「2.4GHz帯」はドローンが有事に使えない !? 日本の政治がいまやるべきこと

【ドローンと電波:後編】ドローン愛好家の研究者としての提言
明治大学POLARIS研究員、POLARIS-DUT(軍民両用・融合技術研究ユニット)代表

前編では、ウクライナがロシアとの戦いで民生用ドローンを活用したようなことは日本でも可能なのか、海外からの輸入ドローンは、日本の電波法に合わせた仕様にされ、電波の帯域の違いから性能が劣化するといった「ドローンと日本の電波制度」に実情に触れた。

さて、ここでウクライナに供与されるとされる自衛隊が所有していた民生用ドローンに話題を戻そう。自衛隊が普段使用している民生用ドローンについても例外なく電波法に適合した無線技士免許不要の2.4GHz帯の電波のみを使用する日本仕様の機種である。訓練の動画を見ても数百mの範囲で目視飛行を行っているのが確認できる。

vadimrysev /iStock

有事に“使えない”「2.4GHz帯」

では、そんな機体がウクライナで役に立つのか?といえば、日本で行うと違法になる恐れがあるので詳細には触れないが、実は本体とプログラムに少し改良を加えることで5Ghz帯での使用が可能になることから同様の手法を経て、もしくは更に改造されて使用されていると考えるのが現実的である。

一方でウクライナでの活用方法を見ると、森の茂みや建物の中に身を隠しながらドローンのカメラから送信される映像をコントローラーのモニターやコントローラーとリンクされたスマホの画面越しに見ながら操縦している。これを自衛隊が送るとしたドローン及び日本で販売されている同型の機種で出来るのかと言えば、出来ないこともないが、答えは限りなくノーに近い。個人的には怖くて出来ない。この点は上記の5HGz帯と2.4GHz帯の送受信速度や強度の比較でご理解いただけると思う。

多少なりドローンを操縦する立場から言えば、2.4GHzの電波から送信されるカメラ映像のみを見ながらの操縦は映像の遅れによって操作も遅れることに繋がり、特にマニュアル操縦に限ってはリスクが伴うのは自身の経験からも言い切れる。

そもそも日本でドローンの飛行に関する規制を定めた航空法では、原則として目視外いわゆるカメラの映像だけを見ながらの操縦は禁止されている。しかし身を隠して映像だけを頼りにドローンの操縦を強いられるウクライナの状況を見れば、有事の際には規制だ何だと言ってられないのは明らかである。

いま日本で有事が起きたら…

ここで考えてみて欲しい。もし日本で災害等の有事が発生してウクライナと同じように海外のメーカーがドローンの提供を申し出た場合のことを。

警察や自衛隊では人手が足りない。「ドローンで捜索や被害の状況を把握するぞ!」となったら無線技士免許保有者やドローンレーサー限定で有志を募るのか?

21年7月、静岡・熱海市の土砂災害の捜索救助活動で出動した陸自ドローン(防衛省・自衛隊ツイッター

それともアマチュア無線の免許取得を目指して講習会やオンライン講座で勉強して試験を受けて、合格しても免許付与までは約1か月掛かるが、それを強いるのか?

仮に5GHz帯ドローンの使用及び目視外飛行を有事に限ってOKしたとして、それまで規制で縛ってきたことをいきなり本番で出来るのか?

無線技士免許を持つドローン愛好家の端くれとしては、今の日本でそのような状況に陥ったとしても素直に手を貸せるのか?事実、5GHz帯の電波を使用して3.5km飛ばせるドローンを持っていてもそのような距離の飛行を規制が阻む。私とて経験がないことを、いきなり本番で出来るか?と言われると、非常に悩ましいのが率直なところだ。

とにもかくにも、日本と海外のドローン事情の差は平時にこそ改善する方向で動き出してもらいたい。政府の掲げるドローンの社会実装や活用に関する政策を進められても、今のままではビジネス利用が限定的に盛り上がり、一般ユーザーをも巻き込んだ災害や有事を見据えた環境づくりは後回しという雰囲気しか伝わってこない。

危機的な状況のウクライナで、民生用ドローンが活躍したことにより日本でも有事の活用に関心が高まったのは間違いない。しかし、一般ユーザーが経験を積んで技量を活かすための環境や法整備など、これまで先送りにしていた課題も明確である。

ただ一方で、今年の6月から義務化されたドローン機体登録では事業者に加えて一般ユーザーからも1機体あたり900~2400円の登録料を徴収していることを考えると現状のまま…ということはさすがにないだろうと思いたい。

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明治大学POLARIS研究員、POLARIS-DUT(軍民両用・融合技術研究ユニット)代表

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