2022年は「ツケ払い」の年…日米金利差拡大で、円、株、日本国債の市場に激震か

【展望2022】「ヤマ場」はいつか?テーパリングの本当の怖さ
経済評論家、元参議院議員

2022年は、為替,日米長期金利、日本株市場に激震が走ると思っている。米株は大きな動きの可能性はあるが激震とまではいかないかも。

FRBは昨年12月15日の会合でテーパリングのペースを倍増すると決定し、2022年の利上げ見通しを前回の1回から3回に引き上げた。この決定ではマーケットには大きな動意が見られず、一部論者は、「マーケットは、すでにFRB の決定、見込みを織り込み済みだ」と解説しているようだ。私はそのように楽観的にはなれない。2022年は、世界的に、この10年間と全く逆向きの金融政策が取られると思われるからだ。

fatido /iStock

日銀、“禁じ手中の禁じ手”の末…

景気低迷、デフレ進行に対処するために、日銀はまずは金利をゼロ%まで引き下げた。それにも関わらず景気/デフレ状態が改善しないので、非伝統的と言われる量的緩和を導入した。金融世界では、過去にハイパーインフレを起こしたがゆえに、“禁じ手中の禁じ手”といわれた手法である。

この異次元緩和とは正式には「異次元の量的・質的緩和」と日銀が命名した政策だ。量的緩和とはお金をばらまくこと。質的緩和とは、かっては購入しなかった10年債を中心とする長期国債の購入を始めることだ。しかも市場のモンスターと言われるほどに爆買いをした。これにより日銀は人為的に長期金利を押さえつけはじめたのだ。

FRBも日銀に比べれば、かなり穏健ではあるものの、同じ経緯を経て量的緩和を進めてきた。しかし、最近インフレに対する国民の不満が急速に高まってきており、バイデン米大統領もかなり気にし始めた。FRB自身も必要性を強く感じ始めたのかインフレ対応政策へと変換した。あらゆる物価指標が、39年ぶりの高水準とは軽々しく考えるべき事態ではないからだ。

金融緩和に終止符を打ち、インフレ対応策を採用するとなると、今までのオペレーションとは真逆のことをしなければならない。①量的緩和の進行停止->②ばらまいたお金の回収->③ゼロ金利政策を解除して利上げを開始。ところが12月に発表したインフレ対応策では②の開始時期を未定としている。パウエルFRB議長がFRBの保有資産を減らす「量的引き締めについては、まだなにも決まっていない」と述べたとおりだ。

「テーパリング」の正確な意味

多くのマスコミがテーパリングを(量的緩和縮小)と誤訳するので、マーケットが「3月には量の緩和に関しては終了」と誤解してしまっているようにも思える。しかし、実際は3月に訪れる「テーパリングの終了時」こそが、量的緩和のピークなのだ。

「テーパリングの開始」とは量的緩和の加速度を緩める決断でしかない。登山の際、空気が薄くなってきたので登山スピードを落とすという決断。今日現在はハアハアゼイゼイしながらも微速前進で登山をしている状態なのだ。テーパリングの終了である3月になってやっと微速前進は終わる。すなわち山頂到着、量的緩和のピーク到着なのだ。

パウエル議長(Federalreserve公式flickr

FRBはいまだ「満期が来た国債すべてを買い替える」との方針を貫いている。だから新規購入スピードを落としたところで、その分バランスシートは膨れ続ける。3月になって、初めてばらまかれるお金がそれ以上は増えない状態になる。そこから、どこかの時点で下山が始まる。パウエル議長が、まだ決めていない、と言ったのはこの下山を開始する時期だ。激震が走るのはこの時だ。この決定時の激震は、利上げ時よりよほどに衝撃が強いだろう。

FRBは2015年から2018年まで「0.0%~0.25%」から「2.25%~2.5%」への利上げを数度に渡って行った。この時、最初は、緩和と逆の順番どおりのオペレーションを予定していた。すなわち先に書いた①―>②―>③の順番の逆だ。テーパリング完了のあと、売りオペでばらまいたお金を回収し、その後に利上げに入るとの筋書きだった。買いオペで資金をばらまいてきたのだから売りオペで資金を回収する。回収し終われば非伝統的金融政策からの脱却になる。その後に、本来の伝統的金融政策に戻る。すなわち利上げのはずだった。

ところが売りオペをすると長期債マーケットが大崩れする(=長期金利急騰)との危惧が出て、「売りオペ」ではなく「満期待ち」政策に変更した。満期が来た保有国債の再投資をしないという政策だ。穏健な資金吸収法だが、10年国債だと10年たってやっと資金が回収(=バランスシートが縮小)出来る悠長な政策だ。完了までに時間がかかる(=完了まで、ばらまかれたお金が世間にじゃぶじゃぶ状態)。利上げと同時平行で「満期待ち政策」が行われた。

前回の引き締め時には、「売りオペ」による資金の回収が無かったから、長期国債の需給に大きなギャップは生じず、長期債市場は、それなりに平静を保った。インフレ懸念などなかったときだからこそ、悠長な政策が取れたのだ。

インフレ放置なら「日銀、どうした」の怨嗟

ところが今回はインフレ懸念が非常に強まっている。前回のような悠長な政策はとれないだろう。「満期待ち」の代わりに「売りオペ」で資金回収を図る可能性が大だと私は思う。

今年3月以降、どこかで急ピッチの下山が始まるということだ。登山から急ピッチの下山へでは景色が様変わりするだろう。今年3月までは供給され続けた資金が、3月以降、急速に回収されて行くのだ。これは利上げよりもよほどに市場、特に米長期債市場へのインパクトが強烈だと思う。

12月17日、金融政策決定会合後に記者会見する黒田総裁(日銀サイト)

一方、金利が上昇すれば債務超過になってしまう日銀は、長短金利とともに円金利の引き上げが出来ない。結果、日米金利差拡大でドル高/円安の進行。輸入インフレで日本でも急速にインフレが加速していく。日銀がインフレに対応しようとすれば日銀が債務超過に陥り、日銀と円の信用失墜、ハイパーインフレになってしまう。インフレを放置すれば「日銀、どうした」の怨嗟の声だ。それ以上にインフレが加速する事態を抑えられなければ日本売りが始まるという大問題が起きる。いずれにしても日本円、株、日本国債の市場に激震が走る年になると予想する。

これも放漫財政を放置し、財政破綻の先送りのために財政ファイナンスという禁じ手中の禁じ手に手を染めてしまったツケといえる。

この政策ミスによる悲劇を避けられないのなら、個人としてはドル(以上述べてきた理由により長期債の購入は避ける)や暗号資産を買って少しでも衝撃に備えるのが賢明だと私は思うのだ。

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