「トンガの噴火で100年分のCO2が排出」デマはなぜ広まった?単純な読み間違えかあるいは…

地質学者のある過去記事を読んでみると...
ライター/SAKISIRU編集部

15日午後1時過ぎ(日本時間)に起こったトンガ沖の海底火山噴火から3日。いまだに、トンガの詳しい状況は明らかになっていない。そんな中、ツイッターでは「トンガの噴火で100年分のCO2が排出された」といった情報が出回り、話題を呼んでいる。

衛星画像に映された海底火山の噴火(気象庁サイト)

これが事実であれば、ここ何年間かのCO2削減努力は一体なんだったのかと思えてくる。ツイッターでも、次のような反応が見られた。

SDGsがどうこう言ったところで地球の活動の前では誤差の範囲だし、人間が環境をどうにかできると考えること自体がおこがましい。

いくら脱炭素とか温暖化防止とか綺麗事言ってても、地球がちょっとやる気出したらそんなもん関係ないって、昨日のトンガ噴火でわかっただろ?

トンガの噴火で、レジ袋何年分のCO2が大気中に放出されたんだろうな

ところが、いくら調べても「トンガの噴火で100年分のCO2が排出された」という情報のニュースソースは確認できなかった。「火山噴火の年間CO2放出量をすべて合わせても、人間のCO2排出量の3日分にしかならない」といったような、真反対の報道は数多く確認できた。

どこからこの「トンガの噴火で100年分のCO2が排出された」という情報が出回って、拡散されていったのだろうか。興味深い分析をしているツイッターユーザーがいた。

記事は出回る情報と「真逆」

ある匿名アカウントは、地質学者のDavid Bressan氏が執筆し、フォーブスジャパンに2019年10月14日に掲載された「人類による二酸化炭素排出量は『火山の100倍』であると判明」というタイトルの記事を提示したうえで、次のようにツイート。

「トンガの噴火によって人類の排出するCO2の100年分に当たる量が排出された」という話を探しましたが、どこにも見当たりませんでした。この記事を読み間違えたのかと思っております。

繰り返しになるが、「人類による二酸化炭素排出量は『火山の100倍』であると判明」というタイトルの記事だ。記事では、「陸上と海底の火山帯は年間で0.3〜0.4ギガトンの二酸化炭素を放出している。地球上で最も多くの二酸化炭素を放出する自然現象は火山活動だ。しかし、人類が1年間に排出する二酸化炭素量は2018年だけで37ギガトンを超えたという。人間が排出する二酸化炭素の量は、火山の約100倍にも達しているのだ」と指摘している。「トンガの噴火で100年分のCO2が排出された」とは真逆の主張だ。

「こんなのを読み違える人などいるのか」と多くの人が疑問に思うだろう。筆者もにわかには信じがたい。しかし、調べた範囲ではこの説以外に「トンガの噴火で100年分のCO2が排出された」という話の出回った理由が考えられないのだ。

ただ単純に読み間違えたかあるいは、CO2排出規制の反対派が意図的に意味を取り違えて拡散したか--。いずれにしても、「トンガの噴火で100年分のCO2が排出された」という話は、現時点ではデマと断言して良いだろう。

 
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