「軍事研究絶対反対!」の学術会議が“白旗”、梶田会長「単純に二分することはもはや困難」

GPSもネットも軍事技術だが...
ライター/SAKISIRU編集部

1949年の設立以来、軍事目的の研究に一貫して反対の立場を取ってきた日本学術会議(梶田隆章会長)がこれまでの方針を大きく転換したようだ。

27日付けの読売新聞によると、小林鷹之内閣府特命担当大臣(科学技術政策、宇宙政策)に宛てた文書の中で、軍事と民生の両方に活用できる技術の研究と、軍事に無関係な研究とを「単純に二分することはもはや困難」とする見解を示したという。

東京・六本木の日本学術会議(編集部撮影)

自民佐藤氏、安堵の一方で懸念も

学術会議の方針転換に、自民党佐藤正久参院議員は、「何を今更感もあるが、やっとだ」と安堵していたものの、さらなる懸念も指摘していた。

何を今更感もあるが、やっとだ。ただ各大学等の現場までどうやったら徹底するのかは不透明。反自衛隊の学長や理事長の元では厳しい現状継続も

同じく公明党矢倉克夫参院議員は「軍事転用できる民生技術が非常に発達」とツイートしていた。

いまはAIや量子など軍事転用できる民生技術が非常に発達(スピンオン)。日本がこの技術分野で自律性や不可欠性を高めることは、無秩序な利用を規律するルールづくり主導のためにも重要。

一般ユーザーの多くも今回の学術会議の方針転換に賛成のようだ。ツイッターでは、次のような反応が目立った。

今頃遅いが やらないよりまし 国を守る為の学術会議にしないと

当たり前だろう。日本の技術革新の足を引っ張っていた要因のひとつ。

あまりにもこれまでの認識が甘過ぎたし遅きに失するが大学側も防衛省からの資金提供への応募を禁止する内規を撤廃すべき。

また、「中共の軍事研究への参加・協力は認めるが、防衛省への協力は断固反対を貫いてきたのに、今になってどうした?って言いたくなりますね。」といった皮肉をツイートするユーザーも。

GPSもインターネットも元は軍事技術

梶田隆章会長の見解通り、科学技術の急速な進歩により、軍事目的の研究と民生技術の研究とをはっきりと分けることは困難だ。

たとえば、カーナビやスマートフォンに搭載されている全地球測位システム(GPS)で利用されているのは、もともとは米軍が軍事用に開発したGPS衛星だ。アメリカはこのGPS衛星を全世界に対して無償で提供することとしたために、民間旅客機や船舶、カーナビなどに利用されるようになった。

GPSもネットも元は軍事技術(grinvalds /iStock)

また、インターネットの原型が、米国防省が1960年代に開発した軍事用のネットワーク「ARPANET」であることは有名な話だ。今や、インターネットやGPSなしには、社会は成り立たないと言っても良いだろう。

福島第一原発の事故の際にいち早く現場の状況を把握したのは、米軍の高高度滞空型無人偵察機。その後、現場に投入されたのは米国iRobot社の軍事用ロボットだった。

反対に、民間用で開発されたものが軍事利用されるケースも少なくない。未来工学研究所研究参与で、国際安全保障学会会員の西山淳一氏が執筆した論文「防衛技術とデュアルユース」によると、米軍の原子力潜水艦の中で使われているパソコンは、パナソニックの「タフブック」シリーズ。このシリーズは特に軍事用に開発されたものというわけではないが、その頑丈さから米軍で採用されているという。

平和・安全保障研究所理事長の西原正氏は2017年5月の産経新聞への寄稿文で、防衛装備庁の研究制度に懸念を示す声明を発表した学術会議に対して、次のように批判していた。

大学の研究者の中には、自国の平和と安全を願い、防衛技術の向上に貢献したいとの意欲を持つ人がいる。日本学術会議の声明はそういう研究者の「学問の自由」を奪い、結果として日本の防衛の弱体化に貢献している。

今回の学術会議の方針転換は、日本の科学技術力、ひいては防衛力にどのような影響を与えるか。

【追記29日】日本学術会議は27日の定例記者会見で、読売新聞の報道について軍事目的の研究についての立場に変更はないことを強調した。これについて読売新聞は28日、社説で「今回の見解について、学術会議は『考え方を変えたわけではない』と説明しているが、政府は『前向きに評価したい』と歓迎している。学術会議があえてこうした認識を示したのは、国との対立が長引いていることもあるのだろう」との見方を示した。

その上で読売社説は「日本の安全保障環境は悪化している。政治と学術界が対立していては、変化に対応できない。学術会議は見解だけでなく、先端技術の研究への協力など、具体的な行動を示してもらいたい」と注文した。

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