「緊急ミッション」1万8000人の職域接種、ほぼ廃棄なしで実現の秘訣!
企業が挑む「コロナ禍の想定外」、AIGグループの舞台裏- AIGグループが、社員、代理店まで約1万8000人の職域接種をほぼ廃棄なしで実現
- 通常業務の「予約管理システム」活用で、予約状況を円滑に。「2回目難民」防ぐ
- 会社でも、接種会場でも、デパート式に入口、出口を分けて感染予防を徹底させた
想定外のことがたびたび起こるコロナ禍において、その対応に苦慮している企業も多いことだろう。特に職域接種の実施については頭を抱えるテーマのひとつだといえる。特に大企業ともなると対象者も多くなり、管理業務も大規模になる。
大手損害保険会社のAIGグループでは、社員をはじめ、その家族や代理店を含めて合計約1万8000人への職域接種を、廃棄がほぼないかたちで実現し、現在大半がすでに2回目の接種も終えた状況にあるという。

なぜ、これほど大掛かりなプロジェクトをスムーズに進めることができたのだろうか。日本のAIGグループで職域接種のプロジェクトを担当したAIG損害保険 経営企画部の丹野明裕氏と、代理店との調整をしながら、接種現場の責任者をつとめた同社中国・四国地域事業本部の安達有司氏に、その秘訣を聞いてみた。
まずは地方での「打ち手」確保
「ワクチンの職域接種の申請受け付けは、6月8日から開始されましたが、その前から報道がでていたので、その段階から準備を進めました。職域接種実施の条件に、まず“1会場に1000人以上が必要”ということでしたので、自ずと会場は社員らが多い地域で無ければいけません。そこで弊社の事務センターのある富山、長崎、松山などの主要拠点と、全国の大都市・計11箇所で行うことを想定して準備していました」(丹野氏)
最初に取り組んだのは、ワクチンの「打ち手」などで職域接種に協力してくれる医療機関を見つけることだったという。

「まずは医師や看護師さんの確保が課題でした。東京・大阪は、以前からインフルエンザの接種で提携していた医療機関にお願いできたのですが、問題は地方都市でした。協力いただける医療機関があるかを手分けしながら、たくさん電話をしていきました」(丹野氏)
手探りの努力の甲斐もあって、地方都市でも着々と提携先を見つけていったが、一都市だけは難しかったという。
「特に沖縄は医療機関の確保に時間がかかってしまい、申請が遅れ、ワクチンの到着時期が読めないタイミングと重なってしまいました。一方で、その頃には市町村の接種も進んでいたことから、そちらに行っていただくこととし、沖縄は実施しない結果になりましたが、それ以外の都市は予定どおり、全国10箇所で実現しました。今ではほぼ大半の方が2回接種をすでに終えている状況になっています」(丹野氏)
代理店に呼びかける
AIGグループが行った職域接種では、社員をはじめビジネスパートナーでもある保険代理店にも呼びかけた。こうして、社員とその家族約1万人と、取引先の代理店のご家族約8000人を含む、合計1万8000人が職域接種の対象となった。損害保険会社の代理店とひとことでいっても、その規模や形態は、大企業から中小企業まで様々。代理店によっては自治体接種以外に機会が得られない人も多かったようだ。
「弊社にとって代理店さんはビジネスパートナーとして大事な存在です。代理店は、お客様と直接対面する方たちでもあり、お客様の感染予防のためにも、安全に繋がっていただきたい。できればご家族もご一緒に、ということでお声がけしました。」
職域接種を実行した際には代理店からは多くの感謝の声をもらったという。
「想像以上に、ありがとうという感謝の声をいただきました。やはり、お客様と接する上で、代理店の方も接種の機会を早く得たいというのがあったのだと思います」(安達氏)
予約管理で日頃のシステムが生きた
接種者の範囲が広がると、そのぶん管理は難しくなる。万単位の予約管理をどうマネジメントしたのだろうか。
「弊社では保険金支払いに際してお客さま同席のもと損害状況を確認する日時の予約を、オンライン上で完結する「予約システム」を導入しており、それを転用できたのが、うまくいったポイントでした。このシステムは、自社開発のような特別なものではなく、レストランの予約などで一般的に広く使われているものです。このシステムで、予約状況が全て可視化され、接種希望者自身が現時点の接種枠の有無や予約可能な人数を確認できたのです」(安達氏)

予約は順調に埋まっていき、キャンセルも想定したよりも少なかったという。
「日程の予約に幅をもたせたことが大きかったと思います。会社から“この日、この時間に行ってください”と指示するのではなく、接種可能な日の選択に幅をもたせるようにしました。幅があったことで、社員はもとより代理店とそのご家族の方までご都合にあわせてスムーズに予約できました。例えば広島会場では、4日間の選択肢を設定しました。選べる日程に選択肢を広げて予約変更もできたことが日程が確実に埋まっていった理由だと思います」(安達氏)
万単位の日程管理をスムーズに進行するには、今の時代、デジタルなしにはなし得ないのかもしれない。とはいっても、管理を全てデジタルにお任せできるわけではない。
「前日18時まで予約を入れられる仕組みにしていたので、キャンセルそのものは少なかったですが、体調不良などによる当日のキャンセルだけは、システムだけでは対応しきれません。そのため、キャンセルが発生した場合に接触してもらう方々のリストを予め用意しておきました。直前のキャンセルがあればすぐに連絡して会場に行ってももらいました」(丹野氏)
万全の準備によって想定外の対応も可能だということだろう。「このシステムは誰でもいつが空いているか確認出来るものでした。自分で簡単に予約変更をできることは、代理店の皆様から評価いただきました。代理店の方は常に忙しいので、日程を選びやすかったところが大きかったのでしょう。キャンセルの場合もコメント欄に個々の事情を入力できたので、代替の接種日もスムーズに確保できました。とはいえ、代理店にはネット予約に不慣れな高齢の方も多くて、そういう方には支店に案内して、わかり易く丁寧に日時やシステムを説明しました」(安達氏)
職域接種をめぐる報道では、キャンセル後などに再調整できないまま「2回目を受けることが出来ない」いわゆる“2回目難民”が多くいることが報じられている。その一方で、ワクチンと予約の調整がうまくいかず「ワクチンが余って、廃棄を余儀なくした」企業もあったと報じられている。
接種会場の出入り口は「デパート式」で

各接種会場での感染予防を最善を尽くしたという。
「感染予防のために、入り口と帰り道を分けました。デパートのように、入り口と出口を分けるです。進むルートもわかるように、会社から接種会場までの道も含めて、矢印を配置し設置しました。会場でのレイアウトも動線が密にならないように、チェックしました」
ちなみに、在宅勤務は継続しているものの、一時期よりは出社頻度もあがってきており、感染予防のために、入り口と出口を分けることは社内でも日常的に行っているという。
「受付業務など、カバーしきれないところは委託で対応しましたが、会場には約100人の社員が手伝いにいきました。感染予防のために社員みな自発的な形で協力してくれました。ここまでスムーズに進められたのは、これまで日常的に感染対策に努めてきたのもあります。日々の努力の延長で、行うことが出来たからです」
緊急時の“成功事例”
コロナ禍での対応は、誰もが経験不足。報道のように想定外のミスがあったとしても、仕方が無い面のない面もあるだろう。とはいえAIGグループの場合ではこれらの緊急時にありがちな事態をこうしたトラブルを事前に防ぐことが出来たという稀有な例なのかもしれない。丹野氏はこう振り返る。
「昨年の全社的な在宅勤務体制への移行などもそうですが、弊社は大掛かりな変化においてはAIGグループとしてシニアマネジメントのリーダーシップのもとプロジェクトを組成して対応していること、また、プロジェクトマネジメントを専門に進める人達の協力などもあったので、うまく行ったという面もあります」
日常的に変化に対応しておくことで、想定外の事態が起こる際にもスムーズに対応出来るのかもしれない。こうした成功事例は、今後多くの企業が参考にしていけることだろう。
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