政府・与党内でスポーツギャンブル本格解禁の動き #1 あの和製SNS企業も推進

米国は10兆円市場視野、政府の新財源に期待も
2021年05月22日 06:01
  • 自民党政策調査会の会議でIT大手ミクシィなどがスポーツギャンブル解禁を要望
  • 2018年の米国での合法化。30年に10兆円市場を見込むなど海外の動きも背景
  • 業界のアピールポイントは税収増による新財源の確保。政治側は世論の納得が課題

先月末、興味深いニュースをフィナンシャルタイムズ(FT)紙が報じた。「日本政府はサッカーと野球のスポーツ賭博の合法化に向け検討を開始した」というのだ(参照:4月28日ブルームバーグ電子版「日本政府、サッカーと野球のスポーツ賭博合法化を検討-報道」)。

「合法化に向けた検討」という表現はいささか踏み込みすぎのようにも思えるが、政府与党内で合法化に向けた議論が開始されているのは事実だ。今回の特集では、自民党政策調査会の小委員会での議論を中心に、スポーツギャンブル(スポーツベット)に関する政策動向をリポートする。(2回連載)

simonkr / iStock
simonkr / iStock

FTによる報道から1週間前にあたる4月22日には、自民党政策調査会のスポーツ立国調査会スポーツビジネス小委員会(以下、自民党小委)で「海外スポーツベッティングを活用した国内スポーツ市場活性化の可能性スポーツ市場規模について」が議題とされている。

さらに自民党小委はこの場の議論を踏まえ、5月17日のスポーツ立国調査会・スポーツビジネス小委員会合同会議に提示した「スポーツ市場の拡大に向けた提言」の案文の中に、スポーツベッティング(ギャンブル)について「その活用の可能性について検討することも有益」と、前向きな検討を政府に求める表現が盛り込んだ。

業界側の動きを見る上でも4月22日の会議は興味深い。スポーツギャンブルの必要性を訴える立場からミクシィ(木村弘毅社長、東証1部上場)と、ジャングル X 株式会社(直江文忠CEO)が報告を行っている。ジャングルXはスポーツギャンブル関連事業を手掛けるスタートアップだが、同社のような専門的な企業だけではなく、ミクシィ社のようなIT大手が本格的なロビー活動を既に開始している点は注目したい。同社は1月にも経済産業省の研究会で同内容の報告を行っている。

世界的解禁の流れ

ミクシィ社など、この分野への参入を目指す企業の動きが活発化する背景には、米国でのスポーツベット合法化の流れがある。競馬発祥の地である英国では、もともとドッグレースなどが盛んなうえ、サッカーやバスケットに関するスポーツベットも合法だ。一方で、同社が自民党小委に提出した資料によると、米国でも2018年以降に順次合法化されてきており、18年時点で7674億円だったスポーツベット市場が2030年には10兆9702億円まで市場規模を拡大させる見通しだという。

特に成長が目覚ましいのがオンライン市場だ。同資料によると、18年から19年にかけてのオフラインが36.5%、オンラインでは142.8%の成長が見込まれている。デジタルトランスフォーメーション(DX)の恩恵がいかにギャンブル市場にとって大きなものかが分かる。

Wpadington/iStock

日本国内では、競馬や競輪、ボートといったレース競技における公営ギャンブルは古くから行われているが、その他のスポーツではtotoやBIGに限り「スポーツ振興くじ」として限定的に合法化されている。ミクシィ社の資料によれば、サッカーのベット売上額は英国1兆4357億円に対して日本は938億円(いずれも19年度)と大きな差がある。これらのことから、ミクシィ社は自民党小委で「日本のスポーツベット市場はポテンシャルあり」として、国内市場の成長余地の大きさを強調している。

アピールポイントは新財源

ただ、海外にスポーツギャンブル解禁の流れがあるとはいえ、ギャンブル解禁への国内世論の警戒感は強く、推進には大きな政治的リスクが伴うのも事実だ。一方で、ギャンブルは賭博罪で原則的には禁止されており、法改正などが必要。このため、スポーツギャンブルの解禁には政治の支持が必要不可欠だ。そこで業界サイドがアピールしているのが、ギャンブルの合法化を進めることにより政府が新財源を確保できるようになる点だ。

ジャングルX社は、ベット市場がスポーツ市場の10%程度となることを前提にした試算結果を自民党小委に報告している。10%の根拠は、英国では既にスポーツ市場の10%がベット市場であることと、米国でも2019年段階で1%だったベット市場が25年には10%まで引き上げる計画であるためだ。

日本国内のスポーツ市場については、25年段階で10兆円(17年で8兆円)まで成長は可能としており、そのうちのベット市場の割合を英国並みの10%とすることができれば、1兆円の市場となる。1兆円の内訳は、スポーツ振興くじで2200億円、新たなスポーツベットで8000億円弱となっている。この試算通りならば、国内にスポーツギャンブル関連で1兆円近い新市場が生まれることとなり、税財源も相当規模確保できる可能性がある。

ミクシィ社も自民党小委で「政府の財政にも貢献」できる点をアピールしており、米国では2018年5月から20年5月までの2年間で2億2450万ドル(ドル円110円計算で約247億円、年平均123.5億円)が確保されていると報告した。米国の場合は恩恵を受けたのは州政府で、「ベット合法化から『わずか2年』で『200億円以上』の税収を得た」と同社は強調している。

政治の側からすれば、新たな市場と財源の出現は大きな魅力だが、課題は世論の納得をどう得るかにある。ミクシィ社はそういった不安への答えとして、DXがギャンブル市場の拡大に追い風になるだけではなく、こういった課題への対策にも有効である点をアピールしている。#2では、彼らのアピールするDXを活用した新しいスポーツギャンブルの未来像について紹介していきたい。(#2はこちら

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でSAKISIRUをフォローしよう!

関連記事

ランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事