半数近くが詐欺 !? 「火災保険」異常な値上げの裏で暗躍する悪徳業者

金融庁の対応、待ったなし
ジャーナリスト
  • 火災保険料が折からの自然災害続出で4年で3度も値上がりの異常事態
  • その裏で「申請の半数近くがおそらく詐欺」と損害保険登録鑑定人
  • 悪徳業者が付け入るスキとは?実は金融庁も付け入られる構造とは?

火災保険料が2022年秋から引き上げられる見通しだ。損害保険各社で作る損害保険料率算出機構が火災保険の最近の支払い状況を勘案し、保険料の目安となる「参考純率」を11%引き上げることを決めた。過去最大の値上げ率となる。また22年度からは10年契約を廃止し、最長5年にする。長期契約ほど割安になるので、これも実質的な値上げだ。

火災保険料の値上げは大手が21年1月に6%程度値上げしたばかり。19年10月にも約7%値上げしたので、4年間で3度も値上げするという、これまでにない異常事態だ。

作・ググオ/PhotoAC

自然災害多発に付け込む“詐欺”

値上げの理由は、台風や豪雨など自然災害の多発によるもの。18年9月に関西地方を襲った台風21号の影響で、火災保険は過去最大の約1兆5000億円支払われており、その分が21年1月の値上げに反映された。19年9月には房総半島に甚大な被害をもたらした台風15号の影響で、過去2番目となる約1兆2000億円の火災保険が支払われた分が22年度からの値上げに反映される。

損害保険会社は保険金を確実に支払うために責任準備金を積み立てたうえに、リスクを分散させる再保険をかけている。しかし、災害の多発によって準備金を切り崩し、再保険料が上昇するといった状況に追い込まれている。損保各社の火災保険事業はかつて収益事業の一つだったが、今は赤字だ。

値上げの表向きの理由は前述した通り、自然災害多発によるものだが、実はそこに付け込む詐欺まがいの保険申請が横行している。「そうした行為が保険料の値上げに繋がっている。申請の半数近くがおそらく詐欺と疑われてもおかしくない」と指摘する損害保険登録鑑定人もいるほどだ。

鑑定人とは、業界団体である損害保険協会が実施する試験に合格した民間資格の保有者で、事故の原因や状況調査、保険金額などを算出する仕事をしている。全国に約1000人いる。

悪徳業者が付け入るスキとは?

詐欺まがいの手口はこんな感じだ。「0円リフォーム」とか、「受け取った保険金で旅行に行けます!」などと宣伝し、災害が襲った地域に対して重点的な営業攻勢をかけ、老朽化した家の持ち主に火災保険を利用したリフォームを勧める。

たとえば、屋根や風呂場の壁が経年劣化で崩れていたり、汚れていたりしていても、「台風で崩れた」「台風で雨漏りした」と嘘の申請を代行業者が行う。経年劣化は火災保険の対象にはならない。虚偽申請が通って保険金が下りると、業者はその一部を手数料やコンサルティング料の名目で受け取る。

火災保険の場合は、自動車保険と違って実際に修理したかどうかを確認せずに、保険金が支払われる制度であることを説明し、保険金が丸々手元に残せることを強調して家主を口説くそうだ。

こうした悪徳業者が特に「収益源」と目しているのが屋根と雨樋の工事だ。足場を組む作業になることが多いため、工事代金の見積額が100万円以上になるケースが多く、その分だけ悪徳業者の取り分が膨らむからだ。

HidamariNeko /iStock

ターゲットにされやすいのは高齢者の家主で、自分の生い先の長さを考えて小さな綻び程度は修理せずにそのままにしていたのを、多額の保険金がそのまま懐に入ると唆し、保険申請するケースがある。中には強要まがいに保険請求させる悪徳業者もいて、保険金が下りた後に高い手数料を取るため、家主との間でトラブルになって国民生活センターには相談が相次いでいる。

しかし、たとえ唆されたとはいえ、悪徳業者の口車にのって虚偽申請をして、それが発覚すれば、詐欺容疑で立件される可能性がある。

自動車保険では事故を起こした人が、加入する損害保険会社を変えても事故歴を業界全体で共有しているため、保険料は上がるが、「火災保険は利用歴の業界共有データがないため、雪の多い地方では保険会社を変えて毎年のように雪で屋根が崩れたと虚偽申請で火災保険を請求してくる人がいる」と、前出・鑑定人は語る。

災害の多発で損保会社も鑑定人も綿密な審査をする余裕がないため、事実上ノーチェックで支払われているという。請求額は、厳密な審査に入らないすれすれの線に設定されているそうだ。

金融庁の「隙間」も狙われている

虚偽申請を手伝う悪徳業者は、著名なお笑いタレントを広告塔に使っていたり、創業1年目で上場を目指すことを謳っていたりしている。濡れ手で粟のぼろ儲けなのだろう。また、都内のバーチャルオフィスに本社を置き、災害が襲った地方を重点営業したり、一般財団法人を作って公共性を装っていたりしているケースもある。ほとんど資本がいらないため、損保業界では「反社会勢力の資金源になる可能性がある」と見る向きもある。

実は悪徳業者は金融庁の行政指導の「隙間」も狙っている。保険会社の不払い問題を受けて2006年に金融庁は大手損保2社に業務停止命令を出して以降、早く保険金を支払うことを求め、業界がそれを競う構図になった。

自然災害が多いのは事実で、本当に台風の被害にあって困っている人もいる。そうした人に保険金の支払いが遅れると金融庁からまた指導を受けるので、損保会社は虚偽申請だと薄々気づきながらも保険金を渋々支払っているのだという。

このまま放置していると、火災保険は値上がりし続けるだろう。困るのは悪徳行為に加担していない一般の善良な人だ。やっと当局も動き始め、警視庁は12月9日、千葉県船橋市のリフォーム会社社長ら3人が台風の被害を装って保険金をだまし取ったとして詐欺の疑いで逮捕した。警視庁は2億円近くを詐取したとみている。

ただ、業界では、これは氷山の一角に過ぎず、金融庁はそろそろ警察との連携も視野に入れた強い対応をしていくべきだとの声も出ている。

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