玉川徹氏謝罪も虚しく…テレ朝飲み会騒動で再燃「電波オークション」待望論

前日には日経が“肩透かし”社説掲載
  • テレビ朝日の社員らが飲み会をしていた騒動で玉川徹氏が番組で謝罪
  • 折りも電波オークションについて関心が再び高まっていた時期
  • 新聞協会は電波オークションに反対声明。総務省の報告書案の中身は?

テレビ朝日のオリンピック番組を担当していた社員やスタッフ10人が、閉会式当夜の8日夜から9日未明にかけて打ち上げ名目の飲み会を渋谷のカラオケ店でしていた問題は、国民の共有財産を預かる放送事業者としての自覚が問われる事態だ。事案が明らかになった翌日11日には、「モーニングショー」で玉川徹氏が番組内で謝罪したが、当然のことながらネット上では「自粛を呼びかけていたテレビ局の人間がこんなことをしていたのが本当に信じられない」と言った非難の声が渦巻いた。

東京・六本木のテレビ朝日本社(編集部撮影)

テレ朝にとってはバツの悪いことに、ネット民の「電波オークション」への関心が再び高まり始めていた矢先だった。総務省が7月に公表した「デジタル変革時代の電波政策懇談会」の報告書案の中で、

オークション制度については、透明性や迅速性の確保などにつながる一方、落札額が高騰し、落札者の事業運営に支障が生じるおそれ(インフラ整備が遅れる懸念、利用者料金高騰の懸念など)、事業者間格差拡大の懸念があるなど、メリット・デメリットもある。

などと言及した。かなり慎重な物言いだったにも関わらず、日本新聞協会はオリンピック真っ只中の2日、この報告書案に対する意見書を発表し、電波オークションについて

小規模な放送事業者が資金不足から応札で きず、結果として地方における情報発信の担い手が減少することにもなりかねないと考える。 放送の根幹をなす「多元性・多様性・地域性」の原則を損なうものであり、結果として憲法が 保障する国民の「知る権利」をも損なうことにつながる。

などと強烈なアレルギーを示した(太字は編集部)。特に「知る権利」を持ち出したことがネットで話題になり、「報道しない権利を行使して本来報ずるべき事をスルーしてきた人たちがなにを言うのか」「自分たちの『利権が損なわれる』ことにつながる危機感」などと逆に批判されることになった。

さらに問われる電波の有効利用

一方で、テレビ嫌いの右派系ネット民などが誤解しているが、電波オークションが実現しても既存の放送事業者から直ちに電波を取り上げる可能性は乏しい。そもそも電波には限りがある中での有効利用が近年問題になってきたのは、テレビ局の「偏向報道」ではなく、IoTやドローン、自動運転などの実用化による利用急増というテクノロジー進化が要因だ。楽天が風穴を開けようとしている携帯電話の3社寡占体制に見られるように、周波数の有効利用は、通信がメインの話になっている。ただ、楽天が再配分を強く求めてきた周波数帯は「プラチナバンド」と呼ばれる、繋がりやすい帯域だ。放送局がここを有効に利用しきれていないとの指摘は以前からある。

今回の総務省の報告書案は、電波の有効利用を促すためにいくつか踏み込んだ点はある。既存の免許事業者がいる周波数帯に参入を希望する事業者が出た場合には「競願」し、どちらが有効に利用するか比較審査する仕組みを整備する方向性が示された。また時間帯によって複数の事業者が利用時間をシェアする「ダイナミック周波数共用」の活用も記載された。

テレ朝の飲み会騒動が明らかになる10日、日経新聞は朝刊で「電波の有効活用でデジタル化の加速を」と題した社説を掲載し、上述した内容を解説するとともに、報告書案について「電波利用の既得権化を防ぎ、競争を促す方向性は評価したい」と前向きに評価した。ただ、電波オークションについての言及はなく、ツイッターでは「プラチナバンドまで持ち出しといてこんな肩透かしな内容とは…」と物足りない声も。

いずれにせよ、テクノロジーの進化とともに電波の利用がひっ迫し、有効利用が問われるほど、放送事業者の電波利用について国民が関心を高めていく流れなのは間違いなさそうだ。国民の共有財産を使う事業者としての適格性もさらに問われそうだ。

 

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