財産隠し、子ども連れ去り「指南」…世田谷区の女性向け離婚講座に非難の嵐

区議会でも追及

東京都世田谷区が9月に離婚を考えている女性向けに法的なアドバイスをする講座を開催したところ、講師の弁護士が参加者に対し、別居に備えての“財産隠し”とも受け取れるような発言をしたり、親権獲得を希望する参加者にも別居時に子どもを連れて出るように指南したりする内容がネット上に流出、SNSで非難が巻き起こり、与野党の国会議員も批判。区は6日の区議会で弁明に追い込まれた。

問題になった講座のおしらせ(世田谷区サイト)

「別居する時に一緒に家を出て」

問題になっているのは、区立男女共同参画センター「らぷらす」で9月9日と16日に開催された「離婚をめぐる法律・制度活用講座」。講座は9日が法律編、16日が制度編の2部構成で、このうち9日の内容について参加者が録音した内容が物議を醸した。

X(旧ツイッター)にアップされた音声によれば、弁護士が「別居時点の真ん中が財産分与の対象になりますので、別居時までに余裕がある方はちょっとずつ減らしておくことだが、減らし方に気をつけていただきたい」と注意した上で、別居前1年分の口座が財産分与時の開示対象となることから「減らす時にはちょこちょこ減らす」と“助言”。別居前に夫に使途を尋ねられた場合でも「ごまかせるようにしていただく」などと発言している。

さらに、子どもの親権についても単独親権制の日本では、裁判所が継続性の原則を重視することから、「離婚後に親権者になりたい場合は、必ず別居するときにお子さんと一緒に家を出てください」と呼びかけていた。

あまりにも露骨な内容に、ネット上では「財産隠しや子どもの連れ去りを指南しているのではないか」との非難が噴出した。

実子の連れ去りを巡っては、警察庁が今年3月、「重大な被害に発展するおそれもある」として被害届の対応に「遺漏なきを期されたい」と各都道府県警に通達するなど捜査当局も厳しく注視している。ただ今回の指南が違法と言えるかは微妙のようだ。

弁護士でもある自民の三谷英弘衆院議員はXで「コレは僕の知っている実務と同じです」と指摘した。ただ、裁判官が“利用されている”との見方を示し、「完全に舐められているようにしか聞こえません」との感想を述べた上で、 「自らの『裁判官の良心』に照らして、本当にこれで良いか考えるきっかけにして頂けたら幸いです」とコメントした。

政治家女子48党の浜田聡参院議員も自身のYouTubeチャンネルで、法的な観点についてSNSで意見を募集した結果として、「残念ながら刑事罰についてはちょっと厳しいのかなという意見が大半だった」と述べたが、「倫理的な問題が挙げられる」と指摘した。

区はサイトでお詫び

一方、当事者の世田谷区は、6日の区議会で追及された。維新の稗島進区議が音声内容をもとに弁護士が発言した口座資金の移動に関して「離婚後の財産分与のためのテクニックを指南しているように受け取れる」と指摘し、講座内容についてただした。

世田谷区議会(PhotoAC)

区は人権・男女共同参画課長が答弁し、DVや搾取などに悩む女性の参加を想定した講座内容だったと説明。「講師には離婚届の記入や提出、離婚の際に決めておくこと、親権や財産分与、調停や裁判、弁護士の選び方などについての説明を依頼し、講座への参加をきっかけに必要な相談や支援につながることを目的に実施した」と講座の趣旨を説明した。

その上で、「ご指摘の不適切な行為を助長するような内容が含まれていたとの指摘については真摯に受け止めまして、今後の講座の選定、講義内容の設定、講師の選定に当たって十分に考慮し、より良い講座運営に努めてまいりたい」と述べた。

また「らぷらす」の公式サイトでもこの日、「受講生のみなさまに誤解が生じないよう、あらためてご説明とお詫びをさせていただきたく」などのおしらせを掲載した。

 
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