LINE問題、SNSで逆ギレした「戦犯」と無責任体質

政府に虚偽説明の当事者「公職」続行の非常識も
ジャーナリスト
  • LINE問題の最終報告書、政府与党への虚偽説明を「社の信頼損なう」と指摘
  • 当時の担当役員は辞任もののはずだが、SNSで挑発的な投稿。社内でも批判
  • 親会社ZHD社長で、政府有識者でもある川邊社長に問われる見識

通信アプリ大手LINEが個人情報を不適切に管理したり、政府などに管理の実態を虚偽説明したりしていた問題で、LINEの親会社であるZホールディングス(HD)が設置した外部の有識者で構成される「グローバルなデータガバナンスに関する特別委員会」(座長・宍戸常寿東京大学大学院教授)は18日、最終報告書を発表した。

今年3月、謝罪の記者会見をするLINE出澤剛社長(左、写真:つのだよしお/アフロ)

その中で特別委員会は、LINEに対して、「政策渉外を含む対外コミュニケーションについて、客観的な事実を誠実に伝えるという点にコミットすべく必要な体制を整備すること」などを提言としてまとめた。

提言の最初に政策渉外に関するコミュニケーションの問題が指摘されたということは、特別委員会はLINEが行った政府への虚偽説明を大変重く見ているということだろう。

そもそもLINE問題とは?

「LINE問題」の発覚から半年以上が経過したので、簡単に振り返ってみよう。ことの発端は今年3月17日付の朝日新聞によるスクープ記事だった。その主な内容は、LINEが中国の会社に業務の一部を委託し、中国人技術者がサーバーにアクセスし、個人情報に触れることができる状態にあったことを報じたものだった。

朝日新聞はこの報道により、今年の新聞協会賞を受賞。この「LINE問題」の本質は、岸田文雄首相が重要政策の一つとして掲げ、脚光を浴び始めた経済安全保障への対応が疎かになっていたことにある。

まず、中国は2017年施行の国家情報法によって、当局が命じれば中国国籍を持つ者は情報収集活動の責務を負うことになっている。平たく言えば、中国国民は状況によってはスパイ的な活動をしなければならないわけで、そうした国の技術者が、今や多くの日本国民にとって欠かせない情報インフラ(たとえばコロナワクチン接種予約にも利用されている)のサーバーにアクセスできる状況にしておいたことは、安全保障上、非常に大きなリスクがある、ということだ。

さらに、LINEには9000万人近いユーザーがいるが、その個人情報の一部が、国境を越えて韓国内にあるサーバーで保管されていたのに、そのことが利用者に対して明確に説明されていなかったことも問題である。

虚偽説明の「戦犯」役員

そして筆者が問題としてことさら強調したいのは、LINEがサーバーの管理体制について政府与党に虚偽説明をしていたことだ。特別委員会でも「LINEアプリの日本ユーザーに関する全てのデータが『日本に閉じている』旨の客観的事実に反する説明を一部で行っていたことは、LINE社の信頼を損なうものであった」と指摘している。

具体的にどのような虚偽説明をしていたのかと言えば、たとえば今年2月25日に開催された自民党デジタル社会推進本部・デジタル施策調査小委員会に出席した、LINE執行役員で、当時公共政策・CSR担当だった江口清貴氏が、「LINEのサーバーは国内にあるのか」と問われ、「国内にある」などと嘘をついたことだ。当時、江口氏はLINEの親会社であるZHDの執行役員も兼務していた。

自治体関係者にLINEの活用法をレクチャーする江口氏(LINE社サイトより)

そして江口氏は当時、LINEが資金提供して永田町に一般財団法人として設立したシンクタンク「情報法制研究所(JILIS)」の専務理事も務め、江口氏はJILIS役員の肩書でも渉外活動をしていた。長年、日本の自動車メーカーなどの不祥事事案を見てきた筆者からすれば、江口氏が行った行為は、結果責任として重く、本来であればすべての役職は解かれ、役員も辞任すべきものだ。これが日本の大企業の常識的な判断である。

「LINE問題」が発覚すると、すぐに江口氏はJILIS専務理事とZHD執行役員を退任し、LINEの公共政策・CSR担当からも外れた。結果責任を取ったのだろうと思っていたが、実態はどうも違うようだ。

江口氏は現在、LINE執行役員のまま、昨年任命された神奈川県「チーフデジタルオフィサー」の活動を積極的に行っている。問題を起こした張本人が、問題が完全に解決していないままの状況下において公職で活動すること自体、本人及びそれを認めるLINEに反省の色がないと言わざるを得ない。さらに言えば、江口氏を起用し続ける神奈川県の見識も問われるのではないか。

戦犯なのに逆ギレ挑発

ZHDやLINEには健全な問題意識を持つ社員も多い。そうした人たちからは「江口氏は全く反省していない」との声が漏れ伝わる。実際、特別委員会が最終報告書を発表する直前にはSNS上で江口氏は不遜にもこんな投稿をしている。

「なんか安易に喧嘩売りまくってる人見かけるけど、相手は殴り返して来ないとでも思ってるのかしら?」

この投稿については、「虚偽説明を問題視してきた特別委員会に対する挑発的な発言であり、江口氏が全く反省していないことの証拠だ」(ZHD関係者)と指摘する声すら出ている。

18日の特別委員会の記者会見では「虚偽説明を行った当該執行役員の行為は善管注意義務違反ではないか」とただす質問も出たが、「(特別委員会は)特定個人の責任追及はミッションではない。個々人の問題というよりLINE社の構造的問題を扱うことがミッション」と宍戸座長が答え、追及をかわした。善管注意義務とは、経営者が任務遂行に当たって常識的な注意をはらうことである。

問われる川邊氏の対応

Zホールディングスの統合記者会見で揃い踏みした川邊氏とLINEの出澤剛社長(写真:つのだよしお/アフロ)

LINEは非上場企業であり、ZHDの子会社だが、もし上場企業の役員が職務上、虚偽説明をし、それが会社の信用を損なうことにつながれば、株主代表訴訟を受けてもおかしくないような重い行為と言えるのではないか。さらに言えば、江口氏をLINEの執行役員にとどめ、かつ神奈川県での公職就任を認めている親会社ZHDの見識やガバナンスが問われることになる。

おりしもZHDの川邊健太郎社長は、岸田文雄首相の肝いり政策で重要な役割を担う首相直属の「新しい資本主義実現会議」のメンバーに選ばれた。岸田政権における重要政策「分配と成長の好循環」を実現させるために川邊氏は有識者として期待されているのだ。

一方で岸田政権は、経済安全保障政策も非常に重要視しており、経済安保担当閣僚を初めて置いた。その経済安保でミソを付けた企業の親会社のトップが「経済安保政権」のブレーンに就くとは何とも皮肉的だが、選ばれた以上はむしろ「隗より始めよ」で、お茶を濁さずに自社グループの庭先の「お掃除」も完璧に行ってほしい。

※画像をクリックするとAmazonへ

関連記事

編集部おすすめ

ランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事