琉球王家の現当主、沖縄復帰50年で初めて見解示す。八重山日報が歴史的独占手記

「祖国復帰は県民自身が選び取った歴史」

今年5月15日で、沖縄県の日本復帰から50年を迎えるが、沖縄県石垣市を拠点とする地元紙、八重山日報が1日、最後の琉球国王、尚泰の玄孫で、現当主の尚衛(まもる)氏の手記を掲載した。これまで尚家は日本復帰について公の場で発言したことはない。旧王家当主の異例の発言は国内外で話題になりそうだ。

2019年に焼失した琉球王朝の拠点、首里城(Sky_Blue /iStock)

手記は「祖国復帰は県民自身が選び取った歴史です」とのタイトルで掲載。「『祖国復帰』の意味の捉え方は、きっと百人百様であると思います」としながら、「米軍統治下に置かれた沖縄では、日本への復帰は県民の悲願であったことは紛れもない事実だと思います」「沖縄の先達の熱い情熱と不屈の精神、そして団結した活動があったからこそ、わずか27年という短い期間で実現できた」との見方を示した。

尚衛氏は近年、琉球王朝関連の行事ではメディアの取材に応じ、2019年に首里城が火災で消失した後にも東京新聞の取材に応じているが、政治性の強い沖縄県の日本復帰に関して発言は控えてきた。手記では、「尚家一門の宗主としての立場があり、様々な方面にご迷惑がかかるのはいけないからと、長らく表に立つ事もございませんでしたし、具体的な発言は控えておりました」などと理由を述べた。

そして手記では、復帰に至る歴史について「沖縄の先人は、米軍統治下も琉球の独立も選ばず、自らの選択により日本への復帰を果たしたのです」「日本に復帰したことにより、あらゆる課題を解決する能力が飛躍的に拡大したのです」との認識を示し、沖縄県民のアイデンティティーに言及。

「皆様方の中には琉球民族としてのアイデンティティーを大切にしたいと願われる方々がいらっしゃるかもしれません。その想いは私も大切にして頂きたいと思います」としながら、「琉球國は歴史の一部分であります」と断言。「昔琉球國があり、私共の祖先は琉球の民として生きてきたこともありましたが、新たに日本人として生きる選択をした、というのが現在までの歴史であります」と強調した。

尚氏は現在、沖縄県外に居住。一般社団法人、琉球歴史文化継承振興会の代表理事を務めている。手記では言及していないが、沖縄に近い台湾では中国の軍事的圧力が増して情勢が緊迫し、数年前には中国政府の琉球独立運動関係者への接近なども相次いだ。また手記の掲載にこぎつけたのが、那覇市に本社を置く地元2大紙、琉球新報や沖縄タイムスでなかったことも含め、政治関係者や報道関係者の注目が集まりつつある。

 

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