「正直目を疑った」千葉・熊谷知事、朝日新聞のHPVワクチン報道“他人事”ツイートに唖然
医師たちもツイッターで疑問や批判相次ぐ
朝日新聞の記事と、その記事を宣伝する公式ツイートが炎上している。朝日新聞は30日、「9年ぶりHPVワクチン勧奨再開 接種後の症状、医療者側の理解進む」との見出しの記事を出し、朝日の医療専門サイト「朝日新聞アピタル」の公式ツイッターアカウントは、次のようにツイートした。
子宮頸がんを防ぐHPVワクチンの「積極的勧奨」が、約9年ぶりに再開されます。接種後に報告された「多様な症状」について、接種していなくても一定の人で症状がみられることがわかり、医療者側の理解が進んでいるようです。
子宮頸がんを防ぐHPVワクチンの「積極的勧奨」が、約9年ぶりに再開されます。接種後に報告された「多様な症状」について、接種していなくても一定の人で症状がみられることがわかり、医療者側の理解が進んでいるようです。https://t.co/CLr2Tb8y4v
— 医療サイト「朝日新聞アピタル」 (@asahi_apital) March 30, 2022
苛烈なバッシングで、接種勧奨を取り下げ
HPVワクチンとは、子宮頸がんを予防するためのワクチンのことだ。なぜこの記事やツイートが炎上しているかと言えば、朝日新聞は反HPVワクチンの急先鋒としての役割を果たしてきたからだ。駒澤大学教授の山口浩氏が「Yahoo!ニュース 個人」の記事執筆にあたって行った調査によると、朝日新聞のHPVワクチンに関連した記事は、2013年=60件、2014年=34件、2015年=72件、2016年=45件だった。このうちの大半が、「ワクチン接種に伴う副反応やそれに対する不安の声、その後被害者らが起こした訴訟に関するものだった」(山口氏記事)という。
定期接種が始まる前後の、2013年の3月から5月までのごく短い期間に区切ってみても次の通りだ。
「子宮頸がんワクチン、中学生が重い副反応」(3月8日)、「母、追跡調査求める 子宮頸がんワクチン、重い副反応」(3月8日)、「接種禍に被害者連帯 「子宮頸がん」連絡会、きょう発足」(3月25日)、「子宮頸がんワクチン「副反応」の勉強会 市⺠ら対象、あす杉並で」(4月27日)「子宮頸がんワクチン 安易な接種の推進やめよ」(5月11日)
日本で2013年4月にHPVワクチンの定期接種が始まってから、主に朝日新聞と毎日新聞が火をつけた形で、日本中が連日大騒動となった。そのマスコミの声に押されてか、厚生労働省は因果関係を検証するよりも先に、HPVワクチンの接種勧奨を取り下げてしまった。定期接種開始からわずか2カ月後のことだった。

厚労省元幹部が指摘するマスコミの影響
HPVワクチンの有効性や安全性についてはその後、「名古屋スタディ」と呼ばれる、名古屋市立大学医学部の鈴木貞夫教授が監修した研究によって立証されている。
厚生労働省の元健康課長で、HPVワクチンの政策決定に関わってきた正林督章氏は、バズフィードジャパンのインタビューに次のように答え、日本でHPVワクチンの積極的勧奨がストップしたのは、マスコミの責任だと暗に指摘している。
--HPVワクチンなのですが、なぜ積極的勧奨を中止したまま6年以上も引っ張っているんですか?
今となっては、マスコミの方からそのように言われてしまうのですね。
--それはマスコミがHPVワクチンは危険だという印象をミスリードしてきたという意味ですか?
積極的勧奨を差し控えた当時の世論には、マスコミの影響が少なからずありました。
憤りを覚える行政、医療関係者
さんざんHPVワクチンの恐怖をあおってきた朝日新聞の、普及が進まなかったのは医療者側の理解不足にあったかのような報道に憤りを覚える行政関係者、医療関係者は少なくない。
千葉県の熊谷俊人知事は、次のようにツイートした。
実際には朝日等が報じた理解不十分な記事をきっかけに反対が広がり、積極勧奨が停止されたのが実態で、私も正直目を疑いました。
朝日新聞がHPVワクチンの積極勧奨再開にあたり、「医療者側の理解が進んでいる」と記事要約ツイートしたことが医療関係者を中心に問題となっています。
実際には朝日等が報じた理解不十分な記事をきっかけに反対が広がり、積極勧奨が停止されたのが実態で、私も正直目を疑いました。 https://t.co/ONLhRmljOb— 熊谷俊人(千葉県知事) (@kumagai_chiba) March 30, 2022
さらに、続くツイートで当時の記事に対する反省や総括を促した。
医療側の主張に長年耳を貸さず、最近になってしれっとポジションを変えた朝日・毎日はどこかで反省・総括をした方が良いと思います。
日本維新の会政調会長の音喜多駿参院議員も次のようにツイートし、報道姿勢の総括を求めている。
すでに多く指摘されているように、記事タイトルと要約がさすがに酷い。あたかも医療者側の理解が不足していたかのような書き方はまったく不適切で、不安を煽る記事を盛んに報じたマスコミの責任を転嫁する意図にしか感じられない。自らの報道姿勢を総括する記事を出すべきでは。
子宮頸がんを防ぐHPVワクチンの「積極的勧奨」が、約9年ぶりに再開されます。接種後に報告された「多様な症状」について、接種していなくても一定の人で症状がみられることがわかり、医療者側の理解が進んでいるようです。https://t.co/CLr2Tb8y4v
— 医療サイト「朝日新聞アピタル」 (@asahi_apital) March 30, 2022
小児科医の宮原篤氏は問題のツイートに「朝日新聞は、やはり書くことが違いますね」と皮肉たっぷりのリプライを送付。
名古屋スタディがでて学術的にはHPVワクチンの安全性が明らかになっても、2018年に「子宮頸がん 接種めぐる議論なお」といかにも意見が割れているかのように報道した朝日新聞は、やはり書くことが違いますね。>医療者側の理解が進んでいるようです。https://t.co/Bpb58iNySv
— 宮原篤 💉💉 💉「小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK」 (@atsushimiyahara) March 30, 2022
産婦人科専門医の宋美玄氏も「問題は医療従事者側の理解だったんでしたっけ。だとしても朝日新聞には言われたくないです」と、怒り気味にツイートをしていた。
国立がん研究センターによると、子宮頸がんに罹患する人は年間1万人で、亡くなる人は3000人に上るなど、先進国で唯一悪化する異常事態に陥った。1997年4月2日から2006年4月1日に生まれた女性がHPVワクチンの接種機会を逃したとして、厚生労働省ではさまざまなチャネルでワクチン接種を促している。
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