なぜデンマークはいち早くコロナ規制を撤廃できたのか?“小池流”と大違いな民意の秘訣

政府ブレーン、政治学者のツイッターに注目
  • デンマークが欧州でいち早くマスク着用などの規制を撤廃できた理由は?
  • 同国政治学者のツイッター発信に見る、政府の決断を支える成熟した民意の存在
  • 他方、コロナ禍を政争に利用し、民意が紛糾している日本は…

オミクロン株の感染拡大中にも関わらず、ヨーロッパでマスク着用などの社会的な規制をいち早く取りやめたデンマークの動きが日本からも注目を集めつつある。

政府のブレーンを務める政治学者のツイッター発信からは、政府の決断を支える民意の成熟した反応がうかがえ、何かと規制のあり方を巡って政局が絡み、ネット上でも不毛な論争が巻き起こる日本とは対照的なようだ。

nantonov /iStock

デンマーク政府は1日、屋内でのマスク着用や、バー、レストランなど屋内施設での「コロナパス(Covidパス)」の提示、検査で陽性になった場合の自主隔離について法的な義務を全て解除した。米CNNニュースの取材に対し、同国のマグヌス・ホイニケ保健相は、「次の12月に何が起こるかは誰にもわからないが、国民に対しては、本当に必要な場合にのみ制限を設けることを約束し、できるだけ早く解除する」とコメントした。

デンマークは連日5万人を超える新規感染者が出ているが、人口600万のうち、ICUで集中治療中のCOVID-19と診断されているのは30人程度にとどまっており、重症化リスクが低いことを踏まえて解除を決断した。ヤフーニュースのコメント欄は、日本の“泥縄的”なコロナ規制にうんざりしている人たちを中心に盛り上がり、

日本も早く、無駄な対策をしていることに気付いて、コロナ規制を前面撤廃すべき。多くの専門医も、デルタ株とオミクロン株は、もはや別の病気と思って良い。

政府対応が速ければ国が正常に戻るのも速い。現実を直視して適切な判断をする。それができない日本は来年になってもマンボウとかやってそうだな。

などの書き込みが相次いだ。日本政府や行政への不満・不信の背景にあるのは、コロナ規制で動き出すたびに、政治家の選挙を見越した政局的な思惑や、メディア報道の過剰な煽りが繰り返されてきたこともありそうだ。仮にデンマーク政府が今回行ったように、パンデミック中の規制全面解除を打ち出そうものなら、日本で世論の賛否が別れ、ネットで論争も起きそうだが、デンマーク国民の受け止め方はどうなのだろうか。

規制解除2週間前、1月15日の首都コペンハーゲン。通行人はすでにノーマスクだ(Scharvik /iStock)

「当局への信頼と社会の連帯意識が強い」デンマーク

ピーターセン教授(ツイッターより)

ここで参考になりそうなのが、デンマークの政治学者で、オーフス大学のミカエル・バング・ピーターセン教授のツイッター投稿だ。同教授は政府のアドバイザーも務めているといい、規制が解除された1日、19本ものツイートを連投し、今回の決定に至る経緯や、民意の状況について解説しているのだ。

これらの投稿によると、デンマークでも感染者が非常に多く、入院者や死者は増加しているに関わらず、独自のアンケート調査の結果、大多数の国民は全ての規制を解除することを望んでいると指摘する。その要因として、ワクチンに対する信頼が高いことや、全人口の8割が接種済みで、ブースター接種も6割が終えていることを挙げる。

もちろん、規制を続けることで「国民の不信感が助長される」(ピーターセン教授)というのは日本と同じようだ。規制と民意の関係性について教授は「感染拡大の制御にはトレードオフが伴い、どれか一つの正しい戦略があるわけではない」と述べた上で、「トレードオフを入念に行うよりも民主的に合意することが重要だ」と、社会の合意形成を強調する。

そして、教授の調査によれば、若い世代から重症化リスクの高い高齢者まで、全ての世代が規制解除に前向きで多くで6割を超えた。年配層で脅威を感じている人が少数派というのは日本と明らかに違う印象がある。

なぜデンマークでは老若問わず、概ね規制解除を受け入れているのか。調査では、デンマーク人が他のヨーロッパ諸国と比べても「当局への信頼と社会と連帯することへの意識が強い」傾向が示されているという。

ピーターセン教授のツイートより引用

こうした民意の状況からピーターセン氏は他国の人々を念頭に、「あなたの国でも感染対策を自己責任にすべきかどうかは、感染の流行具合や社会が何を優先としたいかに拠るだろう。しかし、今回の調査で、信頼と連帯があってこそ、いかに規制コストを受け入れ、社会が合意して行動できるようにするかを示している」との持論を述べた上で、「ロックダウンは不信感を生むので可能な限りは規制を緩和することが賢明だ。もし再びロックダウンをするのであれば、社会として可能な限り多くの信頼と連帯を必要とする」と強調した。

コロナ禍でも政局ありきの日本

翻って日本。東京都は2日から検査を受けなくても医師の判断で陽性とみなす患者も新規感染者数にカウントする方針に切り替えたことで、ツイッターでは著名人たちが異論を次々に表明した。

全国知事会の新型コロナ緊急対策本部で発言する小池氏(公式Facebookより)

国際政治学者の三浦瑠麗氏が「これは問題ですね。感染者数の全体を炙り出すことよりも、現状の傾向把握のほうが重要ですからね。そんなことなら逆に感染者数自体を発表するのをやめたらいいと思うのですが」と問題視すれば、前都知事の舛添要一氏も「統計の連続性が断たれた。見なし患者数は別枠で示したほうがよい」と批判的に投稿した。

さらに評論家の東浩紀氏に至っては、「ぼくは前々から、緊急事態宣言が出るかどうかはもはや医学の問題でも感染の問題でもなく政治の問題で、医療逼迫とは関係なく出るだろうと指摘してきたが、今回の小池知事の決定はまさにそれを証明するもののように見える。彼女は、自分の政治生命のため緊急事態宣言を必要としているのだろう」とツイート。東氏に同調するネット民は多く、コロナ禍を政局や政争に利用してきた小池氏への強い不信感がいまだに根強い状況であることを示した。

岸田政権も、安倍政権や菅政権と同様、小池氏の出方を睨みながら打ち手を講じている側面は否定できない。日本では政治家たちの虚々実々の駆け引きが、無用な政治不信を増長させている有り様が続いている。先述の、ピーターセン教授の民意調査を見る限りは、デンマークの為政者もパンデミック下の規制解除を前に進めるため、社会の合意形成を重視しているのだろう。必然的に社会の成熟度の違いが浮き彫りになるようだ。

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