児童手当・10万円給付だけじゃない!所得制限への子育て世帯「怒りの本質」

加藤梨里『共働きマネタイズ〜 子育て費用 どうかける?どうかせぐ?』第3回
ファイナンシャルプランナー(CFP®)、健康経営エキスパートアドバイザー
  • 高所得者が10月から児童手当ゼロが先日話題。富裕層でない“高所得者”の問題
  • 所得制限は、児童手当や10万円給付以外も。医療費や保育料の負担増も
  • 年収約1,000万円以上は奨学金も借りられない
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コロナ対策の10万円給付や、今秋の児童手当特例給付の改正など、このところ高所得層への子育て補助が次々と制限されています(参考拙稿「高所得者は10月から「児童手当ゼロ」に!共働き世帯の対処法は?」)。

親が高所得であっても子育てにかかる経済的負担は決して軽いものではなく、子育て世帯からは所得制限撤廃を求める声があがっています。

しかしながら、政府は慎重な姿勢を続けています。加えて2月には、ツイッターで声をあげたユーザーを野田少子化担当大臣がブロックしたと報じられ、子育て世帯には失望感が広がっています。

実は所得制限は10万円給付や児童手当だけでなく、ほかにも複数の子育て支援制度に設けられています。その多くが年収1,000万円前後を補助対象のボーダーラインとしており、それ以上稼ぐとさまざまな経済支援から外れやすくなります。どんなダメージがあるのか、所得制限のある子育て制度をまとめました。

医療費補助にも所得制限

子どもの医療費は、国の公的医療保険により6歳まで自己負担2割、小学校就学後からは3割とされています。多くの地域ではここに都道府県・市町村による補助が加わり、中学生や高校生までは医療費負担がゼロになるか、自己負担があっても1日や1カ月での上限額までに大幅に抑えられるしくみがあります。

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しかし、補助の範囲は地域により異なり、所得制限のある自治体もあります。厚生労働省のまとめによると、通院の医療費に所得制限を設ける都道府県は47中28。該当する場合も、市町村のほうに所得制限がなければ補助されますが、こちらも1,741市町村中242、全体の約14%は所得制限を設けています。

参照:(厚生労働省)令和2年度「乳幼児等に係る医療費の援助についての調査」について

所得制限の基準は地域や家族構成によりますが、たとえば神奈川県横浜市の場合、夫婦がフルタイムの共働きで子ども2人(扶養親族2人)なら所得616万円です。会社員なら年収換算で840万円程度。夫婦のどちらかがこれを超えると、3歳以上の子どもの医療費は2割または3割負担になります。

参照:横浜市ホームページ「小児医療費助成」

子どもの医療費助成は近年、所得制限を撤廃する自治体が増えており、東京都23区にはすでに所得制限はありません。しかし所得制限のある地域では、年収1,000万円に満たなくても医療費の補助を受けられないケースがあるわけです。

保育料も高所得者の負担大

こちらは所得制限というわけではありませんが、認可保育園や幼稚園の保育料も高所得者ほど高くなっています。現在、3歳児以上の保育料は無償化されていますが、2歳児までは所得に応じた保育料が設定されています。認可保育園の場合、国の基準では住民税額(所得割)が397,000円以上の世帯は所得の最上位に区分されます。

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家族構成による前後はありますが、これは年収ベースで1,000~1,200万円相当にあたります。保育料の所得の判定は世帯単位ですので、夫婦共働きなら年収が夫600万円・妻500万円でも所得区分が最上位になる可能性があります。

ここに該当すると、保育料は国の上限基準で月に約10万円。実際には基準を元に市区町村が区分や料金の設定をするため、ここまで高くないこともあります。高所得者の多い都心では月2~4万円程度のところもありますし、年収が2,000万円、3,000万円とさらに高所得でも、保育料が月10万円にはならない地域も多いようです。(なお、2歳児クラスまでの2人目の保育料は半額、3人目以降は無料で、こちらには所得制限はありません。また、市町村によっては独自に2人目以降から保育料を無料にしている地域もあります。)

参照:内閣府・文部科学省・厚生労働省「子ども・子育て支援新制度ハンドブック(平成27年7月改訂版)」 

高所得では奨学金も借りられない

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親の所得で子どもへの補助が制限されるのは、幼いうちだけではありません。大学などの進学時に利用する奨学金も、高所得世帯には使いづらくなっています

国内の学生の約4割が借りる(※1)という日本学生支援機構の貸与型奨学金は、子ども本人の学力とあわせて家計収入が選考基準になります。家族構成や進学先が国立か私立か、自宅から通うか一人暮らしかにより細かな収入基準額は上下しますが、親が会社員の場合はおおむね年収1,000~1,500万円以内が選考対象とされています。

(※1)

貸与型の奨学金は学生本人の名義で利用し、卒業後には本人が返還するものです。しかし親の収入が高ければ借りられません。一方で、大学の在学費用平均額は国立でも年間104万円、私立では150万円以上というデータもあります(※2)

仮に親の年収が1,000万円とすると、手取りは800万円弱。ここから学費を全て負担すると残るのは650~700万円ほどです。生活スタイルによるものの、これで家族全員の生活費をまかなうのは、可能ではあっても都市部ではゆとりはないはずです。弟・妹が私立の中学や高校に通っていれば、その学費を考えるとカツカツでしょうし、まして親が老後資金を貯蓄する余裕はほとんどないかもしれません

(※2)日本政策金融公庫 ~令和3年度「教育費負担の実態調査結果」

高所得でも富裕層でない「落とし穴」

つまり子育て世帯の年収1,000万円は、制度上では高所得に区分されても、富裕層とまではいきません。自力で家計を回していくことはできても、贅沢はできない。昨今の所得制限撤廃を求める声は、そんな微妙な生活水準にある人たちが、稼げばあらゆる支援を受けられなくなることへのやりきれなさが垣間見えます。

そもそも、子どもを育て、家庭を維持しながら稼ぐことは、収入の多寡にかかわらず言葉では言い尽くせぬエネルギーを要します。

成長するまでの約20年という壮大なプロジェクトを抱えながら、どのように仕事を両立し、どのように家計を支えていくのか。

そして子どもが一人前になった後、年金だけで暮らせない老後を自力で生き抜くにはどのようにキャリアを積み、稼いでおくか。

所得制限レベルの収入を維持し続けるのか、撤退して補助をもらうのか。

….働く子育て世代は、多かれ少なかれそんな迷いを抱えているはずです。そういった機微への配慮が不十分なままに支援から除外されれば、不満を抱くのも無理はないのです。

ファイナンシャルプランナー(CFP®)、健康経営エキスパートアドバイザー

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