自民総裁候補は要注目:北朝鮮ミサイル発射の真意は「中国の裏切り」への激怒

中朝韓揺さぶりへ、日本の新首相が出すべき妙手は?
2021年09月22日 06:00
東京通信大学教授/早稲田大学名誉教授
  • 北朝鮮の15日のミサイル発射を「日本への脅し」とする解説は間違い
  • 中韓の接近に北が激怒。王毅外相の文大統領訪問時を狙っての発射だった
  • 中国が北朝鮮のメンツを潰した理由は?日本の新首相が取るべき外交の一手は?

北朝鮮は国連安保理決議違反の短距離弾道ミサイルを9月15日、発射した。中国外相と韓国大統領の会談直後のミサイル発射で、中朝の険悪な関係を露呈し、北朝鮮は南北関係破綻を宣言した。また、金正恩総書記は、日本の排他的経済水域内にミサイルを打ち込むことで、日本と交渉する意向を示した。ただし、長期政権でなければ交渉する気はない。日朝が国交実現に大胆に動くと、韓国は反日政策を取れなくなる。これが、嫉妬と怨念渦巻く“韓流国際政治”の戦略だ。

narvikk/iStock

間違いだらけの「動機」解説

北朝鮮は9月11、12日に巡航ミサイル実験に成功し、15日には列車から発射の短距離ミサイル2発を日本海に着弾させた。韓国と北朝鮮の軍拡競争が、本格的に幕を開けた。

北朝鮮のミサイル発射の目的を巡り、さまざまな分析が語られた。その多くが、かなり的をはずしている。「米国に向けたものだ」「日本への脅しだ」などは、トンデモ解説と言うしかない。米国の気を引くつもりなら長距離のICBM(大陸間弾道ミサイル)を撃たなければ、意味がないからだ。

北朝鮮のミサイル発射の背後には、国際関係の激変と駆け引きがあるが、北朝鮮には、自ら戦争を始める力はない。石油がなく継戦能力に欠けるからだ。また北朝鮮の鉄道線路は、低速でしか走れないほど老朽化しており、列車発射ミサイルを全国に超スピードで展開する能力はない。

ミサイル発射は「中国牽制」

韓国と北朝鮮は、大国の対立と心変わりに、裏切られてきた。自らを、「鯨がくしゃみをすると、吹き飛ばされる小エビ」と表現した。1972年のニクソン米大統領の突然の中国訪問では、大国に見捨てられる危機から南北対話を始めた。

それでは、今回のミサイル発射の背後にある国際政治は、何か。米国のアフガン撤退と米中対立、それに中国の韓国接近がある。北朝鮮が短距離ミサイルを発射した15日は、中国の王毅外相が韓国を訪問していた。北朝鮮はこれに怒り、王毅外相と文在寅大統領の会談時間に合わせて、ミサイルを発射したのである。

北朝鮮が、中国外相のソウル滞在中にミサイルを発射するのは、これまでの中朝関係では絶対にありえなかった。王毅外相の文在寅大統領への表敬訪問時を狙ったのだから、極めて非礼であり、中国が怒るのも当然だ。

この事実は、中朝関係悪化を雄弁に物語る。

王毅外相と会談した文在寅大統領(15日、青瓦台Facebook)

北朝鮮を激怒させた中国の裏切り

ではなぜ北朝鮮は怒ったのか。まず、中国は王毅外相の訪韓を北朝鮮に事前説明せず、北のメンツを潰した。また韓国がSLBM(潜水艦発射ミサイル)の発射実験を行う当日に大統領と会談した事実は、韓国のSLBM保有を中国が認めたことになる。北朝鮮にとっては中国の裏切りと映る。

文在寅大統領は、王毅外相との会談後にSLBM実験に立ち会った。実験成功を受けて「北の挑発の抑止力になる」と、メッセージを出した。これに北朝鮮が怒るのは当然で、金正恩総書記の妹の金与正党副部長は、同日に次の過激な談話を発表した。

「文在寅大統領の発言は、愚蒙極まりなく不適切な失言」

「南北関係は完全破壊へ突き進む」

その上で北朝鮮のミサイル発射については「正常な自衛活動だ」と弁明した。北朝鮮がこれほど激しく文在寅大統領を非難したことはなかった。

なぜ会談時間が北に筒抜けだったのか

これでは、北京冬季五輪での南北統一チーム結成は、まず無理だ。北朝鮮は国家としては、国際オリンピック委員会のルールに違反したため、来年の北京冬季五輪に選手を派遣できないが、個人の資格でも参加させないと中国を脅すだろう。

韓国の大統領府は、金与正談話に驚愕したのか、全く反論しなかった。こうした韓国大統領府の姿勢は、韓国内では「大統領府は、金与正氏の指示に従う北朝鮮の手下か」と批判される始末である。

そもそも王毅外相と大統領の会談終了時刻を、なぜ北朝鮮は把握できたのか。これは北朝鮮が韓国大統領府にスパイを置いている事実を明らかにしたことになる。韓国の大統領府のメンツは丸潰れだ。

韓国大統領府「青瓦台」(SUNG YOON JO /iStock)

中国の狙いは「米韓関係への楔」

一方、中朝関係だが、中国はなぜ訪韓を伝えず、北朝鮮のメンツを潰したのか。中国は、米国の中国包囲網外交に困り果てている。日米豪印4カ国の首脳が9月24日にワシントンで初の首脳会議を行い、東南アジアへの軍事進出を進める中国に対抗する枠組み作り(クワッド)を話し合う。

また米英両国は、オーストラリアへの原子力潜水艦技術を供与に合意した。中国の軍事拡張への対抗措置で、台湾防衛の意思表示でもある。米英両国はフランス、ドイツなどのNATO(北太平洋条約機構)加盟国海軍艦艇のアジアでの展開を推進した。

これに対抗するため、王毅外相は東南アジア諸国訪問の最後に韓国に立ち寄った。米韓関係にクサビを打ち込むためだが、北朝鮮は中韓関係を重視した、と嫉妬し怒った、というわけだ。

新首相が提案すべき「日朝国交正常化」

さて、日本である。自民党総裁選では安全保障についても議題に上がっているが、今一つ足りない。新首相は、朝鮮半島を巡る中韓朝のギクシャクした関係をしたたかに利用するために、金正恩委員長に「日朝国交実現」を提案し、三国を揺さぶるべきだ。韓国の反日姿勢は、たちまち萎むだろう。日朝関係正常化に、韓国は嫉妬するからだ。

この戦略を実施する際には、「拉致問題解決と核解決を推進するためだ」と米国を説得する必要がある。北朝鮮との外交関係を持たない現実が、日本外交を弱体化させ、韓国の反日政策をやりたい放題にさせている状況を早急に変えるのが、戦略的対応である。

また、南北朝鮮は、やがて新型軍備競争の資金負担に耐えられなくなり、双方とも経済は疲弊することになろう。だが日本は高みの見物をすべきで、韓国を支援してはいけない。

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東京通信大学教授/早稲田大学名誉教授

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