経産省の「平和ボケ」が招きつつある今冬のエネルギー危機

なぜ日本は天然ガスの備蓄がこれほどまで少ないのか
人間経済科学研究所 代表パートナー(財務省OB)
  • ロシアと豪州のLNG輸出規制の動きで、日本のエネルギー危機が現実味
  • 経産省は電力会社やガス会社に対して備蓄を要請するも、容量がもともと小さい
  • 新潟県や民間が気化LNGの地下貯蔵を提案するが、経産省が門前払いの過去

ロシアの天然ガス供給削減が欧州だけでなく、日本にも大きな影を落としている。

G7の財務大臣は9月2日のオンライン会合で、ロシア産原油価格に上限を設けることで合意したが。これに対してプーチン大統領は、そのようなことをする国には原油も天然ガスも石炭も一切売らないと脅している。このためG7の一員としてこの合意に賛同した日本は、LNG(液化天然ガス)輸入の約9%を占めるロシアのサハリン2からの供給が止まることを覚悟しなければならない。

オンラインで行われたG7財務相会合(9/2 財務省ツイッターより)

また、供給が止まる可能性はサハリン2ほど高くはないが、日本がLNG輸入の約4割を依存するオーストラリアでは、LNGの輸出規制の可能性が急浮上している(SAKISIRU関連記事)。ロシアから天然ガスの供給を削減された欧州諸国が世界中でLNGの調達に狂奔する中でオーストラリアからのLNGの輸出が増え、オーストラリア国内のガス不足が懸念されるようになったためだ。

オーストラリア競争・消費者委員会は8月、政府にLNGの輸出規制を検討するように勧告した。このため西村経産相は9月2日、G20エネルギー移行相会議の際にオーストラリアのボーエン気候変動・エネルギー相と会談して日本側の懸念を伝えた。

欧州の危機は他人事ではない

もし日本がこの冬に十分なLNGを確保できないと電力やガスの供給に支障が出るので、ロシアからのガスの供給が削減された欧州諸国の状況は他人事と言ってはいられない。欧州諸国は必死だ。世界中からLNGを調達する一方、この冬の需要の高まりに備えてガスの備蓄を急いでいる。

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人間経済科学研究所 代表パートナー(財務省OB)

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