「慶応の甲子園応援騒動」バズりまくっても複雑な心境のワケ

創刊以来「最多タイ」の勢いも...

8月24日に掲載した村井裕一郎さんの寄稿「みんながモヤモヤ、慶応高の甲子園応援騒動、その“違和感”の正体」が掲載から2日間で、SAKISIRU創刊以来「最多タイ」とも言える大反響となりました。

コメント欄も27日7時時点で500件を超える書き込みがありました。この反響もこれまでにないものです。記事への賛否が割れていること、「当事者」である慶応の関係者(慶応高卒業生、保護者に加え、大学の卒業生など)と思しき発言が多いことも今回の特徴です。

iStock

この記事は慶応大OBでもある村井さんが決勝翌日にFacebookに投稿しているのを私(新田)が見かけたのがきっかけでした。応援問題への関心が多かった中で慶応OBならではの考察として非常に興味深く思い、SAKISIRUでの転載を依頼。不特定多数が読むように少し加筆いただいて掲載しました。原稿をお寄せいただいた村井さんにまず感謝しております。

また、お読みいただいた皆さま、コメント欄で実のあるご意見を書き込んでくださった皆さまにも御礼申し上げます。

記事がある程度の反響を呼ぶことは想定していましたが、正直なところここまでになるとは予想を大きく超えていました。SNSで議論が過熱した応援騒動を巡っては、慶応高野球部OBのTBS井上貴博アナウンサーがラジオ番組で「選手にその矛先を向けるのは違う」と涙ながらに反論する事態にも発展。社会的な関心事として大きくなり始めたタイミングでの掲載だったことが記事をお読みいただいた理由なのは間違いありません。

村井さんの考察への賛否は別にして、皆さまの関心事にお応えするコンテンツをお届けできたことはメディアを運営する側として冥利に尽きることです。しかし、X(旧ツイッター)でも述べたように、手放しで喜べる状況とも言えず、複雑な心境なのが率直なところです。

その理由は大きく分けて2つあります。

国の停滞の裏返し?

まずは社会的な理由です。慶応の関係者とそれ以外の人たちの間での心理的な「距離」が相当隔絶されていることが過熱した要因だと考えます。村井さんが指摘するように「地方都道府県代表選の文脈が、急にカレッジリーグの文脈に塗り替えられた違和感」もそうでしょう。

東京・三田の慶応義塾大学(mizoula /iStock)

さらに視点を広げれば、Xで一部から指摘されるように、文武両道の名門が、「髪型自由」をはじめのびのびとしたプレースタイル(昔からなんですが)で勝ち進み注目されたことで、ある種の「格差社会」的な嫉妬に火をつけた側面もありそうです。SNSは良くも悪くも民主的であり、「庶民の本音」が剥き出しになる装置です。

昨今、自民党議員による海外視察旅行や特定業界との癒着が大炎上したのも、国が長期停滞し、個人は給料が上がらず、増税や社会保障負担が増えるばかりという惨状が底流にあるのは間違いありません。もともと出る杭を打つ傾向が強い日本社会なので、話題の性質がポジティブ・ネガティブ問わず目立ってしまうと騒ぎになりやすい構造になっています。

グーグル依存の現実

そして複雑な受け止め、2つ目の理由は内向きの話です(恐縮です)。今回の記事がバズってもSAKISIRUの経営に大きな恩恵があるというわけではないことです。

社会的な関心事に応える記事を出したことで反響を呼べたのは事実です。ただ、この大多数の読者を招くことができたのは自力では全くなくて巨大プラットフォームが「導線」となったからです。それも日頃の愛読者が多いX経由ではありません。検索状況をもとにGoogleが皆さまの関心事を探し、Google Discoverなどで「おすすめ表示」されることで「送客」いただいたからでした。

シリコンバレーのGoogle本社(JHVEPhoto /iStock)

今回の記事はサブスクに入れず、どなたでも無料でお読みいただけるコンテンツでしたが、数十万の読者が来訪された大半はSAKISIRUの存在も初めて知ったことでしょう。リアルの店舗ビジネスであればそれをきっかけに顧客との接点が生まれビジネスの発展につながることがありますが、残念ながら今回もバズった記事の読者の99%はそのままお帰りになられています

プラットフォームに依存する情報流通の構造ではこれが現実で、あの週刊文春ですら寄付を募り始めているくらいですから、改めて現実の厳しさを痛感しています。(おそらくこの記事も今回バズった記事よりケタが4つ違う程度にしか読まれないと思います。自力で集客できないということはそういうことです)

生き残りへ最終局面

皆さんもご承知の通り大手新聞社も含めて日本のネットニュースメディアはYahoo!ニュース経由のアクセスに大きく依存しています。そのYahoo!ニュースにSAKISIRUは配信できておりません(理由は色々ありますが、今回は控えます)。このため収益が全く上がらず有料制に切り替えましたが、以後、苦境に陥っているのは愛読者の皆さまのご承知の通りです。関係者、愛読者から「バズってよかったね」とお祝いいただきましたが、社会的にもビジネス的にも手放しで喜べないのはそういう事情でありました。

最後にSAKISIRUのサブスク会員をはじめとする愛読者の皆さまへ。今春の経営危機に際してご寄付をいただき、新たにサブスクにも入会いただき、さらには共同親権で訴えられた際には訴訟費用もカンパいただき、改めて心よりの感謝の思いです。この5か月どうにか生きながらえてきたのは皆さまのご尽力の賜物です。

裁判は長期化が必至で、大スポンサー獲得に向けた交渉も道半ばです。経営的に綱渡りの状況は続いております。共同親権問題、減税と規制改革、週刊文春による人権侵害報道などなど「世の中ではマイナーであっても切実な声」の場として皆様から託された思いが「最後の砦」です。

なんとかこの状況を打開すべく、水面下で色々動いておりますが、明けない夜はないと信じて突き進むしかありません。サブスク会員、愛読者あってのSAKISIRUです。引き続きお力添えのほどいただけたら幸いです。

(SAKISIRU編集長   新田哲史)

【追伸】大変ありがたいことに最近また「ご寄付」を申し出てくださる方がおられ、心強く思います。下記のcodoc社の「サポート」もしくは弊社口座になります。いただいた費用はSAKISIRUの運営費、外部執筆者の原稿料、訴訟費用等に充てます。

PayPay銀行  店番号:005(支店名:ビジネス営業部)

普通  口座番号:6460909

株式会社ソーシャルラボ

 

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