SBI vs. 新生銀行、新聞各社の論調くっきり。日経はイケイケ、朝日はお約束の…

スクープの読売は国の本音「代弁」
2021年09月16日 06:00
  • SBIによる新生銀行へのTOBが明らかになって1週間。新聞各社の論調に差異
  • 初報をスクープした読売は国の本音を「代弁」。日経は社説でTOBを歓迎
  • 朝日はそもそも地銀改革に後ろ向き批判的?毎日、産経は?

SBIホールディングスが新生銀行に対するTOB(株式公開買い付け)が明らかになってから1週間が経った。新生銀行側は買収防衛策を講じはじめており、15日午後にはソニーグループをホワイトナイトに打診しているとも報じられた。銀行を舞台にした買収合戦に発展した場合、日本では初のケースとあって注目を集める中、新聞各社のスタンスに差異も見えはじめている。

tang90246/iStock

読売は前向き?日経は歓迎

SBIが9日の株式市場終了後、新生銀に対する電撃的なTOB攻勢を発表する直前に、電子版でスクープしたのは読売新聞だった。その読売は15日までの時点で社説は掲載していないが、SBIだけでなく金融庁関係者にも事前に取材していた成果をもとに、「「総合金融」目指すSBI、銀行は不可欠のピース…省庁OB招き周到準備」と題した、背景を探る記事を掲載。そこでは新生銀が株価低迷で、長銀時代からの公的資金を返済できない事態の突破口として、国が「本音」では期待している向きをにじませている。

読売は、金融庁の関係者を複数取材しており、「TOB合戦によって新生銀の経営が混乱しないよう注意する必要がある」と釘をさす幹部の言葉も添える一方で、「多額の公的資金を抱えた新生銀行の企業価値を上げられるのはSBIくらいではないか」と歓迎する関係者の言葉も紹介するなど、どちらかといえば前向きに捉えている節がある。

そして、読売よりも今回のTOBについて旗幟を鮮明に歓迎したのが日本経済新聞だ。15日の朝刊で「TOBを新生銀の新たな成長の起点に」との題で社説を掲載。書き出しから「あらかじめ同意を得ずにTOBを仕掛けるのは、日本の金融界では極めて異例だ」と指摘した上で、「新生銀の成長に向けたシナリオを描き直すきっかけにしてもらいたい」とSBIの仕掛けを実質的に歓迎した。

日経は元々地銀の再編論に前向きな姿勢を見せている。7月にも「地銀の将来像を問い直したい」とする社説を載せており、「収益が先細る厳しい環境をいかに乗り越え、どのように地域の社会と産業に貢献していくか。そのためには何が必要とされるのか。すべての地方銀行の経営者に改めて考えてほしい。そして速やかに行動に移してもらいたい」と問題提起していた。SBIが新生銀を買収し、近年進めてきた「地銀連合」の中核的存在に据えることで活性化することへの期待を寄せていそうだ。

SBIホールディングスの北尾吉孝社長兼CEO(写真:ロイター/アフロ)

朝日は「反・地銀改革」

読売や日経と距離を置いているのが朝日新聞だ。朝日は11日朝刊に掲載した「SBIの提案、市場好感 政府は売却に慎重 新生銀TOB」というクローズアップ記事で、読売が「代弁」した国の本音を打ち消すかのように書き方で展開。

新生銀に公的資金を注入した国も、預金保険機構と整理回収機構を通じて約22%の株を持つが、現段階での売却には慎重とみられている。

ある政府関係者は「普通に考えれば、TOBに応じることはありえず、国以外の株主がどう判断していくかだ」と話す。麻生太郎財務相も「税金を投入している以上、債権保全の意味からも預金保険機構などとよく話をしないといけない」と慎重姿勢を示す。

などと、ネガティブなトーン一色で、新生銀行が株価をあげられず、公的資金を返せなかった現経営陣の問題には触れていない。ただ、朝日は8月下旬、SBIの北尾吉孝社長へのインタビューを行っており、掲載がTOB公表後になるという「奇遇」もあって北尾氏をクローズアップ。野村証券を経てソフトバンク入りし、SBIを創業、近年の「第4のメガバンク構想」に至るまでの経緯を紹介する一方で、「急拡大の組織、ほころびも」と題し、グループ会社の業務停止命令の話にも言及するなどお約束の“disり”も忘れない。

そもそも朝日は元々、地銀改革の動きに冷ややかな論調だった。菅政権が地銀再編を主要政策の一つとして力を入れはじめた矢先の昨年11月、外部有識者の匿名コラム「経済気象台」で、「地銀再編は今必要な政策か」と、タイトルからして全否定気味だった。SBIグループの積極攻勢にも朝日は良い印象を抱いていない可能性がある。

毎日と産経

毎日新聞は15日までに社説や、ポジションを明確にする解説は掲載していないが、9日のTOB発表直後にデジタル版で配信した「SBI「第4のメガバンク構想」の核に新生銀か TOBの背景」では、買収に至る経緯を淡々と解説。読売と朝日で見解が分かれた国側の本音については、

監督する金融庁幹部からは、今回のTOBについて強く否定する声は聞かれていない。長年の懸案だった新生銀行に注入された公的資金が意外な形で返済されるシナリオが生じたためだ。ある証券アナリストは「金融庁には止める理由はなく、どちらかというと歓迎しているのでは」と指摘する。

などと、間接的なトーンで、国側がTOBをポジティブに捉えているような書き方に抑えていた。

産経新聞はSBIがTOBを仕掛けた要因について、「菅首相退陣が引き金か」と題した記事で、銀行関係者のコメントをもとに「地銀再編を後押しした菅義偉首相の退陣で、機運が低下する前に実現の道筋を描きたかったのではとの指摘もある」などと独自の見方を交えていた。

前代未聞のTOB劇、新聞各社の論調も意識して報道を見てみると、より興味深くウォッチできそうだ。

 

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