激戦!東京18区。長島氏の挑戦にいきなりの「イラ菅」。その狙いは?
遠のく「政権交代」の光景令和初の総選挙は、後半戦に入った。全国的にいくつか注目される「激戦区」の中で、やはりヒートアップしているのが東京18区だ。民主党政権で首相を務めた菅直人氏に、元民主党で現在は自民党に所属する長島昭久氏が東京21区から鞍替え、「刺客」として真っ向勝負を挑んでいる。選挙情勢は自民党の先週の調査では、菅氏がリードしているが、毎日新聞・共同通信などメディアの調査では、長島氏が猛追してほぼ横一線に近い激戦だ。

討論会で進行無視の暴走
菅氏といえば、キレ気味な言動についた俗称「イラ菅」が知られるが、公示前日の候補者討論会で菅氏は冒頭の自己紹介から“本領を発揮”した。先に出番が回ってきた菅氏は、長島氏が資料に自己紹介用で「野党議員としての活動に限界を感じ、自民党に加えていただいた。政治家としてまさに一から出直す覚悟で選挙区を移った」と記載したくだりを読み上げ、「なぜ18区に移られたのか、21区のままでいられなかったのか、有権者も関心を持っておられると思うので、質問の中でお答えいただきたい」と、いきなり先制パンチを見舞った。
長島氏は、「菅さんには、国政を志し、(最初の選挙で落選後の)浪人時代にお世話になった。何度も選挙区に足を運んでいただき、奥様にも家内が手解きを受け、その御恩は忘れていない。(自民)党本部から選挙区を提示された時には天を仰いだ。決まった以上、元総理の胸を借りてしっかり政策論争をしたい」と冷静に返したが、「イラ菅」は収まらない。
自己紹介後、候補者はコロナ政策を語る構成になっていたが、菅氏は司会者の進行をガン無視。長島氏がコロナ対策の持論を述べた後にも関わらず、菅氏は「20年近く長島さんを応援してきた人たちを見捨てて、なぜ18区に移ったのか自己紹介(の資料)には触れられていない。きちっとお答えいただきたい」などと長島氏の鞍替えへの苛立ちを隠さなかった。長島氏は自民党本部の指示による変更だったことを強調し、「断腸の思いで選挙区を返上させていただいた」と心境を述べて反論した。
菅氏はその後も選挙区のことを言い続けて、司会者から「ルールをお守りください」「有権者が知りたいテーマにお答えいただきたい」と嗜められた。第三者の立場から公平に見ても、元首相が長島氏の言葉尻を捉えて論難に終始するのは見苦しかった。
「イラ菅」が避けた議論を見抜け
しかし、こうした討論会で政治家の言動を見るときはその「意図」を見抜くことも重要だ。筆者もかつては政治家にこうした場での発言をアドバイスをする立場だった経験があるが、一般論として、有権者やメディアに特に印象付けたいポイントを強調したり、逆にクローズアップされたくない話題をそらしたりする意味合いが含まれる。
だから自分から饒舌に何を語ったか、逆に何をなるべく語ろうとしなかったかを見極めることが「観戦」する側の心がけで重要だ。

菅氏は大ベテランの政治家だ。公示前日にわざわざメディアや有権者が見てる前でひたすら「イラ菅」ぶりを“演出”する部分が全くないとは言い切れない。不快に感じる有権者もいることを計算した上で、それ以上に何をこの場の「ゴール」にしようとしていたのか。本音の部分なので、こればかりは推測するしかないが、筆者には、この日の元首相は、相手の鞍替えのことに終始することで、長島氏を「不誠実」な政治家だとレッテル貼りし、対決機運を盛り上げる。反面、長島氏が旧民進党を離れた理由である、共産党との野党共闘や外交安全保障政策への懸念に目を向けないように話題をそらそうとしたのではないだろうか。
そのあたりは、防衛副大臣も歴任した長島氏だ。言われっぱなしではない。菅氏の泣きどころを狙い澄ましたようにカウンターパンチを食らわせる。後半のクロストークの流れで「共産党は安保法制を廃止を主張している。(立憲民主党が与党になったら)政権が持ちますか。アメリカとの関係は大丈夫か。共産党が自衛隊を認めない、日米安保も認めない。こういう政党と一緒に選挙を組んで、選挙は一緒にやるけども、政権に入らないから勝手にやってくれとはいかないのではないか」と核心をついた。
この長島氏の発言は、2人が原発政策を論じている中で繰り出したものだったが、それまで「得意」の脱原発論を饒舌に語り、長島氏を口撃していた菅氏は突然「最近はその問題を深くやっていない」とトーンダウン。続けて立憲民主、共産、社民党、れいわによる「4党合意」を持ち出し、「私が理解している範囲では内閣を共にする約束はしていない」とかわし、肝心の安保論議から明らかに逃げていた。

発作的?確信犯?
政権交代をめざす立憲民主党が、急進的な反米、反安保政策を掲げる共産党と選挙協力のみならず、衆院選で勝利した場合に閣外協力までしたことは事実だ。ただ、いまの野党4党の、反自民の勢いだけで足腰の弱い選挙体制では政権を奪取できることは現実的ではない。自民党の甘利幹事長や党内右派を中心にこれを殊更に論点として強調しても、多数派の無党派からすればシラけることが多いのも確かだ。
しかし、民主党・民進党時代、選挙体制の構築で、左派勢力から圧力を受けてきた当事者でもある長島氏が指摘するのは、違う意味でリアリティがある。民主党政権がなぜ瓦解したのか、菅直人政権の震災・原発事故対応の不味さもさることながら、軋み始めたのは、鳩山政権の辺野古問題に象徴される外交・安全保障対応で、長島氏や前原誠司氏らリアリズム志向の議員たちが力を発揮できない構造にあったことは否定できないのではないか。
野党関係者によると、前回の衆院選の後、菅氏の勇退説も浮上したが、長島氏が自民党入りした2年前、18区への鞍替えの話が取り沙汰された頃から現役続行を決めたとみる向きがある。討論会での「イラ菅」が発作的だったのか、確信犯なのか、真相を知るのは本人と神様だけだが、どちらが理由にしても、民主党政権の総括もできず、本質的な政策議論が深まらず、そうした積み重ねがいまの永田町の「55年体制逆戻り」になっているように思えてならなかった。
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