実は窮地?小池はなぜ二階に会いに行ったのか
五輪中止観測報道のウラ読み東京都の小池知事が11日午後、自民党本部を訪れて二階幹事長と面会したことが憶測を呼んでいる。報道が流れてから、SNS上では、「二階の了承を得て小池が五輪中止を発表するのではないか」といったコメントが続出した。メディアも額面通りに受け取っておらず、小池氏本人が五輪の話は出なかったと否定しているにもかかわらず、TBSや東スポも東京五輪中止警戒論を見出しにとって速報していた。
かく言う筆者も一報を聞いた時は「きな臭さ」を感じた一人だ。小池氏と二階氏は携帯電話で定期的に連絡を取り合う仲。だからわざわざ首都の知事がコロナ対応の公務で忙殺される中を、自民党本部を訪れるというのは、ツーカーで話せる類の用事ではなく、なんらかの政局的な交渉ごとが必要になったのではないかと思い、旧知の政界関係者に見立ても聞きつつ、報道を分析してみた。
国側との綱引き
実際にどうだったのか。公表されているのは二階氏との会談後の本人のコメントだ。
小池氏は報道陣のぶら下がり取材に応じ、翌日からの緊急事態宣言延長に向けて「さまざまな要請をした」と明かした。日本テレビが報じているように「7月末までに都内高齢者のワクチン接種完了見通しを伝えた」という話が出たのは確かだが、そんな報告だけならわざわざ党本部に行くはずはない。
なぜ日テレが文字化してないのかはよくわからないが、この日の「メインテーマ」は小池氏本人も「財政措置など幹事長にお願いした」と明言している通りだろう。
都は独自に大型商業施設への休業要請の協力金を行っているが、宣言延長に伴い、これまで99%の補助率で手厚かった国からの財政措置が大幅に減少するという。前日の全国知事会で小池氏が「このままだと、協力金の支給は事実上不可能」とキレ気味に述べたことが報じられると、ネット上では「今まで協力金を払うから休業しろって言ってきたのではないか」とか、「国に責任をなすりつけている」といった非難が噴出した。
小池氏が都議選に向けた政局の切り札としてオリンピック中止を持ち出すシナリオを、官邸や自民党側がいまなお警戒しているのは間違いない。しかし、いまのフェーズとしては協力金の分担を巡っての綱引きが山場になっているのは確かだ。
都は有事の貯金にあたる財政調整基金が1兆円あったのに、昨年来のコロナ禍支援で、その多くをすでに吐き出してしまった。今年度予算編成時でも約1800億円にまで減っていたが、日経新聞によると、さらに1000億円が消える見通しだ。
旗色は悪いが4年前のデジャブ?
そんな小池氏はもちろん菅首相にも足元を見られている。小池氏としては菅政権を支える二階氏を頼ることで打開を試みているのだろう。ここで小池氏が「協力金を支払えない」とボヤいたところで、本当に支給できなくなれば、都議選で都民ファーストの会が逆風にさらされる。もちろん小池氏に対してもだ。
すでに協力金の手続きの煩雑さから、一部の事業者から休業に協力したのに手続きを門前払いされたと訴える声も出て、Abema TVでは報道もされた。
さまざまな空中戦を仕掛けてメディアも翻弄してきた小池氏だが、事と次第によっては民意の矛先が小池氏に向きかねない。少なくとも現時点では、政権との関係が悪化しており、東京の強みのはずの財源も当てがなく、小池氏の旗色はすこぶる悪い。
しかし、小池氏は窮地に追いやられるほど、常人が思いも寄らない奇襲戦法で起死回生をしてくるのは周知の通りだ。同じように4年前の都議選の約2か月近く前にも国とのお金の駆け引きで、小池氏が珍しく負けたことがあった。当時、東京都外のオリンピック仮設施設の整備費の全額負担をどうするか、国と一都三県の交渉が膠着していたが、小池都政は結局、全額負担に追い込まれた。
だが、小池氏はそこから反転攻勢。豊洲市場問題で「築地は守る豊洲は生かす」と大見栄を切ると、都議選で都民ファを歴史的大勝に導いた。今回の協力金はそのときよりも財政状況が悪化。「禁断」のオリンピック中止カードも含めてどのような打ち手に出るのか、油断も予断も許されない。
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