しで「puppet(操り人形)」と評する投稿をした。気鋭の起業家が一国のトップを公然とdisる異常事態の背景には、労働組合を巡る激しい対立がある。

バイデン政権と与党・民主党は、米国内の自動車工場で生産された電気自動車(EV)の購入者に対し、4500ドルの控除を行う法案について、労組を結成している自動車メーカーのみを対象に限るという露骨な優遇措置を見せている。事実上、労組組織を擁するビッグスリー(GM、フォード、クライスラー)を念頭にしたもので、UAW(全米自動車労組)に加盟していないテスラやトヨタ自動車などはこれに反発している。

マスク氏がバイデン大統領をdisる投稿が飛び出したのはこの流れだ。非公式アカウント「テスラファクト」が10月末、4500ドル控除の問題点を指摘したのに対し、マスク氏は「バイデンはUAWの操り人形だ(Biden is a UAW puppet)」とのリプライを送った。

テスラは急成長の裏で数年来、労働争議にも直面してきた。トランプ政権時代の2017年には、増産体制によるプレッシャーを訴えた従業員が賃上げを要求し、労組結成の動きに繋がってマスク氏が反発。2018年には「なぜ無駄な組合費を払い、ストックオプションを放棄するのか」という投稿が物議を醸し、米労働当局からマスク氏に対し削除命令が出たこともあった。

EV推進をはじめとする「環境」「脱炭素」が、日本では政治的にリベラル派との親和性があるように思われがちだが、利害関係が絡み出して複雑な構図になっている。

マスク氏は9月にも、バイデン政権を「友好的な政権ではない。労組にコントロールされているようだ」と酷評。テスラは昨年からテキサス州で工場建設を進めているが、10月には本社機能もカリフォルニア州からテキサス州に移す意向を表明した。テキサス州は共和党地盤でおなじみ。規制緩和や優遇税制を進める“共和党の州”で生産したEVを、カリフォルニアのイノベーティブ・環境志向のリベラルな民主党支持層の住民が乗り回すという皮肉な展開まで指摘されはじめている。

 

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