岸田首相「成長戦略に」高市氏「中国リスク警戒を」…経済安保シンポで何が語られたか
小林経済安保相、注目の法案の方向性示す- 岸田首相、小林経済安保相らを招き、都内で大型の経済安保シンポジウム
- 岸田氏は成長戦略とのつながり、小林氏は法案の3つの方向性を示す
- 高市氏は対中国に踏み込んだ発言。有識者が経済安保の論点深掘り
12月3日、都内で「第1回 防衛・経済安全保障シンポジウム『我が国の経済安全保障上の重要課題と先端テクノロジーで切り拓く未来』」が開催された(共催: 株式会社レイヤーズ・コンサルティング・TMI総合法律事務所、後援:内閣官房国家安全保障局(NSS)、一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)、日本経済新聞社、協賛:KDDI 株式会社、富士通株式会社、森ビル株式会社)。
岸田首相、小林経済安全保障担当相、高市自民党政調会長など政府与党の要人に加え、官僚、経済人、アカデミアなど幅広い知見を持つ専門家が集まり、深い議論が交わされた。
経済安保が成長戦略にもつながる

最初に壇上に立った岸田首相は、北朝鮮や中国の脅威をあげるとともに、経済活動と安全保障は不可分であるとし、日本だけでなく世界で機微技術に対する流出の防止が進められていると指摘。「経済安全保障は喫緊の課題」と経済安全保障の観点の重要性を強調し、官民からの投資を呼ぶことで岸田総理自身が掲げる「新しい資本主義」政策にも影響する成長戦略に繋がりうる、と述べた。
小林経済安保担当相が示す3つの柱とは

また岸田政権で新設された経済安全保障担当大臣のポストに就いた小林鷹之氏は、22年に国会への提出が予定される経済安全保障関連法案に関して3つの方向性を示した。
- 過度に外国に依存しない「自律性」の確保
- 日本の産業や技術においてどの分野がこれから世界と戦うために必要かを見極めたうえでの「優位性」と、日本が国際社会にとってなくてはならない存在になるための「不可欠性」の確保
- 日本の国際的地位とプレゼンスを高め、ルール形成に関与すること
さらに現在検討されている「特許非公開」についても、「特許が基本的に公開とされているのは日本のほか、メキシコとアルゼンチンくらい。他の国は安全保障上といった制約を、一定程度、つけている。イノベーションを阻害してはならないが、技術を守る仕組みも必要」と述べた。
民間企業に対しては「国際安全保障というと規制が増えるのではないかという報道も見かけるが、そうではない。ビジネスは自由。一国に閉じこもっていいものが生まれる時代ではない。それぞれの強みを育成し、オープンイノベーション時代の経済活動に励んでほしい」と呼びかけた。
高市氏「海外研究者の身元調査の徹底を」

高市政調会長は「対中」にかなり踏み込み、中国の会社法や国家情報法の特徴をあげながら、「中国企業とのかかわりの中でさらされる経営や情報管理上のリスク」を指摘。中国の「会社法」と「共産党規約」により、社内に中国共産党の党員が3名以上いる場合、「基層組織」という党の組織の設置が求められる。こうした「基層組織」に経営判断を乗っ取られた日本企業の在中国の子会社の例を示した。
また、何よりも問題なのは「日本発の技術が、中国などに流出して日本を攻撃する兵器に使われること」だとし、中国の「国防七校」と言われる学術機関への警戒を述べるとともに、海外(特に中国)からの研究者に対するスクリーニングの必要性を強調した。
米国の対中戦略の失敗が現状を招いた

小林経済安保相、高市政調会長に先立ち、特別講演を行った谷内正太郎初代国家安全保障局⻑は、米中対立という国際社会の大きな流れから現状を説明。アメリカが中国に関与し、中国を国際社会に関与させることで成長と民主化を促す「エンゲージ戦略」が失敗に終わったと指摘し、対立が激化する米中の狭間における日本の立ち位置について、あるべき姿を示した。
「超大国を目指すのでもなく、かといって世界の片隅でひそやかに暮らす小国になるのでもない。国際社会で相応の役割を果たすべきであり、日米同盟重視はもちろんだが、深い経済関係を持つ日中関係も細心の注意を払いつつ、米中双方との関係を両立させていかなければならない」
グローバル市場で「経済安保」を実現するには
シンポジウムでは政治、民間企業、研究機関と幅広い人材が登壇し、基調講演やパネルディスカッションを行ったが、これ自体、「経済安全保障」の概念が国際政治から企業内の対応に至るまで、非常に広い範囲にわたることを示している。
またディスカッションでは、古川俊治参議院議員(自由民主党科学技術・イノベーション戦略調査会事務局長)が、現在から将来のイノベーションや研究開発は先端技術になればなるほど「国際化」や「世界のために」という動機で伸びてきたと指摘。経済安全保障はこれにある意味逆行する「非現実的」なものであり、「国単位で技術や研究を囲い込めるのか」と述べる一幕もあった。
どのように情報流出を防ぎつつ、グローバルな経済市場や研究分野で成果をあげていくのか。国家の自律性だけでなく、民間企業や研究機関にも担当部署や、それぞれの基準や何を重視するのかという戦略的見通しが必要になりそうだ。
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