親子を断絶する「DV支援措置」謎ルールが生む3つの“バグ”
冷蔵庫のプリンを勝手に食べたらDV !?- DV支援措置制度は被害が事実か確認する仕組みがなく親子断絶を助長している面
- 現行制度は緊急対応を優先し、被害の真偽は確認せず。嘘でも住民票が守られる
- 捜査もされていない「加害行為」を根拠に、子どもを「加害者」扱いする例まで
夫婦の離婚時に子どもと一緒に家を出る「連れ去り別居」で、ある日突然、配偶者と子どもがいなくなる。そこから、相手方から身に覚えのないDVを申し立てられ、行政から住民票の写しなどの交付に制限がかけられ、相手方と子どもの居所がわからなくなってしまう。暴力や不貞などしていないのに、自分の子どもに何年も会えない。数多くある「実子誘拐」のパターンだ。
前回の「『実子誘拐』解決を阻む『でっちあげDV』の深層」でも述べたが、その中で、本来、深刻なDVの被害者を守るため、加害者に被害者の住民票の写しや戸籍の交付を制限する「DV支援措置制度」が、実子誘拐や親子の断絶を支援してしまっている構造がある。

DV支援措置制度では、その「被害」を捜査、検証する仕組みがない。一方的に「加害者」とされた人たちからは、「いくらでも悪用できるザル制度」と指摘されている。その理由といえるいくつかの制度上の疑問点を紹介したい。
被害を受けたと主張すればDVに
東京都内に住む40歳代のKさんは、妻が子どもを連れて別居し、子どもの行方も分からなくなったため、市役所で相手の住民票を請求したが、窓口で「(DV支援措置の)加害者として制限がかけられているため、出すことはできない」と言われた。いつのまにか身に覚えのないDVの加害者にされ、「いったい何を根拠に請求を拒否できるのか」と首をかしげる。
Kさんの離婚訴訟では、相手方の陳述書に「取っておいた冷蔵庫のプリンを許可なく食べた」、「インスタント食品を買ってきて、目の前で『おいしい』と食べた」(自分の手料理はおいしくないと遠回しに伝えている精神的DVに当たるという主張)などと書き込まれていた。
「支援措置がかけられた根拠もこのようなことなのだろう」とKさんは推測する。第三者から見れば「そんなことでDVになるの !?」と驚くようなことも、認められてしまう。
支援措置に携わる、某市の職員によると、今の制度では、本当に被害に遭っている人を緊急で守るために、「自分が被害を受けた」と主張する人を守ることを優先しており、本人の主張が本当であれ嘘であれ、その住民票を守ることになっているという。「被害者」が被害を主張すれば、その真偽が確かめられることなく、相手方を加害者に仕立て上げられるその運用で、「加害者」にされた側にとっては、周囲から犯罪者のような目で見られたり、子どもに会えなくなったりするなどの深刻な「被害」を産んでしまっている。
弁護士に依頼すれば取得できる
さらに、制度の実効性に疑問が生じるおかしな点がある。
総務省の公式ページには、「加害者からの依頼を受けた第三者からの住民票の写し等の交付等の申出に対し交付・閲覧をさせることを防ぐため、請求事由についてもより厳格な審査を行います」とある。
しかし、たとえばKさんの場合、弁護士に依頼して住民票の交付請求を行った場合、弁護士は依頼者の氏名を明らかにしなくても良いことが住民基本台帳法で保障されており、Kさんは弁護士を通じて住民票の写しを入手することができるのだ。

DV支援措置で子どもの居場所が分からなくなるなどした当事者が、支援措置制度の改善を目指して各自治体を訴える訴訟も、約10件が数か月に1件ずつ連続して提訴される予定で、動き出している。
その中でも、弁護士に依頼すれば住民票を取得できるのであれば「行政が住民票を不交付処分にする意味がない」ものとして、この不交付処分自体が住民基本台帳法に違反する違法なものだ、という主張もなされている。この点も、裁判所がどのように判断するのか注目したい。
自分の子どもも「加害者」に
そのDV支援措置訴訟リレーのうち1件では、高校生の女の子も原告となっている。両親の離婚後、少女は母親と一緒に住んでいたが、母親からの心理的な虐待を受けて、父親の元へ逃げた。
母親は、父親の元に逃げた少女に会おうとすることはなく、母親と少女との接点がほとんどないままで2年が過ぎていった。
2年が経過し母親は裁判所に少女との面会交流調停を申し立てたが、皮肉にもその調停の調査報告書や審判書に、母親による虐待的行為が詳細に記載されたことで、母親の虐待行為が裁判所に認められる形となった。
その調停の申立書には、母親の住所が記載されたまま父親と少女の手元に届いた。この時点では、支援措置はかけられていなかったということになるが、その後、父親が別の調停を申し立てるために母親側の住民票を交付を申請したところ、支援措置がかけられていることが判明。同時に、「加害者」として少女にも支援措置がかけられていた。
父親は、「(娘が)主張する虐待行為を裁判所が全面的に認めており、(母親側は)とにかく被害者側になるため支援措置をしたのだろうと思います」という。
もし、母親側がDVからの緊急避難的に、住所を知られないように支援措置をかける必要があるのだとすれば、少なくとももっと早い段階でかけていたはずである。また、「会わせてくれ」と面会交流を申し立てた相手である少女を加害者として支援措置をかけていること自体、「DV被害者を守る」という本来の意味で制度が使われているとは考えられない。
きちんと捜査されたわけではない「加害行為」を根拠に、配偶者だけでなく子どもや祖父母も「加害者」扱いし、役所での住民票交付申請も拒否されてしまうDV等支援措置制度。こうした制度的な“バグ”が放置されたままでは、本当に緊急性のあるDV被害者も救えないのではないか。おかしいと思うのは、「加害者」にされてしまった人だけではないはずだ。
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