「相互依存の武器化」とは?大国間の覇権争いで変質する経済的ネットワーク

佐々木れな『国際問題:リアルとセオリーの結節点』#19
ジョンズ・ホプキンス大学博士課程在学
  • 米中対立を背景に変質する経済的ネットワーク、「相互依存の武器化」とは
  • インターネットやSWIFT、中国の5G通信網構築…これらの動向を示す理論
  • 大国間競争で歯止めなき「相互依存の武器化」。行くつく先のリスクとは

この連載の目的は、今世界で起きている国際問題を、国際政治学の理論やフレームワークで説明することである。理論やフレームワークは、今起きている国際問題の複雑な情報を構造化し、論理的に思考する一助となる。

第19回は、グローバルな相互依存関係、特に経済的相互依存関係ネットワークがいかに武器化され、アメリカが中国との対立を優位に進めるためにどのように利用しているか分析する。

Guillaume /iStock

国際関係論の「相互依存」とは?

エマニュエル・カントを始祖とする国際関係論におけるリベラリズムでは、①民主主義、②貿易をはじめとする経済相互依存関係、③国際機関の存在、が国家間の紛争をより困難にすると主張する。

リベラリズムを研究のテーマとしてきたイエール大学のブルース・ラセット教授は、1886年から2001年の国家間紛争のデータをもとに統計分析を行い、GDPにしめる貿易割合が高いほど、軍事紛争の発生確率は減少すると主張している。この考え方に基づけば、米中の相互依存的な経済関係が両国間の衝突を抑止するという見方がある。

相互依存の武器化

しかし、このような伝統的な相互依存の理解とは裏腹に、アメリカは過去何十年にもわたるグローバリゼーションが構築した相互依存を武器化しているという研究が注目を集めている。

この記事は会員限定です。ぜひご登録いただき、続きをお読みください。サブスクなら読み放題です。政治家、論客をお招きするウェビナーもご参加いただけます。

 
ジョンズ・ホプキンス大学博士課程在学

関連記事

編集部おすすめ

ランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

人気コメント記事ランキング

  • 週間
  • 月間

過去の記事